原作の1巻が出た時点で、映像化のオファーが殺到したみたいですね。僕も原作を読んで「これは映画になる」と思っていたら、プロデューサーから今回のお話をいただけました。マンガ大賞の受賞もまだだったんじゃないかな。原作も始まったばかりで、まだ謎に満ちた物語だったので、まずはタイトルの意味をすごく考えましたね。
この物語はただのミステリーではなく、リバイバルによる切ないラブストーリーでもあってほしいと思っています。一見暗い話のようですが、ミステリーの先にある希望を、観た方が持って帰ってくれたら嬉しいですね。
『僕だけがいない街』ですから、とにかく街を映さなければと。最終的に、劇中のキーとなるシーンは神奈川県・厚木市の河原に。象徴的な橋も決め手になりました。
悟は彼の持つ超能力で、現代(2006年)と過去(1968年)を行き来するので、その年代毎の撮影地が必要となります。原作に登場する舞台の1つが、主人公の悟(幼少期:中川翼)が小学生時代に暮らす北海道です。伊那谷フィルムコミッションの協力の下、北海道の設定として長野県伊那市で2週間に及ぶロケが行われることになりました。撮影期間は夏の8~9月だったので、伊那の街の一部を生かして、雪を積もらせました。同級生の加代(鈴木梨央)と悟が訪れる、街と海を見渡せる印象的な丘もフィルムコミッションの方に探していただきました。
延べ300人もの中からオーディションで藤原竜也さん似の男の子を捜して、中川翼君をキャスティングしました。演技力に特化せず選んだので、みんなの前で大きな声を出すという基本から指導していきました。
29歳の意識を持つ役を10歳の子が演じることは、ハードルが高いですよね。29歳になったことはないから、想像もできないですもんね(笑)。
撮影は2006年の現代からクランクインしましたが、翼君は藤原さんのお芝居を見に熱心に現場に来ていましたね。オフの時から普段の竜也君のサンダル履きや仕草を真似たり、本当になり切っていました。一番の恥ずかしがり屋だった翼君がクランクインの時には、みんなの先頭に立っていた。すごく努力したんだと思います。
現場では、僕1人がピリピリしていました(笑)。座長の藤原さんは、すごく気を遣ってくれていて、しっかりとリーダーシップをとって、リラックスできる雰囲気づくりをしていてくれましたね。
待ち時間は、僕もキャスト同士の輪には入っていく方なので皆で談笑したり、和気藹々としていました。でも撮影中はみんな常に試行錯誤。いい化学反応が生まれていました。
完結していない原作を、2時間の枠の中でどう収束させるのか…。映画にするにあたって、オリジナルの"リバイバルの謎"の見せ方にこだわりました。なぜ現在と過去を行き来するのか、映画の中でその理由を探し、感じてもらえればと思います。何が一緒で何が違うのか。リバイバルして周りの環境に変化があると、それは嘘になってしまう。だから1回の撮影で全て撮らなければならなくて、かなり頭を悩まされました。ただ、茨城県の笠間で行われた冒頭シーンのロケは、天候の変化が影響して泣く泣く日を分けて撮りました。
地元の方との触れ合いは、やはり物語の要となる過去のシーンを撮った伊那市が一番多かったですね。伊那のフィルムコミッションの方々には本当によくしていただきました。
悟が通っていた小学校として撮影した伊那小の子供たちにはエキストラとして出演してもらっています。空き時間に彼らと話すことも多かったんですが…、なんだか、心が洗われましたね。凄く純粋で。今の小学生が何を考えているかなんて、普段聞けないじゃないですか。凄く気持ちの良い時間でしたね。今回は地元小学生のキャスティングも印象的ですが、実は北海道方言指導の方にも出演していただいています。児童相談所の女性保護士役ですね。方言指導で助けていただこうと決まった時に、そのまま出演もお願いしてしまいました。これも現場での「縁」から生まれたキャスティングですね。
伊那の「ロケ飯(僕街食堂)」で、地元の料理のローメンを食べたんです。凄く変わった食べ物で、お店によって味が違うんですよ。味付けも自分で仕上げたりとか……。ロケの昼ご飯で伊那の方が出してくれたのが、特に美味しかったですね。これもご縁があったからこそ、出会えた味です。
撮影がなければプライベートでは来ることもなかった場所に行けたり、食べることもなかっただろう名物に出会えるというのは、この仕事の醍醐味ですね。
僕、撮影が決まってから、休みの日を使って伊那にある"ゼロ磁場"というパワースポット(分杭峠周辺)に個人的に行ってみたんですよ。訪れた人たちが山の中に座って、皆が谷の方を見つめている。何か感じているんでしょうね。でも僕は何にも感じられなくて。焦りました(笑)。まぁ「ゼロ磁場だけはわからない」ってことは分かりました(笑)。
でも「伊那に撮影に行こう」って決めていなければ"ゼロ磁場"を体験できることはなかった。そういうところも、撮影で生まれる「ご縁」だと思っています。
今はもう最先端の技術でなんでもできますが、今回のような「ご縁」や現場の場つくりだけは、技術でできることではないです。
やっぱり、作品に対する愛情が強い人・情熱のある人たちと仕事をしたいと思います。いいものを作りたいという情熱ですね。
原作の1巻が出た時点で、映像化のオファーが殺到したみたいですね。僕も原作を読んで「これは映画になる」と思っていたら、プロデューサーから今回のお話をいただけました。マンガ大賞の受賞もまだだったんじゃないかな。原作も始まったばかりで、まだ謎に満ちた物語だったので、まずはタイトルの意味をすごく考えましたね。
この物語はただのミステリーではなく、リバイバルによる切ないラブストーリーでもあってほしいと思っています。一見暗い話のようですが、ミステリーの先にある希望を、観た方が持って帰ってくれたら嬉しいですね。
『僕だけがいない街』ですから、とにかく街を映さなければと。最終的に、劇中のキーとなるシーンは神奈川県・厚木市の河原に。象徴的な橋も決め手になりました。
悟は彼の持つ超能力で、現代(2006年)と過去(1968年)を行き来するので、その年代毎の撮影地が必要となります。原作に登場する舞台の1つが、主人公の悟(幼少期:中川翼)が小学生時代に暮らす北海道です。伊那谷フィルムコミッションの協力の下、北海道の設定として長野県伊那市で2週間に及ぶロケが行われることになりました。撮影期間は夏の8~9月だったので、伊那の街の一部を生かして、雪を積もらせました。同級生の加代(鈴木梨央)と悟が訪れる、街と海を見渡せる印象的な丘もフィルムコミッションの方に探していただきました。
延べ300人もの中からオーディションで藤原竜也さん似の男の子を捜して、中川翼君をキャスティングしました。演技力に特化せず選んだので、みんなの前で大きな声を出すという基本から指導していきました。
29歳の意識を持つ役を10歳の子が演じることは、ハードルが高いですよね。29歳になったことはないから、想像もできないですもんね(笑)。
撮影は2006年の現代からクランクインしましたが、翼君は藤原さんのお芝居を見に熱心に現場に来ていましたね。オフの時から普段の竜也君のサンダル履きや仕草を真似たり、本当になり切っていました。一番の恥ずかしがり屋だった翼君がクランクインの時には、みんなの先頭に立っていた。すごく努力したんだと思います。
現場では、僕1人がピリピリしていました(笑)。座長の藤原さんは、すごく気を遣ってくれていて、しっかりとリーダーシップをとって、リラックスできる雰囲気づくりをしていてくれましたね。
待ち時間は、僕もキャスト同士の輪には入っていく方なので皆で談笑したり、和気藹々としていました。でも撮影中はみんな常に試行錯誤。いい化学反応が生まれていました。
完結していない原作を、2時間の枠の中でどう収束させるのか…。映画にするにあたって、オリジナルの"リバイバルの謎"の見せ方にこだわりました。なぜ現在と過去を行き来するのか、映画の中でその理由を探し、感じてもらえればと思います。何が一緒で何が違うのか。リバイバルして周りの環境に変化があると、それは嘘になってしまう。だから1回の撮影で全て撮らなければならなくて、かなり頭を悩まされました。ただ、茨城県の笠間で行われた冒頭シーンのロケは、天候の変化が影響して泣く泣く日を分けて撮りました。
地元の方との触れ合いは、やはり物語の要となる過去のシーンを撮った伊那市が一番多かったですね。伊那のフィルムコミッションの方々には本当によくしていただきました。
悟が通っていた小学校として撮影した伊那小の子供たちにはエキストラとして出演してもらっています。空き時間に彼らと話すことも多かったんですが…、なんだか、心が洗われましたね。凄く純粋で。今の小学生が何を考えているかなんて、普段聞けないじゃないですか。凄く気持ちの良い時間でしたね。今回は地元小学生のキャスティングも印象的ですが、実は北海道方言指導の方にも出演していただいています。児童相談所の女性保護士役ですね。方言指導で助けていただこうと決まった時に、そのまま出演もお願いしてしまいました。これも現場での「縁」から生まれたキャスティングですね。
伊那の「ロケ飯(僕街食堂)」で、地元の料理のローメンを食べたんです。凄く変わった食べ物で、お店によって味が違うんですよ。味付けも自分で仕上げたりとか……。ロケの昼ご飯で伊那の方が出してくれたのが、特に美味しかったですね。これもご縁があったからこそ、出会えた味です。
撮影がなければプライベートでは来ることもなかった場所に行けたり、食べることもなかっただろう名物に出会えるというのは、この仕事の醍醐味ですね。
僕、撮影が決まってから、休みの日を使って伊那にある"ゼロ磁場"というパワースポット(分杭峠周辺)に個人的に行ってみたんですよ。訪れた人たちが山の中に座って、皆が谷の方を見つめている。何か感じているんでしょうね。でも僕は何にも感じられなくて。焦りました(笑)。まぁ「ゼロ磁場だけはわからない」ってことは分かりました(笑)。
でも「伊那に撮影に行こう」って決めていなければ"ゼロ磁場"を体験できることはなかった。そういうところも、撮影で生まれる「ご縁」だと思っています。
今はもう最先端の技術でなんでもできますが、今回のような「ご縁」や現場の場つくりだけは、技術でできることではないです。
やっぱり、作品に対する愛情が強い人・情熱のある人たちと仕事をしたいと思います。いいものを作りたいという情熱ですね。
(STORY)
生活のため、ピザ屋でアルバイトをする売れない漫画家の藤沼悟(藤原竜也)。彼は周囲で悪いことが起きると、事件を防げとばかりに何度でも同じ時間を繰り返す"リバイバル"という現象に悩まされていた。暴走トラックによる大事故を未然に防ぐことができたものの、自らが怪我を負ってしまった悟。同僚の愛梨(有村架純)や上京してきた母・佐知子(石田ゆり子)の看病で無事に退院した矢先、母親が何者かに殺害されてしまう。その直後にまたしてもリバイバルが発生。悟は、同級生が被害者となった連続誘拐殺人事件が起きる直前の18年前に戻り…。
監督:平川雄一朗
原作:三部けい「僕だけがいない街」(KADOKAWA/角川コミックス・エース)
脚本:後藤法子 出演:藤原竜也、有村架純、
及川光博、杉本哲太、石田ゆり子 ほか
公開中
(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会
平川雄一朗(ひらかわ・ゆういちろう)
1972年生まれ、大分県出身。オフィスクレッシェンドに所属し、ドラマ「白夜行」(06)、「ROOKIES」(08)、「JIN―仁―」(09・11)、「とんび」(13)などのディレクターを務める。07年公開の映画『そのときは彼によろしく』で映画監督デビューし、『陰日向に咲く』(08)、『ROOKIES―卒業―』(09)、『ツナグ』(12)、『想いのこし』(14)などのヒット作を手掛ける。