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ホーム > 映像関係者の声 > プロデューサーインタビュー > ひとり飯の次は“銭湯”だ! ドラマ『孤独のグルメ』の 吉見Pが明かす『昼のセント酒』の企画の裏側

ひとり飯の次は“銭湯”だ!
ドラマ『孤独のグルメ』の 吉見Pが明かす『昼のセント酒』の企画の裏側

2016.05.13
プロデューサー
吉見健士さん

神奈川県出身。出版社での雑誌編集者を経て(株)ベイシスに入社。フジテレビ広報を5年勤務し、バラエティ番組等のプロデューサーとして活躍。8年間タレントのマネージャーを兼務することも。その後(株)共同テレビに入社。代表作は、ドラマ『孤独のグルメ』(13~15)、『めしばな刑事タチバナ』(13)、『文豪の食彩』(15)、『本棚食堂』(15)、『食の軍師』(15)、『昼のセント酒』(16)ほか

今回の『昼のセント酒』という作品。企画はずっと温めていたものだったのでしょうか?

 僕自身が銭湯好きで、週4ペースで通っていたと言うのが、正直大きな理由ですかね(笑)。仕事の合間に、喫茶店で時間を潰すことってよくあるじゃないですか。僕の場合、それが銭湯だったんです。しかも、460円と言う安さ。そんな僕の日常の中で、孤独のグルメの原作者、久住昌之さんのエッセイ「昼のセント酒」と出会ったんです。なんと言っても、このタイトルが大好きです。ちょっと世間を小馬鹿にしてるような(失礼)真昼間に銭湯に入って酒を飲む。「こんな極楽はあるのか、さすが久住さん、このタイトルを頂きたい!」と思いました。ドラマの設定は時間に縛られているサラリーマンを主人公に見立てストーリーを作りました。サラリーマンだと、昼の銭湯はサボる行為になります。その背徳感こそがドラマを面白くするのではと。

銭湯といってもいろいろあるなかで、今回選ぶうえで気にした部分はありますか?

 番組の第1話で取り上げた「鶴の湯」のような、昔ながらの昭和の銭湯、最近リニューアルした近代的な銭湯、さらには銀座のど真ん中にある「金春湯」など、色々な顔をもつ銭湯の個性を丹念に取材し、ドラマ化することですかね。僕も個人的に3回ほど伺ったことのある「金春湯」は、銀座でありながら昼間から普通にお客さんが入ってる。「皆さん一体何者?」って、人間ウォッチングしてしまいます。昼の銭湯って、そんな楽しみもあります。これぞ久住さん流ですが、「じゃ、自分は何者だ?逆に僕はどんな風に写っているのか?インチキマジシャン?」番組はこの人間ウォッチングも大切にしています。

ストーリーを作るうえで気を使ったことは?

 『孤独のグルメ』でも一緒にやっている作家の田口さん、監督、プロデューサー、男性制作スタッフ、皆んなが下見のために銭湯に通って、各銭湯のマナー、会話、おじいちゃんの動きなど、銭湯内のネタ探しを入念にやりました。多分、これがこの番組の生命線だと思います。東京銭湯共通券は企画が動き出した時に1番最初に経費で買ったものです。例えば、北千住の「タカラ湯」なんかは、おじいちゃんと孫が日常的に一緒に入っている銭湯です。番組でも第6話(5月14日放送)にあるシーンですが、僕がタカラ湯に下見に行ったとき、孫にせがまれて、1時間後にまた来てしまったおじいちゃんがいました。「いや〜帰ったら、孫が行きたいって言うもんだから、また来ちゃったよ」って。脱衣所でその話を聞いた僕は、もちろんその会話を台本に反映しました。他にも高円寺の銭湯では、いかにもな劇団の舞台役者系が多く、そういう銭湯の世界観は、しっかり台本に活かしています。

キャスティングについて。今回戸次さんを起用したのは?

 イケメンなのに嫌味が無い感じがこの作品にぴったりだと思って、最初っから決め打ちで戸次さんにお願いしました。なんか営業成績悪くてもちょっと許せちゃう感じとか(笑)。

本人も「前貼りはいらない!」くらいやる気満々で臨んでくれて、ありがたかったですね。もちろん前貼りはしましたけど(笑)

主人公が生ビールを飲んだ後、舞台のような演出がありますが

 やっぱり新しいことをやっていかないと。『孤独のグルメ』と被ってしまうのも嫌だなと思ったんです。ただ『孤独のグルメ』との決定的な違いはお酒が飲めること。それだけに、風呂上がりのビールをどれだけ美味しく見せるかは、かなり気を使いました。もちろん料理が美味しいのも大切です!その中で、舞台っぽい演出も面白いんじゃないかと、監督から提案があって採用しました。

『孤独のグルメ』の時もそうですが、通常のドラマとは少し違った見せ方をしているように感じるのですが

 以前はNHKやフジテレビなどでドキュメンタリーも作っていました。自分で観る番組も一番ドキュメンタリーが多いかと思います。『孤独のグルメ』のような、フィクションとノンフィクションを織り交ぜた企画は、ドラマ畑で育っていないからこそ、考えられたのかなと思います。

ドラマ出身の方は色々と付け足して盛っていく感じなんですが、僕の場合だと、どんどんそぎ落としていくイメージです。ドラマの部分を現実に寄せていくような感じですかね。でも、たまたまです。確固たる信念なんかは何もありません。どうやればそれを面白いと思って頂けるかですね。『昼のセント酒』も銭湯が好きで、消えゆく銭湯の文化を残したいという思い。その表現方法がドラマだっただけで、手段は何でも良かったんです。好きな事を好きに表現したい、その方法の1つにドラマがあるって感じですね。もっと遡ると、僕の最初の就職先は出版社ですから、そもそも主体性がないんですかね(笑)

もともとドラマ出身ではないんですね

 出版社の編集者から、局の広報、テレビの制作プロデューサーを経て来ました。どれも楽しかったし、当時は最も自分に合っていたと思っていました。なので、テレビの制作ディレクターの経験はありません。結果それで良かったと思います。制作という一つの世界だけを見るのではなく、色々な畑を見れた事は貴重な体験でした。今でも、当時の方々とは交流もあり、大切な人脈でもあります。あくまでも僕自身としてです。制作一筋、その根性の決め方は、作り手として、素晴らしいと思います。僕には出来なかった、と言うだけです。あっ、8年間プロデューサーをやりながら、”ガチ”である方のマネージャーもしていました(笑)

 

――吉見さんが考えるプロデューサーの仕事とは?

 自分に課してるプロデューサーの仕事は、あります。でもそれは、自分に向けてのことです。全然、参考にしないで下さい。僕は、全て企画だと思います。企画を生み出さなければ全ては始まりません。しかも、それを通す手段、戦略を楽しむことだと思います。企画を通してくださる方も十人十色。それをわきまえて企画を考えること。別に自分の考えなんか大したことないんだから、それが面白いのか、企画を作って聞きに行く、って感じです。その作業が出来ないならそもそも番組なんて出来ないはずです。企画が通ったら、脚本家、演出、助監督、制作、ADと座組みを決めること。とくに、演出を誰にするかは、いつも、悩み楽しんでいます。それから、キャスティングです。主人公と主要部分のキャストは自分で決めますね。この部分は特権ですかね(笑)。それから、台本作りです。『昼のセント酒』は思いっきり、作家の田口さんとやり合います。田口さんとは相性がいいので本打ちは楽しいです。あと、権利、予算管理。ここまではプロデューサーの仕事です。現場は基本、監督、制作に任せます。ドラマが進行してる時に、作家と次の企画の話しを撮影現場の近くの喫茶店でしている時間が好きですね。

最後にこれからプロデューサーを目指す人へメッセージをいただけますか

 何を面白がるかだと思います。自分が面白いと思ったことは、僕の場合必ず誰かに話します。僕はパソコンで企画書の体裁を作るのが苦手で、と言うか出来ないので、とりあえず思いついたら仲の良い作家にプレゼンします。その作家が面白いねそれ!って言ったら、「じゃ書いて」と(笑)。でも、その中身は全て自分から伝えます。そして企画の中にある、面白いと思えるポイントを3つ捻り出します。その作業をずっと繰り返してるだけです。そんなことを常に自分の半径の狭い中から拾い出し考えています。その作業の連続ですね。

 

 

神奈川県出身。出版社での雑誌編集者を経て(株)ベイシスに入社。フジテレビ広報を5年勤務し、バラエティ番組等のプロデューサーとして活躍。8年間タレントのマネージャーを兼務することも。その後(株)共同テレビに入社。代表作は、ドラマ『孤独のグルメ』(13~15)、『めしばな刑事タチバナ』(13)、『文豪の食彩』(15)、『本棚食堂』(15)、『食の軍師』(15)、『昼のセント酒』(16)ほか

今回の『昼のセント酒』という作品。企画はずっと温めていたものだったのでしょうか?

 僕自身が銭湯好きで、週4ペースで通っていたと言うのが、正直大きな理由ですかね(笑)。仕事の合間に、喫茶店で時間を潰すことってよくあるじゃないですか。僕の場合、それが銭湯だったんです。しかも、460円と言う安さ。そんな僕の日常の中で、孤独のグルメの原作者、久住昌之さんのエッセイ「昼のセント酒」と出会ったんです。なんと言っても、このタイトルが大好きです。ちょっと世間を小馬鹿にしてるような(失礼)真昼間に銭湯に入って酒を飲む。「こんな極楽はあるのか、さすが久住さん、このタイトルを頂きたい!」と思いました。ドラマの設定は時間に縛られているサラリーマンを主人公に見立てストーリーを作りました。サラリーマンだと、昼の銭湯はサボる行為になります。その背徳感こそがドラマを面白くするのではと。

銭湯といってもいろいろあるなかで、今回選ぶうえで気にした部分はありますか?

 番組の第1話で取り上げた「鶴の湯」のような、昔ながらの昭和の銭湯、最近リニューアルした近代的な銭湯、さらには銀座のど真ん中にある「金春湯」など、色々な顔をもつ銭湯の個性を丹念に取材し、ドラマ化することですかね。僕も個人的に3回ほど伺ったことのある「金春湯」は、銀座でありながら昼間から普通にお客さんが入ってる。「皆さん一体何者?」って、人間ウォッチングしてしまいます。昼の銭湯って、そんな楽しみもあります。これぞ久住さん流ですが、「じゃ、自分は何者だ?逆に僕はどんな風に写っているのか?インチキマジシャン?」番組はこの人間ウォッチングも大切にしています。

ストーリーを作るうえで気を使ったことは?

 『孤独のグルメ』でも一緒にやっている作家の田口さん、監督、プロデューサー、男性制作スタッフ、皆んなが下見のために銭湯に通って、各銭湯のマナー、会話、おじいちゃんの動きなど、銭湯内のネタ探しを入念にやりました。多分、これがこの番組の生命線だと思います。東京銭湯共通券は企画が動き出した時に1番最初に経費で買ったものです。例えば、北千住の「タカラ湯」なんかは、おじいちゃんと孫が日常的に一緒に入っている銭湯です。番組でも第6話(5月14日放送)にあるシーンですが、僕がタカラ湯に下見に行ったとき、孫にせがまれて、1時間後にまた来てしまったおじいちゃんがいました。「いや〜帰ったら、孫が行きたいって言うもんだから、また来ちゃったよ」って。脱衣所でその話を聞いた僕は、もちろんその会話を台本に反映しました。他にも高円寺の銭湯では、いかにもな劇団の舞台役者系が多く、そういう銭湯の世界観は、しっかり台本に活かしています。

キャスティングについて。今回戸次さんを起用したのは?

 イケメンなのに嫌味が無い感じがこの作品にぴったりだと思って、最初っから決め打ちで戸次さんにお願いしました。なんか営業成績悪くてもちょっと許せちゃう感じとか(笑)。

本人も「前貼りはいらない!」くらいやる気満々で臨んでくれて、ありがたかったですね。もちろん前貼りはしましたけど(笑)

主人公が生ビールを飲んだ後、舞台のような演出がありますが

 やっぱり新しいことをやっていかないと。『孤独のグルメ』と被ってしまうのも嫌だなと思ったんです。ただ『孤独のグルメ』との決定的な違いはお酒が飲めること。それだけに、風呂上がりのビールをどれだけ美味しく見せるかは、かなり気を使いました。もちろん料理が美味しいのも大切です!その中で、舞台っぽい演出も面白いんじゃないかと、監督から提案があって採用しました。

『孤独のグルメ』の時もそうですが、通常のドラマとは少し違った見せ方をしているように感じるのですが

 以前はNHKやフジテレビなどでドキュメンタリーも作っていました。自分で観る番組も一番ドキュメンタリーが多いかと思います。『孤独のグルメ』のような、フィクションとノンフィクションを織り交ぜた企画は、ドラマ畑で育っていないからこそ、考えられたのかなと思います。

ドラマ出身の方は色々と付け足して盛っていく感じなんですが、僕の場合だと、どんどんそぎ落としていくイメージです。ドラマの部分を現実に寄せていくような感じですかね。でも、たまたまです。確固たる信念なんかは何もありません。どうやればそれを面白いと思って頂けるかですね。『昼のセント酒』も銭湯が好きで、消えゆく銭湯の文化を残したいという思い。その表現方法がドラマだっただけで、手段は何でも良かったんです。好きな事を好きに表現したい、その方法の1つにドラマがあるって感じですね。もっと遡ると、僕の最初の就職先は出版社ですから、そもそも主体性がないんですかね(笑)

もともとドラマ出身ではないんですね

 出版社の編集者から、局の広報、テレビの制作プロデューサーを経て来ました。どれも楽しかったし、当時は最も自分に合っていたと思っていました。なので、テレビの制作ディレクターの経験はありません。結果それで良かったと思います。制作という一つの世界だけを見るのではなく、色々な畑を見れた事は貴重な体験でした。今でも、当時の方々とは交流もあり、大切な人脈でもあります。あくまでも僕自身としてです。制作一筋、その根性の決め方は、作り手として、素晴らしいと思います。僕には出来なかった、と言うだけです。あっ、8年間プロデューサーをやりながら、”ガチ”である方のマネージャーもしていました(笑)

 

――吉見さんが考えるプロデューサーの仕事とは?

 自分に課してるプロデューサーの仕事は、あります。でもそれは、自分に向けてのことです。全然、参考にしないで下さい。僕は、全て企画だと思います。企画を生み出さなければ全ては始まりません。しかも、それを通す手段、戦略を楽しむことだと思います。企画を通してくださる方も十人十色。それをわきまえて企画を考えること。別に自分の考えなんか大したことないんだから、それが面白いのか、企画を作って聞きに行く、って感じです。その作業が出来ないならそもそも番組なんて出来ないはずです。企画が通ったら、脚本家、演出、助監督、制作、ADと座組みを決めること。とくに、演出を誰にするかは、いつも、悩み楽しんでいます。それから、キャスティングです。主人公と主要部分のキャストは自分で決めますね。この部分は特権ですかね(笑)。それから、台本作りです。『昼のセント酒』は思いっきり、作家の田口さんとやり合います。田口さんとは相性がいいので本打ちは楽しいです。あと、権利、予算管理。ここまではプロデューサーの仕事です。現場は基本、監督、制作に任せます。ドラマが進行してる時に、作家と次の企画の話しを撮影現場の近くの喫茶店でしている時間が好きですね。

最後にこれからプロデューサーを目指す人へメッセージをいただけますか

 何を面白がるかだと思います。自分が面白いと思ったことは、僕の場合必ず誰かに話します。僕はパソコンで企画書の体裁を作るのが苦手で、と言うか出来ないので、とりあえず思いついたら仲の良い作家にプレゼンします。その作家が面白いねそれ!って言ったら、「じゃ書いて」と(笑)。でも、その中身は全て自分から伝えます。そして企画の中にある、面白いと思えるポイントを3つ捻り出します。その作業をずっと繰り返してるだけです。そんなことを常に自分の半径の狭い中から拾い出し考えています。その作業の連続ですね。

 

 

作品情報
ドラマ『昼のセント酒』

(STORY)

業務部から企画営業部に異動した内海孝之(戸次重幸)は口下手で不器用、営業成績はいつも最下位だ。そんな内海の楽しみは、仕事をさぼって平日の昼から銭湯に入り、その後、ビールを飲むこと。勤務時間中なのに銭湯を見つけると、その誘惑には抗えない。罪悪感を持ちながら、最高の瞬間を堪能する内海の日常が今日も始まる。

 

土曜ドラマ24『昼のセント酒』

放送日時:毎週土曜深夜0:20~0:50(テレビ東京系列)

Amazonプライム・ビデオで独占先行配信中

監督:Yuki Saito  井川尊史

出演:戸次重幸 八木亜希子 柄本時生 廣田あいか 金子大地 ほか

 

写真提供: ©テレビ東京

 

プロデューサー 吉見健士(よしみ・けんじ) 

神奈川県出身。出版社での雑誌編集者を経て(株)ベイシスに入社。フジテレビ広報を5年勤務し、バラエティ番組等のプロデューサーとして活躍。8年間タレントのマネージャーを兼務することも。その後(株)共同テレビに入社。代表作は、ドラマ『孤独のグルメ』(13~15)、『めしばな刑事タチバナ』(13)、『文豪の食彩』(15)、『本棚食堂』(15)、『食の軍師』(15)、『昼のセント酒』(16)ほか

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