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ホーム > 映像関係者の声 > プロデューサーインタビュー > 東映にとって一番身近な傍観者だから出来た作品/ 『孤狼の血』『小さな恋のうた』『犬鳴村』の紀伊Pが今度は三池監督作品初となる「ラブストーリー」の企画・プロデュースを手掛ける。(映画『初恋』)

東映にとって一番身近な傍観者だから出来た作品/ 『孤狼の血』『小さな恋のうた』『犬鳴村』の紀伊Pが今度は三池監督作品初となる「ラブストーリー」の企画・プロデュースを手掛ける。(映画『初恋』)

2020.03.06
プロデューサー
紀伊宗之さん
映画『孤狼の血』(18)、『犬鳴村』(19)を手がけた紀伊宗之プロデューサーが「作品が生まれた経緯」や三池監督作品ならではの「ロケの施行方法」、さらに主演二人をキャスティングした意図とは? 常に「こだわり」を持ちながら進む、紀伊プロデューサーにインタビューし探る。
映画『初恋』という作品で心がけたことはなんですか?
僕は東映のプロデューサーで、東映がやる理由と今やる理由が自分の中で「腹落ち」したら作ろうと思っています。東映は①実録モノのヤクザ映画の時代②Vシネマの時代とアウトロー映画が輝いていた2つの時代があって、三池監督はVシネマの時代にとてつもないオリジナルのエネルギーを発散していた。東映・東映ビデオとお世話になっているのですが、その中に傑作が沢山あって。日本ではVシネマで誰も知らないのにカンヌに行ったり、世界中に名前が出て行く。そういう勢いがあった時代の三池監督の映画をやりたいな、というのがありました。三池監督のところに行って「映画やりましょう」という話をさせていただいたのですが、「この原作をやりましょう」とかいうのは全くなく、やはりオリジナルで、とお願いし物語を作っていきました。勢いのある企画は進むのが早いので、2018年の4月ぐらいから始めたのですが、半年ぐらいで撮影に入れました。
――企画はどういう場で生まれていくのですか?
どういうものを撮れば良いのか、というのはある意味「寝ても覚めても」ですね。そんな中で「これはいけるのではないか?」という風に、最後は勘ですね。その直感にたどり着くまでに、ずっと色々なことを雑多に考えているということだと思います。一番熱烈にロケに来て欲しいと思っている場所があったら教えてください、と言って「こういう場所がやりたいと言っています」「資金も援助すると言っています」とか言ってくれたらそこから考えることもあるし。「じゃあどういう物語をその地域でやったらいいのかな」と。  
(続き)
東映という会社に僕は30年近くいるので、先輩達から昔の話も聞きます。B級映画、ジャンル映画、大衆映画で70年間やってきた会社ですので、基本的にジャンル映画は強いですよね。東映カラーだな、と沢山の人に思ってもらえることが僕達の財産です。「東映の映画はこういう感じ」というのをブランドとして持ってるので、僕らはその延長線上に物を作るほうが得ではないか、と。僕は東映に戻ってから5年しか経っていません。その間、興行子会社に14年間いました。なので、僕は東映にとって一番身近な傍観者なのです。本社に「ああしたらよいのに」ということは凄く思っていました。だから東映に戻ってやれ、ということはそういうことを会社が望んでいるのかな、と。それでなんとかこの地までたどりついたら、皆沸いてくれた。では次もやろう、と。
海外で先に公開すると言うのは、反応の違いが分かりますか。
アメリカ・ヨーロッパは三池さんの知名度が高いので、皆が凄く楽しみに待っています。最初の首が落ちる時も爆笑と拍手の大喝采で。随所に指笛が鳴ったりします。本当に声を出して笑いますし、喋ります。誰一人知っている役者もいないだろうに映画って、本当に世界の共通言語だと感じました。――撮影の話になりますが、ロケを行ってみて大変だった事はありますか?そうでもないですね。三池さんはしぶとくロケハンをやるので。納得いかない場所は何回も。全部ロケセットだから、どこで撮るかというのは生命線です。歌舞伎町でやりましょうよ、ということでスタートしていますし。
撮影しにくそうというイメージのある新宿歌舞伎町での撮影でしたが、その手法は……。
映画を撮影してはいけない、という法律は一つもないではないですか。道路使用許可は、道路を占有する必要があるのか、ないのか、ということですよね。道路使用許可って。映画のカメラを僕が一人で持って歩いている時に何が問題になるのかというと、許可なく人が写ってしまうことですよね。人に迷惑をかけるとお巡りさんが来ます。「許可を取っているのか」というのは撮影の許可ではなく、道路を使用するという許可です。やはり三池監督は歌舞伎町をさんざん撮ってきているので、街に溶け込むことの大事さを知っていて、まず現場の人数は物凄く少ないんです。余計なスタッフは歌舞伎町だから来るな、と言われます。助手もいらん、と。基本的には自然光だし、そこにあるものを使って少しのエキストラで撮影します。映画をご覧になって、鼠が走っているシーンがあったと思いますが、あれも本物の鼠です。消防車も写っていましたが、あれも本当にあそこでボヤがあって全て本物です。普通は「どうしよう」と撮影を止めて、繋がりがどうとか心配するのですが、三池さんは撮ってしまいます。
キャスティングですが、このお2人にした理由は?
あんまり言っていないのですが、タイトルが決まる前に仮でつけていたのが「レオとモニカ」でした。レオが主人公であるということは、当然シナリオを作っている中で、監督は「レオは窪田正孝」と。でもモニカは苦労するよね、ということが皆分かっていて。ヤクザに身売りされて薬物にも手を出してしまう役とか、お母さんはやらせないでしょ? だからオーディションでしょ、と。脇がそうそうたるメンバーなので、商業映画として成立するな、と思っていました。主役2人だけに頼る恋愛の話でもう一人オーディションするというのは、いささかしんどいと思います。 
オーディションは監督とプロデューサーお二人で?
もう一人のプロデューサーと助監督がいました。窪田君は最初からもちろん決まっていて、相手役はオーディションにしましょうと言いながら他の人をキャスティングしていきました。皆さん凄い方なのに、そこは難航しませんでした。監督の魅力です。大森さんも染谷くんも一緒にやっているし、内野さんもやっているし、ベッキーと(村上)淳さんは初めてかな。淳さんも「ベッキーの役がやりたい」と言っていました。俳優さんたちは皆人の役が、隣の芝生は青く見えるので。俳優としてはおいしいよね、と言っていました(笑)
『初恋』と三池監督のギャップと言うのも面白いですね。
「さらば、バイオレンス」と謳いましたからね(笑)。タイトルは最後まで色々案を出して話し合いました。女性のプロデューサーが「このままいったら、女の子は絶対に見に来ないよね」と言って『初恋』というタイトルを出して、間口を広げようということになりました。言いえて妙だとは思いますし、二人の初恋の話には違いないので、良かったのではないでしょうか。「さらば、バイオレンス」であり『初恋』なのですが、僕があえて言うなら、この映画はラブコメです。
最後に、映画界を目指す若い子たちへメッセージをお願いできますか?
最後は勘だから、色々な人生を歩んだほうが良いのではないかな、と思います。映画を作る、ということは映画興行をやるということです。今の時代、スマートフォンでなんでもできるし、何でも見られる世の中で、わざわざ時間とお金と体を使って映画館で映画を見てもらうということなのです。翻って自分達が仕事ではないときにどれだけ映画館までわざわざ行くのか。大分強い動機がないと行かないと思います。そのうちストリーミング配信でやる、DVDになる、ということが分かっているのですから。強い動機をどうやって芽生えさせられるのか。そのサンプルは自分だと思っています。どうしても映画館に行きたい、と思ってもらえるものを作らない限り、映画の制作者としての成功はないのではないかと思います。「自分がこういう物を作りたい」というのはどうぞ勝手にやってください、と思います。でも、最後はお客さんが決めるので、最後に強い動機を芽生えさせるのか、という勘の為には、人のことを好きでいたほうが良いと思います。この人はどういうことを考えているのだろう、どういう映画だったら行くのだろう、ということの集積です。最後はお客さんが評価を決めると思っているし、一人よがりにならないで欲しいな、と思います。僕らもよくショートフィルムの審査員をやったりしますが、本当にこれを誰かが面白いと思って作っているのかな、というものがあります。自分が監督としてこういう風に思われたい、というのが一番邪魔なこと。そういうのは「こういう風に思われたいから、こういう映画を作る」ということになるから。それはお客さんからすると遠いですよね。
映画『孤狼の血』(18)、『犬鳴村』(19)を手がけた紀伊宗之プロデューサーが「作品が生まれた経緯」や三池監督作品ならではの「ロケの施行方法」、さらに主演二人をキャスティングした意図とは? 常に「こだわり」を持ちながら進む、紀伊プロデューサーにインタビューし探る。
映画『初恋』という作品で心がけたことはなんですか?
僕は東映のプロデューサーで、東映がやる理由と今やる理由が自分の中で「腹落ち」したら作ろうと思っています。東映は①実録モノのヤクザ映画の時代②Vシネマの時代とアウトロー映画が輝いていた2つの時代があって、三池監督はVシネマの時代にとてつもないオリジナルのエネルギーを発散していた。東映・東映ビデオとお世話になっているのですが、その中に傑作が沢山あって。日本ではVシネマで誰も知らないのにカンヌに行ったり、世界中に名前が出て行く。そういう勢いがあった時代の三池監督の映画をやりたいな、というのがありました。三池監督のところに行って「映画やりましょう」という話をさせていただいたのですが、「この原作をやりましょう」とかいうのは全くなく、やはりオリジナルで、とお願いし物語を作っていきました。勢いのある企画は進むのが早いので、2018年の4月ぐらいから始めたのですが、半年ぐらいで撮影に入れました。
――企画はどういう場で生まれていくのですか?
どういうものを撮れば良いのか、というのはある意味「寝ても覚めても」ですね。そんな中で「これはいけるのではないか?」という風に、最後は勘ですね。その直感にたどり着くまでに、ずっと色々なことを雑多に考えているということだと思います。一番熱烈にロケに来て欲しいと思っている場所があったら教えてください、と言って「こういう場所がやりたいと言っています」「資金も援助すると言っています」とか言ってくれたらそこから考えることもあるし。「じゃあどういう物語をその地域でやったらいいのかな」と。  
(続き)
東映という会社に僕は30年近くいるので、先輩達から昔の話も聞きます。B級映画、ジャンル映画、大衆映画で70年間やってきた会社ですので、基本的にジャンル映画は強いですよね。東映カラーだな、と沢山の人に思ってもらえることが僕達の財産です。「東映の映画はこういう感じ」というのをブランドとして持ってるので、僕らはその延長線上に物を作るほうが得ではないか、と。僕は東映に戻ってから5年しか経っていません。その間、興行子会社に14年間いました。なので、僕は東映にとって一番身近な傍観者なのです。本社に「ああしたらよいのに」ということは凄く思っていました。だから東映に戻ってやれ、ということはそういうことを会社が望んでいるのかな、と。それでなんとかこの地までたどりついたら、皆沸いてくれた。では次もやろう、と。
海外で先に公開すると言うのは、反応の違いが分かりますか。
アメリカ・ヨーロッパは三池さんの知名度が高いので、皆が凄く楽しみに待っています。最初の首が落ちる時も爆笑と拍手の大喝采で。随所に指笛が鳴ったりします。本当に声を出して笑いますし、喋ります。誰一人知っている役者もいないだろうに映画って、本当に世界の共通言語だと感じました。――撮影の話になりますが、ロケを行ってみて大変だった事はありますか?そうでもないですね。三池さんはしぶとくロケハンをやるので。納得いかない場所は何回も。全部ロケセットだから、どこで撮るかというのは生命線です。歌舞伎町でやりましょうよ、ということでスタートしていますし。
撮影しにくそうというイメージのある新宿歌舞伎町での撮影でしたが、その手法は……。
映画を撮影してはいけない、という法律は一つもないではないですか。道路使用許可は、道路を占有する必要があるのか、ないのか、ということですよね。道路使用許可って。映画のカメラを僕が一人で持って歩いている時に何が問題になるのかというと、許可なく人が写ってしまうことですよね。人に迷惑をかけるとお巡りさんが来ます。「許可を取っているのか」というのは撮影の許可ではなく、道路を使用するという許可です。やはり三池監督は歌舞伎町をさんざん撮ってきているので、街に溶け込むことの大事さを知っていて、まず現場の人数は物凄く少ないんです。余計なスタッフは歌舞伎町だから来るな、と言われます。助手もいらん、と。基本的には自然光だし、そこにあるものを使って少しのエキストラで撮影します。映画をご覧になって、鼠が走っているシーンがあったと思いますが、あれも本物の鼠です。消防車も写っていましたが、あれも本当にあそこでボヤがあって全て本物です。普通は「どうしよう」と撮影を止めて、繋がりがどうとか心配するのですが、三池さんは撮ってしまいます。
キャスティングですが、このお2人にした理由は?
あんまり言っていないのですが、タイトルが決まる前に仮でつけていたのが「レオとモニカ」でした。レオが主人公であるということは、当然シナリオを作っている中で、監督は「レオは窪田正孝」と。でもモニカは苦労するよね、ということが皆分かっていて。ヤクザに身売りされて薬物にも手を出してしまう役とか、お母さんはやらせないでしょ? だからオーディションでしょ、と。脇がそうそうたるメンバーなので、商業映画として成立するな、と思っていました。主役2人だけに頼る恋愛の話でもう一人オーディションするというのは、いささかしんどいと思います。 
オーディションは監督とプロデューサーお二人で?
もう一人のプロデューサーと助監督がいました。窪田君は最初からもちろん決まっていて、相手役はオーディションにしましょうと言いながら他の人をキャスティングしていきました。皆さん凄い方なのに、そこは難航しませんでした。監督の魅力です。大森さんも染谷くんも一緒にやっているし、内野さんもやっているし、ベッキーと(村上)淳さんは初めてかな。淳さんも「ベッキーの役がやりたい」と言っていました。俳優さんたちは皆人の役が、隣の芝生は青く見えるので。俳優としてはおいしいよね、と言っていました(笑)
『初恋』と三池監督のギャップと言うのも面白いですね。
「さらば、バイオレンス」と謳いましたからね(笑)。タイトルは最後まで色々案を出して話し合いました。女性のプロデューサーが「このままいったら、女の子は絶対に見に来ないよね」と言って『初恋』というタイトルを出して、間口を広げようということになりました。言いえて妙だとは思いますし、二人の初恋の話には違いないので、良かったのではないでしょうか。「さらば、バイオレンス」であり『初恋』なのですが、僕があえて言うなら、この映画はラブコメです。
最後に、映画界を目指す若い子たちへメッセージをお願いできますか?
最後は勘だから、色々な人生を歩んだほうが良いのではないかな、と思います。映画を作る、ということは映画興行をやるということです。今の時代、スマートフォンでなんでもできるし、何でも見られる世の中で、わざわざ時間とお金と体を使って映画館で映画を見てもらうということなのです。翻って自分達が仕事ではないときにどれだけ映画館までわざわざ行くのか。大分強い動機がないと行かないと思います。そのうちストリーミング配信でやる、DVDになる、ということが分かっているのですから。強い動機をどうやって芽生えさせられるのか。そのサンプルは自分だと思っています。どうしても映画館に行きたい、と思ってもらえるものを作らない限り、映画の制作者としての成功はないのではないかと思います。「自分がこういう物を作りたい」というのはどうぞ勝手にやってください、と思います。でも、最後はお客さんが決めるので、最後に強い動機を芽生えさせるのか、という勘の為には、人のことを好きでいたほうが良いと思います。この人はどういうことを考えているのだろう、どういう映画だったら行くのだろう、ということの集積です。最後はお客さんが評価を決めると思っているし、一人よがりにならないで欲しいな、と思います。僕らもよくショートフィルムの審査員をやったりしますが、本当にこれを誰かが面白いと思って作っているのかな、というものがあります。自分が監督としてこういう風に思われたい、というのが一番邪魔なこと。そういうのは「こういう風に思われたいから、こういう映画を作る」ということになるから。それはお客さんからすると遠いですよね。
作品情報
映画『初恋』

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舞台は、新宿歌舞伎町。余命いくばくも無いと知らされたプロボクサーが、逃げる少女を助けるために悪徳刑事をKOしたことから、事態は急転直下。何故か追われる身となり、ヤクザ・チャイニーズマフィア・警察組織が入り乱れ欲望渦巻く“ブツ”を巡った争いに巻き込まれる。「死んだ気になりゃ、やれるはず」捨てたはずの命をタテに少女を守ると決めた時、2人の運命が一気に加速する!!

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【作品情報】

監督:三池崇史

脚本:中村雅 音楽:遠藤浩二

出演:窪田正孝 大森南朋 染谷将太 小西桜子 ベッキー

三浦貴大 藤岡麻美 顏正國 段鈞豪 矢島舞美 出合正幸

村上 淳 滝藤賢一 ベンガル 塩見三省 ・ 内野聖陽 ほか

全国公開中!

(C)2020「初恋」製作委員会

【INTERVIEW】

東映株式会社

紀伊宗之(きい・むねゆき)プロデューサー

主な作品

『孤狼の血』(18)『小さな恋のうた』(19)『見えない目撃者』(19)『犬鳴村』(19)他

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宣伝やイメージアップを目的とした、撮影に積極的な企業・施設のみ掲載しているため、
最も大変な最初の撮影許可交渉が不要で、時間短縮やコストカットにつながります。