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地域での撮影で大切なこと

2013.11.08
プロデュース部
NHK 制作局 第2制作センター(ドラマ番組部) チーフ・プロデューサー
屋敷陽太郎 さん
代表的な作品
ドラマ『八代将軍吉宗』『新選組!』『篤姫』、連続テレビ小説『私の青空』、特集ドラマ『クライマーズ・ハイ』、土曜ドラマ『マチベン』など
Q視聴者の方に喜んでもらうために、大河ドラマはどのような思いやこだわりによって作られているのでしょうか?
“お茶の間幻想”というわけではありませんが、大河という作品は家族全員で観て欲しい番組です。そういった家庭は減っているとは思いますが、自分が関わった『新選組!』(2004)や『篤姫』(2008)の時にいただいたお手紙も、年代の幅がすごく広い。「孫と一緒に観ています」とか、「(番組を見て)おじいちゃんがこれは史実と違っていると言っていますが、本当ですか?」というご質問をいただいたりしました。二世代、三世代が揃って観られるテレビドラマって今どきないですよね?
だからこそ、大河ドラマはすべての視聴者層を大切にしていきたいと心から思います。
作り手によって違いはありますが、若年層に人気のスターと、高年齢層が大好きな時代劇スターの両方に出ていただきたい。キャスト的にも、そしてストーリー的にも観ている人のすべてが共感し、「これから1週間頑張っていこう」と感じられる内容にしたいですね。
芸術性も大事ですが、まずは誰もが「観たい!」「面白い!」と思えるものを幅広い世代に向けて発信していることが大河ドラマのこだわりであり、良さだと思っています。 
Q大河ドラマでは地域との関わり合いが多いと思いますが、その中で大切にされていることは?
地域で大河を撮影する際には観光面で大きな期待を寄せられますが、私たちは地域の観光のために作品を作っているつもりはありません。ただ作品の舞台となるご当地にお世話になった時には、精一杯の恩返しをしたいと思っています。
例えば現在『江~姫たちの戦国~』(2011)に向けて、いろいろ準備に動いていますが、舞台となる町の方々に「うちの町が大河に出るぞ!」と喜んでもらえました。ヒロインであるお江さんに思い入れの深い地域・人々にまず喜んでもらえない作品は、物語と関わり合いのない場所に住む人々からの支持を得ることはできないと思うんです。
自分の町のヒーローやヒロインの話ですからクチコミで広げたり、祭りやイベントも考えてくださいます。お金や権利の力ではなく、地元住民の「ぜひやりましょう!」という熱意で大規模な作品を作り上げる部分は日本の地域ロケの良さですね。

作っている側の人間は、テレビや新聞、雑誌などに出たら世の中の全員が「作品を知っていてくれているだろう」と思いがちですが、そうではない。大河や朝ドラは放送期間が長いので初回から見ない人も大勢います。最初だけ観て途中で観るのをやめてしまう人だっていますよね? そういった時に、地元の人の心からの応援が必要です。放送期間が長いからこそ、観た人がロケ地へ観光に行って地元の盛り上がりに愛着がわき「もう1回見直そう」となる。ただ観ているだけではなく、実際に行ってみると違うと思います。
自分も富山の田舎の出身なので、そういう場所に映画やテレビが来るととても興奮しますし、そういった感動を地域に住む人にも、来る人にも楽しんでいただきたいですね。
意識せずとも、いい作品を作ることで何か町興しにつながれば嬉しいと、同じ地方出身者としても思います。 
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