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ホーム > 映像関係者の声 > プロデューサーインタビュー > 若手と中堅の狭間で揺れるストーリーと自分たちの心が重なった。だからこそ、この世代で作りたかった。/WOWOWドラマ『ダブル』のプロデューサー高江洲義貴さん、石塚紘太さんに「映像作品へのこだわり」を聞く

若手と中堅の狭間で揺れるストーリーと自分たちの心が重なった。だからこそ、この世代で作りたかった。/WOWOWドラマ『ダブル』のプロデューサー高江洲義貴さん、石塚紘太さんに「映像作品へのこだわり」を聞く

2022.06.02
プロデューサー
高江洲義貴さん/石塚紘太さん

下北沢を舞台に、ふたりの役者の熱き日々を描く物語「WOWOWオリジナルドラマ ダブル」。プロデューサーを務める高江洲義貴さん・石塚紘太さんに「作品が生まれた経緯」や「撮影時の裏話」「ロケ地選定のこだわり」を語って頂きました。

本作が生まれた経緯を教えてください。
【高江洲】僕が企画しました。原作の連載が始まった頃に拝見したのが最初です。“天才と凡人”という構図が好きだったことと、作者の野田彩子さんの画力にとにかく引き込まれて。この二人の関係性が魅力的だったのですぐに映像化したいと思いました。その後単行本が発売されたタイミングで企画書を提出し、無事通ったという流れです。そこからキャスティング、スタッフィングと進めていく中で中川監督と石塚さんにお願いをしました。夢を追い続けるのか諦めるのか、人生の岐路に立たされる30代の葛藤がひとつのテーマであるこの作品と僕自身に重なる部分があって、この世代で作りたいなという思いがありました。中でも監督は先に決めていました。大学のひとつ上の先輩で、ずっと一緒にやってきたので、いろいろな思いがあるだろうと。だからそんな思いもこの作品に入ればいいんじゃないかなって。石塚さんとも下積み時代から一緒にやっていて、世代も近いのでいつか自分の企画でご一緒したいと思っていました。

【石塚】中川監督と高江洲さんは大学時代の繋がりからだと思いますが、僕と監督も実は以前から知り合いでした。ずっと近いところにいたのは知っていましたので、初めましての感じはしない。今回このような形でご縁があってよかったです。
作品に対してのこだわりを教えてください。
【高江洲】キャスティングやスタッフィングに一番こだわりました。

【石塚】ほかと比べてチャレンジングだと思います。みんな近い世代で若いスタッフも多いので、置きに行かずにとにかくやってみようと取り組みました。

【高江洲】そうですね、入る前にお願いしたのは「こんなの凄いな!」というものを作ってほしいということです。例えば引きがあってカットバックがあって、脚本通り物語が仕事をしているというような、それも大事ですが「これどうやったんだろう」と観ている人が驚くような画(え)であったり演出を、一話にひとつでいいので入れてほしいと。それを石塚さんは考えてやってくれていると思います。

【石塚】ドラマだと通常「一話いくらで」と各業者の方に提示するんです。どちらかというと僕は映画の予算を組むときと似ていて「こんなことをやるからこれくらいかかりますよ」「全部は叶わないけどここまではやりましょうよ」とディスカッションを重ねた上でやるべきこととやる必要のないものとを振り分けています。そこは監督もなんとなく理解のもと進めてくださっていると思います。
企画が動いてからどのくらいの時間をかけられたのですか。
【高江洲】企画が通ってから本づくりは2,3年くらいかけてやっていますね。石塚さんには1年半ほど前からお話ししていて、本も見ていただいて。スタッフィングは昨年の中頃からだったと思います。

【石塚】既にコロナ禍ではありました。関わっていた中には中止した作品もありましたが、僕らはこれが仕事なので。フリーランスの方もたくさん集まって作品を作る中で、その方々の生活に関わってくる。なんとかできる方法を考えないといけないと思いました。
コロナ禍の状況も含めてロケ場所選定のご苦労・こだわりなどありますでしょうか。
【石塚】ロケハンの段階からコロナが原因で断られる、ということがたくさんあり制作部も苦労したと思います。ただその中で「こういう対策をするのでご協力いただけませんか」と進めることはできています。結局コロナもひとつの撮影条件だと思っているので、できないのであればそれは仕方がないですよね。これは地域などへ赴く場合も同じで、先方がネガティブな感情を抱かれているのなら僕らも行けません。ロケーション選定も結局“人”なんです。もちろん台本をしっかり撮れるかというのは大前提なのですが、ロケ担当の方とのコミュニケーションがとれなければこちらからお断りすることもあります。

【高江洲】僕は「まち」を映像から感じられる作品作りを意識しています。どんな場所で、どんなストーリーが動いているんだろうって。そうすることで「そこに生きている人なんだな」と感じられる。作品の中に血が通っていくというか。僕はそういう作品が好きですし、増えてほしいと思います。そこは制作の方も頑張ってくださっていて、本作も下北沢をひとつのアイコンとして撮影していますが、ちゃんと下北に生きている人たちのドラマだよというのは打ち出したいと思います。
東京以外でも撮影はあったのでしょうか。
【高江洲】主人公が映画を撮りに地方へ行くという設定のシーンがありました。最初は山梨県の河口湖に決めていたんです。それが腰まで埋まる大雪で。春まで溶けないということになり急遽埼玉に変更しました。ほかにもコロナの影響を受けて、翌日撮る予定だったものをなくして、その次の日にロケハンを入れて、さらに翌日には撮影、というような苦労がありました。でも画としてはすごく良くなっている気がしています。予算的にはかかってしまう部分もありましたが、かといって妥協した作りにはなっていません。スタッフの方々が優秀なんでしょうね。
どういった経緯で千葉雄大さんと永山絢斗さんに決定したのですか。
【高江洲】キャストが決まったのが1年半ほど前でしたかね。主人公の友仁と多家良を決めるにあたって、二人の関係性が僕はいちばん面白いと思ったので、そこを上手く表現できる方にお願いしたいなと考えていました。それで千葉さんに決まりました。人に好かれる要素もありつつ、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』では「あ、こんなお芝居もするんだ」と驚きました。あとはドラマ『いいね!光源氏くん』と、この2作品を観たときに、千葉さんがやってくださったら面白いんじゃないかと思いました。多家良の可愛げとイノセンスの感じですよね。純粋なんだけど、それが故に人を傷つけてしまう。みなさんの求める千葉さん像ではない、なにか突き抜けたみたいなものを見たいなと思ったので、お願いしました。永山さんは感覚です。過去のお芝居が印象に残っていて、漫画を読んでいて「永山さんなんじゃないかな」と思いました。

【石塚】あと声ですよね。多家良が引き立っていくという関係性の中で物語が進んでいくので、どちらかというと語り部が友仁になるんですよ。おのずと語らなければならないところも多くなる、視聴者が感情移入しやすい、というところで、永山さんの声は魅力的だと思いました。もちろん感じ方には個人差もありますが、語っていく中にこの声がちょっとしたリアリティを乗せているのかなと思います。
ロケ場所に求めることはありますか。
【石塚】広さですかね。物理的なことではなくて、芝居のスケールの話です。例えば、カフェで別れ話をして、男性が去って道路で事故に遭うというシーンがあるとします。スパイダーカム(スポーツなどで使用される空中特殊撮影機材)で撮影すれば、道まで出て轢かれる行程をそのままワンカットで撮ることもできたりします。ただ、それは日本ではほとんどないんですよ。警察や地権者や行政や、管理者がすべて異なるわけじゃないですか、そこを上手く調整できてまだ見ぬ画を撮れるような環境ができたらいいなと思います。ワンショットワンショットのスケール間が、日本は小さいですし、厳しいです。

【高江洲】故に、先ほどの話にも繋がりますが「まち」が撮れないんですよ。そうするとやはり作品としての血が薄くなるんです。主人公のキャラクターがあって、そこに「まち」があるとリアリティーがどんどん感じられるようになります。ただ、町の実景を映せばいいというわけではなく、ドラマとシンクロした場所でないといけません。小説を読んでいるわけじゃなくて、せっかく映像なのでその画の力を引き出せるようにしたいです。
最後に、映像制作者を目指す学生の方や、制作部の若い子に向けて何かプロデューサーとしてのアドバイス等をお伺い出来ればと思います。
【石塚】今、業界自体が転換期にきていると思います。若い子たちが躊躇してしまうと思うんです。フリーランスということもありますし、親御さんには会社員になりなさいって言われると思いますし。ただ、それではこの業界が立ち行かなくなってしまいます。作品の本数に対して今いる映像制作者だけではもう回せなくなっているんです。だから躊躇せずに入ってきて欲しいです。これがメッセージになっていいのか分からないですけど(笑い)。昔は「こうやるんだよ」とプロの作り方というのがあって厳しかったですが、今や映像なんて誰でも作れる。だから「プロはこうなんだ」に染まらないで欲しいです。作り方は自分たち次第ですし、お客さんにどう届けたいのかを意識すれば、映像制作の仕事はいくらでもできるので、そんな自由もあると思って入ってきて欲しいと思います。

【高江洲】確かに、楽しいですよね。もちろん社会人としてのルールやマナーはありますが、その中でも選択肢は多いですし、自由に作っていいんだという感覚は僕も大事にしていきたいです。 この作品でいうと僕は18歳の頃から知り合いの監督と、カメラマン、脚本家とやっているわけなんですが、なんだか夢があるじゃないですか。それは諦めなかったから残っていられるわけで。そんな道もあるよっていうのは伝えたいです。今は本当に誰でも映像が作れる時代ですが、きっと自主制作だけやっていると、行き詰まる瞬間があると思います。圧倒的に見てくれる母数が少ない。だから、自主制作するのもいいけれど、プロの世界でちゃんと発信してそれを受け取ってもらえる喜びみたいなものもあるので、信じて進んで欲しいです。


ありがとうございました!
作品情報
WOWOWオリジナルドラマ『ダブル』
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会社勤めの宝田多家良(千葉雄大)が雨の降る中、傘もささず、無気力に歩いている。そんな中、舞台の呼び込みに導かれ、劇団英雄の公演を観劇。その公演に出演していた鴨島友仁(永山絢斗)の芝居に心揺さぶられた多家良は、会社を辞めて役者の道へ進むことを決意。劇団英雄に所属することになった多家良に、友仁は芝居のいろはを教え込む。その中で、多家良の才能に唯一気付き、彼を世界一の役者にすることを望む。同時に、彼自身もまた世界一の役者になる夢を抱き続けていた。
2人は奇妙な共同生活を送りながら、役者としての成功を目指す。やがて、多家良は友仁の支えにより、才能を開花させ、スターダムに上り詰めていく。しかし、やがて2人の関係にも変化が訪れる。30代、夢を追うか、諦めるか。人生の瀬戸際に立つふたりの役者の熱い人生のひと時が描かれる。
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【作品情報】
WOWOWオリジナルドラマ『ダブル』
放送・配信情報:6月4日(土)午後10:30放送・配信スタート(全10話)
 <放送>毎週土曜 午後10:30[第一話無料放送]【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
 <配信>各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信[無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】

<キャスト>
千葉雄大、永山絢斗
桜庭ななみ、堀井新太、工藤遥、板橋駿谷、前野朋哉、水間ロン、中山忍、橋本じゅん
神野三鈴、津田寛治

<スタッフ>
原作:野田彩子『ダブル』(ヒーローズ刊)
脚本:吉田恵里香
音楽:岩本裕司
監督:中川和博
プロデューサー:高江洲義貴、石塚紘太
制作協力:シネバザール
製作著作:WOWOW

【INTERVIEW】
プロデューサー
高江洲義貴さん、石塚紘太さん
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