東映ビデオさんから企画成立の可能性があるかどうかの相談があったのが始まりです。スーパー戦隊シリーズの10周年記念作品は過去三作品くらいあるのですが、当時のキャストが揃うか否かなども含めて沢山の条件が揃わないと成立しないという認識でした。その上で、バンダイさんからもご協力をいただけるという話もあり「今までよりもレベルアップした形で一緒にやりませんか?」となりました。ただ、「当時のチーフプロデューサーが不在」という中で私に立って欲しいという打診は非常に光栄とは思いつつ、非常に悩みましたが、お客さんが作品を求めている空気だったり、何よりキャストの皆さんもやりたいと言ってくださっているのを耳にしていたので、「よし!やるしかない!」とお受けさせて頂きました。
エピローグにスナックサファリという喫茶店でカレーを食べているシーンがあります。これはテレビシリーズの1話と最終話に登場する大事な場所な訳ですが、現実世界でも10年経っており、当時の撮影場所はもうありません。したがって、別場所に引っ越しているという設定で登場させている訳ですが、飾られている小道具が当時とほぼ同じだったことにキャストが感動していました。「場所は違うんだけど、ちゃんとスナックサファリだ」と。10年という月日と、当時の懐かしさの両方を感じられるロケになったので非常に面白かったです。
僕らとしては「海賊戦隊ゴーカイジャー」はあくまでテレビシリーズの最終回をもって完結しているつもりなので、その10年後において何を描けばいいのかっていうのは、実はお客さんが思っているほどなくて(笑)。というのも、マイナスな意味じゃなくて、ただ単純にやり切っているということなんですけど。なのでまずは何を描けばお客さんが喜んでくれるのかというのを検証するところからのスタートでした。その中で、ゴーカイジャーはかつての出演者の皆さんがゲスト出演されることが多く、それはそれで非常に豪華だった訳ですが、一方で、例年よりも「ゴーカイジャーそのものを深く掘ったエピソードは少ないかもね」ということを当時からキャストと言っていたことを思い出したりして、今回は純粋にゴーカイジャーだけの物語というのを作ろうと決めました。そこに至るまでが結構苦しかったですね笑
10年後を描くと言うことで、「変わってしまったところ」と「変わらなかったところ」をしっかりと描こうと、脚本作成中はそのメリハリは常に意識していましたし、苦労した点でもありました。ただ、撮影に入ってからは特に苦労はなくて充実した毎日でした。実は初日がキャスト6人が勢ぞろいして変身するシーンだった撮影だったのですが、本当にたくさんの、当時ゴーカイジャーに関わった関係者が集まって、もはやお祭り騒ぎで(笑)それを、偶然ではありますが初日に撮影できたのは、作品にとっても、スタッフやキャストのモチベーションが大いに奮い立ったという意味で良かったと思います。
ゴーカイジャーが放送されていたのは東日本大震災の年でした。5,6話くらいだったですかね、始まってすぐに震災が起きて。それこそ次第に「今の日本には、子供たちにはヒーローが必要だよね」みたいな空気感のなかで、勝手に有難がってもらえるようになりましたが、一方で作り手の僕らやスタッフにとっては「本当にエンタメは必要か、今は二の次なのでは」と作品を作る意義や意味そのものを問う日々でもありました。その中で「作り切ったぞ」と胸を張っていえることは誇りですが、まさに今、コロナウイルス感染症によって同じような閉塞的な状況の中で、再び見てくださる方々を元気づけ、勇気づけるエンタメ作品になればいいなと思っています。もう一つは、矛盾するようですが、単純に無駄な時間を過ごすよりはこの映画を見て「いい時間を過ごしたな」と思ってもらえれば十分という気持ちもあり(笑)、10年後のおまけ感覚で楽しんでもらえれば嬉しいです。
台本に沿って、制作部というチームがロケ場所を探し、ロケハンに監督を連れて行って提案、イメージに合わせて決めて、というのが多くの流れです。最終的にはキャストのスケジュールや、火薬などの使用有無などの細かい条件をクリアする中で決まっていく訳ですが、制作部の方々は常日頃から、「喫茶店のシーンだったらここ使えそうだな」みたいな感覚で周りの景色を見ている特殊な職業の方々です。台本上はアクション場を「荒野」や「某所」と曖昧に書くことも多いですが、それはつまり「どこでも構わないからアクションを派手にやれる場所を見つけてこい」というメッセージで、適当に書いているわけではなく、あくまで制作部のクリエイティブな感覚を信じて記載しています。
廃虚や廃工場などは、ぜひ近場で新しい物件があれば教えて頂きたいですね(笑)。言い方は変ですが、実際には「死んでいる場所」がいいです。普通に稼働している工場とかビルとかだと、働いている方配慮しながら貸して頂くということになるので恐縮してしまう。もちろん、死んでいるところも国や県、ロケーション会社に貸していただく必要がある訳ですが、逆に管理下にある中で何やっても良いというか、気兼ねなく他人に迷惑をかけることなく撮影ができるので助かります。しかし、なかなかそういった場所はないというのが現実です。
僕らようなアクションがある作品だと、監督やアクション監督がよく「高低差が欲しい」と言います。平らな大地で戦ってもやれることはそんなに多くはないのでしょう。例えば立体駐車場のような場所だと、高低差を利用して昇り降りしたり、ジャンプしたりというような派手でテクニカルなアクションができたりすルので、常に欲しております(笑)
もちろんプロデューサーになりたかったというのはありますが、僕自身特撮が好きで入ったわけではなかったです。会社員として、テレビ企画制作部という部署に配属されて、APとして立ち上げから最終回まで初めてやり切ったのがゴーカイジャーで、そこで特撮やヒーロー番組の素晴らしさを知りました。それから私も10年以上の時を経て人の親になり、子どもができまして…改めて子供たちが最初に見るアクションドラマとして、全く手が抜けないなと。今後も子供番組に携わっていくのであれば引き続き真面目に、気を抜かず死ぬ気で作っていかなくちゃいけないと思っています。とりあえず来年は仮面ライダーリバイスが終わったら、気楽なコメディでも作ってみたいなと思いますけどね(笑)
社会人になると、インプットの時間がとにかく足りなくなります。どうしても日々の仕事の合間を縫っての作業になるので、大学4年間にもう少しやっておけば良かったなと思います。それなりに映画を観たり、脚本の勉強はしていたけれど、それでもやっぱり足りなかったなと。なので、学生であるうちにとにかくなんでも、寝る間を惜しんでたくさんの経験を積んでおけ!と思いますね。失敗も含めてそれが後々必ずネタになっていきますし、結果無駄なことは何一つない。ぜひ、自分のために全ての時間を使えるうちに、無駄なことをたくさんして下さい。
東映ビデオさんから企画成立の可能性があるかどうかの相談があったのが始まりです。スーパー戦隊シリーズの10周年記念作品は過去三作品くらいあるのですが、当時のキャストが揃うか否かなども含めて沢山の条件が揃わないと成立しないという認識でした。その上で、バンダイさんからもご協力をいただけるという話もあり「今までよりもレベルアップした形で一緒にやりませんか?」となりました。ただ、「当時のチーフプロデューサーが不在」という中で私に立って欲しいという打診は非常に光栄とは思いつつ、非常に悩みましたが、お客さんが作品を求めている空気だったり、何よりキャストの皆さんもやりたいと言ってくださっているのを耳にしていたので、「よし!やるしかない!」とお受けさせて頂きました。
エピローグにスナックサファリという喫茶店でカレーを食べているシーンがあります。これはテレビシリーズの1話と最終話に登場する大事な場所な訳ですが、現実世界でも10年経っており、当時の撮影場所はもうありません。したがって、別場所に引っ越しているという設定で登場させている訳ですが、飾られている小道具が当時とほぼ同じだったことにキャストが感動していました。「場所は違うんだけど、ちゃんとスナックサファリだ」と。10年という月日と、当時の懐かしさの両方を感じられるロケになったので非常に面白かったです。
僕らとしては「海賊戦隊ゴーカイジャー」はあくまでテレビシリーズの最終回をもって完結しているつもりなので、その10年後において何を描けばいいのかっていうのは、実はお客さんが思っているほどなくて(笑)。というのも、マイナスな意味じゃなくて、ただ単純にやり切っているということなんですけど。なのでまずは何を描けばお客さんが喜んでくれるのかというのを検証するところからのスタートでした。その中で、ゴーカイジャーはかつての出演者の皆さんがゲスト出演されることが多く、それはそれで非常に豪華だった訳ですが、一方で、例年よりも「ゴーカイジャーそのものを深く掘ったエピソードは少ないかもね」ということを当時からキャストと言っていたことを思い出したりして、今回は純粋にゴーカイジャーだけの物語というのを作ろうと決めました。そこに至るまでが結構苦しかったですね笑
10年後を描くと言うことで、「変わってしまったところ」と「変わらなかったところ」をしっかりと描こうと、脚本作成中はそのメリハリは常に意識していましたし、苦労した点でもありました。ただ、撮影に入ってからは特に苦労はなくて充実した毎日でした。実は初日がキャスト6人が勢ぞろいして変身するシーンだった撮影だったのですが、本当にたくさんの、当時ゴーカイジャーに関わった関係者が集まって、もはやお祭り騒ぎで(笑)それを、偶然ではありますが初日に撮影できたのは、作品にとっても、スタッフやキャストのモチベーションが大いに奮い立ったという意味で良かったと思います。
ゴーカイジャーが放送されていたのは東日本大震災の年でした。5,6話くらいだったですかね、始まってすぐに震災が起きて。それこそ次第に「今の日本には、子供たちにはヒーローが必要だよね」みたいな空気感のなかで、勝手に有難がってもらえるようになりましたが、一方で作り手の僕らやスタッフにとっては「本当にエンタメは必要か、今は二の次なのでは」と作品を作る意義や意味そのものを問う日々でもありました。その中で「作り切ったぞ」と胸を張っていえることは誇りですが、まさに今、コロナウイルス感染症によって同じような閉塞的な状況の中で、再び見てくださる方々を元気づけ、勇気づけるエンタメ作品になればいいなと思っています。もう一つは、矛盾するようですが、単純に無駄な時間を過ごすよりはこの映画を見て「いい時間を過ごしたな」と思ってもらえれば十分という気持ちもあり(笑)、10年後のおまけ感覚で楽しんでもらえれば嬉しいです。
台本に沿って、制作部というチームがロケ場所を探し、ロケハンに監督を連れて行って提案、イメージに合わせて決めて、というのが多くの流れです。最終的にはキャストのスケジュールや、火薬などの使用有無などの細かい条件をクリアする中で決まっていく訳ですが、制作部の方々は常日頃から、「喫茶店のシーンだったらここ使えそうだな」みたいな感覚で周りの景色を見ている特殊な職業の方々です。台本上はアクション場を「荒野」や「某所」と曖昧に書くことも多いですが、それはつまり「どこでも構わないからアクションを派手にやれる場所を見つけてこい」というメッセージで、適当に書いているわけではなく、あくまで制作部のクリエイティブな感覚を信じて記載しています。
廃虚や廃工場などは、ぜひ近場で新しい物件があれば教えて頂きたいですね(笑)。言い方は変ですが、実際には「死んでいる場所」がいいです。普通に稼働している工場とかビルとかだと、働いている方配慮しながら貸して頂くということになるので恐縮してしまう。もちろん、死んでいるところも国や県、ロケーション会社に貸していただく必要がある訳ですが、逆に管理下にある中で何やっても良いというか、気兼ねなく他人に迷惑をかけることなく撮影ができるので助かります。しかし、なかなかそういった場所はないというのが現実です。
僕らようなアクションがある作品だと、監督やアクション監督がよく「高低差が欲しい」と言います。平らな大地で戦ってもやれることはそんなに多くはないのでしょう。例えば立体駐車場のような場所だと、高低差を利用して昇り降りしたり、ジャンプしたりというような派手でテクニカルなアクションができたりすルので、常に欲しております(笑)
もちろんプロデューサーになりたかったというのはありますが、僕自身特撮が好きで入ったわけではなかったです。会社員として、テレビ企画制作部という部署に配属されて、APとして立ち上げから最終回まで初めてやり切ったのがゴーカイジャーで、そこで特撮やヒーロー番組の素晴らしさを知りました。それから私も10年以上の時を経て人の親になり、子どもができまして…改めて子供たちが最初に見るアクションドラマとして、全く手が抜けないなと。今後も子供番組に携わっていくのであれば引き続き真面目に、気を抜かず死ぬ気で作っていかなくちゃいけないと思っています。とりあえず来年は仮面ライダーリバイスが終わったら、気楽なコメディでも作ってみたいなと思いますけどね(笑)
社会人になると、インプットの時間がとにかく足りなくなります。どうしても日々の仕事の合間を縫っての作業になるので、大学4年間にもう少しやっておけば良かったなと思います。それなりに映画を観たり、脚本の勉強はしていたけれど、それでもやっぱり足りなかったなと。なので、学生であるうちにとにかくなんでも、寝る間を惜しんでたくさんの経験を積んでおけ!と思いますね。失敗も含めてそれが後々必ずネタになっていきますし、結果無駄なことは何一つない。ぜひ、自分のために全ての時間を使えるうちに、無駄なことをたくさんして下さい。
歴代スーパー戦隊の力を受け継いで戦った、35代目の“とんでもないヤツら”。
それが海賊戦隊ゴーカイジャーだ。「宇宙最大のお宝」を求めて地球を訪れた彼らは、
宇宙帝国ザンギャックによる残虐極まりない侵略から、この星を守りぬいた。
地球に、守るべき価値があると信じて――。
あれから、10年の時が流れた。
地球では「スーパー戦隊ダービーコロッセオ」という公営ギャンブルが全世代で大流行。
かつてのヒーローたちは「賭け」の対象となってしまったが、
収益が地球の防衛費に充てられるとあって、
歴代スーパー戦隊のレジェンドたちも主旨を理解し、このプロジェクトに協力していた。
だが唯一、運営サイドがコンタクトをとれないスーパー戦隊があった。
すでに「解散」した彼らは、いまではバラバラに活動していた。
そんな中、あのキャプテン・マーベラスが地球に出現。
運営サイドに挑戦状を叩きつける。
そしてマーベラスの前に立ち塞がったのは、
「スーパー戦隊ダービーコロッセオ」の主旨に賛同する伊狩鎧だった。
時の流れが変えたのは、地球人か、それともゴーカイジャーか?
そしてジョー、ルカ、ハカセ、アイムは、この事態にどう動く!?
10年ぶりに、とんでもない戦いが始まろうとしていた……!
_______________________________
【作品情報】
2021年11月12日(金)公開
出演者: 小澤亮太、山田裕貴、市道真央、清水一希、小池 唯、池田純矢、細貝圭、関智一、田村ゆかり(声)/川野快晴/松本寛也、庄司浩平、松原剛志、坂田梨香子、吉田メタル、山崎潤
原作:八手三郎
脚本:荒川稔久
監督:中澤祥次郎
主題歌:スーパー戦隊ヒーローゲッター~テン・ゴーカイジャーver.~/歌:Project.R
制作:東映
配給:東映ビデオ
©2021「テン・ゴーカイジャー」製作委員会
【INTERVIEW】
プロデューサー
望月卓さん
1986年生まれ。2009年に東映入社。2009年『仮面ライダーW』でプロデューサー補を務めた後、2011年『海賊戦隊ゴーカイジャー』、2012年『特命戦隊ゴーバスターズ』などに参加。2013年『仮面ライダー鎧武』でプロデューサーとなり、2014年『仮面ライダードライブ』2016年『動物戦隊ジュウオウジャー』、2017年『宇宙戦隊キュウレンジャー』(初チーフ作品)、2019年『刑事ゼロ』、2020年『魔進戦隊キラメイジャー』などを担当。