普段から2週間に1回は本屋さんへ面白そうな本はないかと探しに行っています。そこで1巻の表紙にある町田くんの横顔とタイトルが目に留まり「ジャケ買い」しました。読み進めるうちに「恋」という概念を持っていない町田くんが、いったいどこへ向かうのだろう? という点に興味が湧き、「究極の優しさ」を持つ彼は、今の世知辛い世の中にこそ必要な男の子なのではないか?と思いました。
石井監督と仕事するのは今回が初めてでしたが、以前から交流がありました。監督と話していると、既成概念が吹き飛ばされて面白いんです。もちろん、映画に対してとても真摯な方で、題材やジャンル、カテゴリーなんて石井監督には関係ないんです。今、撮るべきものを撮り続けている監督が、今の時代に町田くんを映画にしたらどうなるんだろう?と単純にワクワクしてオファーしました。
「少女漫画原作映画」というのは勝手にこちらが作ったカテゴリーで、さらに「石井監督が撮る映画はこのジャンルだ」と決めつけてしまうのは間違った先入観かな、と思います。僕は『町田くんの世界』をこの時代に作るべき映画にしたい、と思って、石井監督にオファーしました。たしかに、石井監督と少女漫画、というのはイメージが繋がらない、ということはよく言われます(笑)。でも、監督に原作を読んでもらったら「面白いじゃないですか」と言ってくれて。そこからこの企画は始まりました。
『町田くんの世界』の町田くんと猪原さんは、とても特殊なキャラクターです。分からない事に右往左往、あたふたするわけですから。さらに、そのわからない感情に対して答えを求めようと一生懸命あがくわけです。そこには、新人ならではのガムシャラなエネルギーが絶対に必要だと思ったんです。ただ、オーディションを開始するまでは、ここまでの新人は想定していませんでしたけど(笑)。でも彼らだったから、一生懸命な町田くん、猪原さんが生まれたんだと思います。
確かに新人を主演にすることは博打です。しかも二人ともですから。でも、不安はありませんでした。
僕にとって、新人の方をキャスティングすることは特別なことではありません。映画『ちはやふる』では、当時まだ芝居経験が豊富ではなかった新人の広瀬すずさんを初主演としてキャスティングしたり、新田真剣佑さんに出演いただくなど、そのようなことには以前から取り組んでいます。新人ならではの「今頑張らないで、いつ頑張るの!」っていう本気が作品にいい影響を及ぼすことは間違いがないので。
これは監督の提案なのですが、新人2人の負けてなるものか、という本気と、プロの役者が演じる高校生の本気の芝居がぶつかった時に、きっと面白いものが観られるのではないか、と。細田佳央太さんと岩田剛典さんではなかったら、町田くんと氷室雄の二人の熱量は生まれなかったのではないでしょうか。どちらかが合わせてしまっているのではなく、二人とも本気で、バチバチにやりあってて。そこが生っぽくて。その結果、随所に素晴らしいシーンが誕生しました。
どちらもイメージがしっかりしていたので、比較的すぐに見つかりましたね。あの水門を見つけてきた制作部はスゴイと思います。水門に関しては、脚本家の片岡さんが水をモチーフにしようと提案してくれたことで生まれました。脚本開発中に、僕と監督とプロデューサーの里吉さん、片岡さんの4人でシナリオハンティングも行いました。
プールは『猪原さんの世界』なんです。そして、もう一つ。「水門」も「猪原さんの世界」。水が滞留しているところ、というイメージですね。水門があったロケ地でのナイトシーンは凄く幻想的な照明で、心象風景として凄く大事な場所として撮影できました。
「突進力」ですね。「諦めない心」だと思います。それは結果として「実現力」に繋がると思います。自分が思っていることを人に言うのはとても恥ずかしいことです。「僕、これは面白いと思うんです」とか、人前で話すのってすごく恥ずかしいですよ。「なんでこれ、面白いの?」「全然分からないのだけど」とか、否定される可能性ありますからね。でも、自分の思う事を貫き続けないと、実現する道筋は作れないと思います。大前提として、調整力や耳を傾ける姿勢は必要なのですが、お客様が楽しいと思うものを絶対に作るんだ、と強く願う「突進力」がなければプロデューサーは無理ですね。
普段から2週間に1回は本屋さんへ面白そうな本はないかと探しに行っています。そこで1巻の表紙にある町田くんの横顔とタイトルが目に留まり「ジャケ買い」しました。読み進めるうちに「恋」という概念を持っていない町田くんが、いったいどこへ向かうのだろう? という点に興味が湧き、「究極の優しさ」を持つ彼は、今の世知辛い世の中にこそ必要な男の子なのではないか?と思いました。
石井監督と仕事するのは今回が初めてでしたが、以前から交流がありました。監督と話していると、既成概念が吹き飛ばされて面白いんです。もちろん、映画に対してとても真摯な方で、題材やジャンル、カテゴリーなんて石井監督には関係ないんです。今、撮るべきものを撮り続けている監督が、今の時代に町田くんを映画にしたらどうなるんだろう?と単純にワクワクしてオファーしました。
「少女漫画原作映画」というのは勝手にこちらが作ったカテゴリーで、さらに「石井監督が撮る映画はこのジャンルだ」と決めつけてしまうのは間違った先入観かな、と思います。僕は『町田くんの世界』をこの時代に作るべき映画にしたい、と思って、石井監督にオファーしました。たしかに、石井監督と少女漫画、というのはイメージが繋がらない、ということはよく言われます(笑)。でも、監督に原作を読んでもらったら「面白いじゃないですか」と言ってくれて。そこからこの企画は始まりました。
『町田くんの世界』の町田くんと猪原さんは、とても特殊なキャラクターです。分からない事に右往左往、あたふたするわけですから。さらに、そのわからない感情に対して答えを求めようと一生懸命あがくわけです。そこには、新人ならではのガムシャラなエネルギーが絶対に必要だと思ったんです。ただ、オーディションを開始するまでは、ここまでの新人は想定していませんでしたけど(笑)。でも彼らだったから、一生懸命な町田くん、猪原さんが生まれたんだと思います。
確かに新人を主演にすることは博打です。しかも二人ともですから。でも、不安はありませんでした。
僕にとって、新人の方をキャスティングすることは特別なことではありません。映画『ちはやふる』では、当時まだ芝居経験が豊富ではなかった新人の広瀬すずさんを初主演としてキャスティングしたり、新田真剣佑さんに出演いただくなど、そのようなことには以前から取り組んでいます。新人ならではの「今頑張らないで、いつ頑張るの!」っていう本気が作品にいい影響を及ぼすことは間違いがないので。
これは監督の提案なのですが、新人2人の負けてなるものか、という本気と、プロの役者が演じる高校生の本気の芝居がぶつかった時に、きっと面白いものが観られるのではないか、と。細田佳央太さんと岩田剛典さんではなかったら、町田くんと氷室雄の二人の熱量は生まれなかったのではないでしょうか。どちらかが合わせてしまっているのではなく、二人とも本気で、バチバチにやりあってて。そこが生っぽくて。その結果、随所に素晴らしいシーンが誕生しました。
どちらもイメージがしっかりしていたので、比較的すぐに見つかりましたね。あの水門を見つけてきた制作部はスゴイと思います。水門に関しては、脚本家の片岡さんが水をモチーフにしようと提案してくれたことで生まれました。脚本開発中に、僕と監督とプロデューサーの里吉さん、片岡さんの4人でシナリオハンティングも行いました。
プールは『猪原さんの世界』なんです。そして、もう一つ。「水門」も「猪原さんの世界」。水が滞留しているところ、というイメージですね。水門があったロケ地でのナイトシーンは凄く幻想的な照明で、心象風景として凄く大事な場所として撮影できました。
「突進力」ですね。「諦めない心」だと思います。それは結果として「実現力」に繋がると思います。自分が思っていることを人に言うのはとても恥ずかしいことです。「僕、これは面白いと思うんです」とか、人前で話すのってすごく恥ずかしいですよ。「なんでこれ、面白いの?」「全然分からないのだけど」とか、否定される可能性ありますからね。でも、自分の思う事を貫き続けないと、実現する道筋は作れないと思います。大前提として、調整力や耳を傾ける姿勢は必要なのですが、お客様が楽しいと思うものを絶対に作るんだ、と強く願う「突進力」がなければプロデューサーは無理ですね。
(STORY)
運動も勉強も苦手で、見た目も地味な高校生の町田くん(細田佳央太)。得意なものもこれと言ってないが、人を愛する才能だけはズバ抜けていた。そんな彼が猪原さん(関水渚)と出会い、同時に“わからない感情”を抱いた。誰かに優しくすることは、どうやらほかの誰かを傷つけることもあるらしい。生まれてはじめて直面した現実に、町田くんの心の中で嵐が吹き荒れる。これまで関わったすべての人たちを巻き込んで、町田くんが全力で走り出す。“わからない”の先にある、未知なる世界に向かって!
監督:石井裕也
原作:安藤ゆき「町田くんの世界」
(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:片岡翔、石井裕也
出演:細田佳央太、関水渚 ほか
全国公開中!
©安藤ゆき/集英社
©2019 映画「町田くんの世界」製作委員会
北島直明(きたじま・なおあき)プロデューサー
日本テレビ放送網株式会社に2004年入社。営業局を経て、入社8年目より現職。映画プロデューサーとして『藁の楯』(13)、『ちはやふる』シリーズ(16)(18)、『オオカミ少女と黒王子』(16)、『22年目の告白 —私が殺人犯です—』(17)など、数々の作品を手掛ける。