今回の映画は、『日日是好日』(2018)『星の子』(2020)に続き、プロデューサーとして大森立嗣監督とのタッグですが、どのように企画が始まったのでしょうか?
そもそも大森監督が、原作の吉田修一さんから小説の書評を頼まれた際に、映画化へのラブコールがあったみたいです。私への相談は、ちょうど大森監督と一緒に別の作品で琵琶湖を巡っていた時に相談を受けて。縁を感じましたね。そこから原作を読んで、企画が始まったんです。
主演の福士蒼汰さん、松本まりかさんはどのようにキャスティングされたのでしょうか?
福士さんが演じる圭介という役柄に関しては、高圧的で支配欲の強い刑事だったので、あまり普通では考えないような俳優が良いと思いました。その中で福士蒼汰さんは、メジャー作品やラブストーリーを多く経験しており、一般的にナイスガイというイメージですよね。こういう人が、圭介という今までの役とは全く異なる役を演じるのは、すごく面白いなと。福士さん本人も新たな挑戦として難しい面もあったと思います。大森監督は、キャラクターを作らずに、全部捨てさせて素の俳優そのものを、福士さんを通して出てくるものを撮っていくのですが、福士さんが今まで培ってきた経験や実力ですぐに役柄を理解し適応されている姿はさすがでした。原作にも脚本にもない俳優としての新たな一面を見られたと感じています。
松本まりかさん演じる佳代は本当に難しい役柄でした。原作を読んだ時に神話みたいな印象を持ち、作品に出てくる女性たちは、男たちが繰り返す蛮行を見守る神の化身のような存在だと感じました。その中でも佳代は、堕天使のような。そんなことを考えていたら、松本まりかさんがピンときたんです。実際に演じてもらうと、水のような打ってもどこかひびいてこなくて、ぬるっと掴みどころが無い佳代のイメージと松本さんの持っているリズム感や演技、佇まい、セリフの口調はとても合っていました。この役を演じることは相当な覚悟が必要であったと思いますが、松本さんはまさに“湖の女”として演じてくれました。