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『終活』お役立ち情報満載の人気シリーズ第2弾!/作品誕生秘話から撮影裏話までを川田亮プロデューサーに聞いた(高畑淳子主演 映画『お終活 再春!人生ラプソディ』)

2024.05.30
プロデューサー
川田亮さん

シニア世代に笑顔と勇気を与えた前作『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(2021)に続き、『お終活』ファミリーがパワーアップして帰ってきた。今回のテーマは【再春】。生前整理だけが『終活』なのではなく、やり残したことにチャレンジするその姿は必見。
本シリーズが誕生したきっかけや今までのシリーズとの違い、ロケ地選びのポイントなど、川田亮プロデューサーへのインタビューを実施した。

今作は『お終活』シリーズ第2弾ということで、2作目を制作するに至った経緯を教えてください。
正直、2作目が作れるなんて全く思っていませんでした。前作が公開された時はコロナ期間真っただ中で公開自体も危うかったのですが、熊本や名古屋、柏といった地域で興行を粘り強くやってくださり、また非劇場での上映も350ヶ所以上に増え、そうやってずっと続けて観てもらえる映画になったのだから、2作目も考えましょうかというような形で進みました。そのときぐらいから監督はもう「再春」というテーマを考えていたと思います。1作目の企画の立ち上げ時は「終活」というワードが世間的にはまだネガティブに捉えられがちで、周りからとても反対されたのですが、それでもオリジナル作品で気にかけてもらうためにはこのワードが必要だと思い、残したいとずっと言っていたら、監督がポジティブなワードとして後ろに「熟春」という言葉をつけてくれました。ビジュアルも合わせるとコメディー感も出て、広く受け入れられる映画になったと思います。前作は主人公の水野勝さん演じる菅野の葛藤や高畑淳子さん演じる大原千賀子と橋爪功さん演じる大原真一夫婦に焦点を当てましたが、今作は一人の人間としての夢や「家族と自分」といった対比をテーマにしました。
そもそも『終活』というテーマで企画されたのはどうしてですか。
以前私が吉永小百合さん主演の映画『ふしぎな岬の物語』(2014)という映画のプロデューサーをしたときに、 ある終活フェアがあり、その中で映画の告知をするということで行かせていただきました。そこではまさしく前作で出てきたような、棺桶入棺体験などの終活フェアやセミナーが行われていて、会場は人で溢れていました。こんな世界があるんだ、これは映画にすると面白いかも…ということを考えたのが最初でした。香月監督とは映画『君が踊る、夏』(2010)でご一緒させていた繋がりがあり、この企画の話をしたところ、監督の所属するプロダクションでも葬儀などで流すメモリアル映像の試作品をご自身のご両親の写真などを使って作っていたりして、たまたま同じようなことを考えていたので企画開発してみましょうとなりました。取材をして脚本は何度も書き直し、最終的な形になるまで3,4年ほどかかりましたね。
『終活』という身近なテーマをリアルに表現するためにどのような情報収集をされたのですか。
今作ではシナハンの際にご協力いただいた老人福祉施設の「風の木苑」で介護の仕事に就いている方々や、行政の方に取材を行いました。そこでは、要介護と要支援の違いがあることや、本編にも出てくる行政の方による要介護認定調査があることなどを知りました。調査の内容も映画オリジナルで考えようとしたのですが、何でもいいわけではなく規定の調査方法があるということで、劇中では現実に行われる形にしています。それぞれ細かく業界の決まりがあるということに驚きましたね。それ以外でも第1作目の企画時から葬儀業界のイベントに幾度も参加したので、ネタのストックはたくさん増えました(笑)。
「家族のつながり」が印象深かった前作に対し、2作目では『再春』がテーマとなっていますが、どのような違いを意識されましたか。
今回は、企画時から「再春」というテーマを監督がお持ちでした。そこで、まずは「千賀子の夢ってなんだったんだろうね」というところから発想して、彼女にとっての夢について考えたところ、「やっぱり歌だろう」と。そこからシャンソンや『愛の讃歌』に繋げていきました。『愛の讃歌』は元の歌詞は男女の歌だったので、それでは少し映画に合わないと香月監督がこの映画のテーマに合わせて、より広い意味での「愛」を表現したオリジナルの歌詞を書いてくれました。
また、前作では設定としてはあったが本編で描けなかった、橋爪さん演じる真一が野球好きという設定も今回入れ込み、真一の「再春」も描きました。
2作目では新しい登場人物も。フランス帰りの五島役に長塚京三さんを起用されたポイントは?
香月監督と長塚さんは何度も一緒にやっていて関係性が深いのです。そのため、監督が脚本を書いているときには、長塚さんをイメージをして当て書きをしていたと思います。もともとご本人もフランスに留学されていたということもあり、その経験も参考にされながら、画家・五島英樹というキャラクターが出来上っていったのだと思います。
また裏話ですが、劇中に登場している長塚さん演じる五島とその娘の凰稀かなめさん演じる英恵のペットのワンちゃんは、お二人の実のペットなんです。宣伝用のビジュアルにもワンちゃんの写真が散りばめられていますので、チェックして頂ければと思います。
その他、キャスティングについてこだわりはありましたか?
デイサービスの利用者・木村を演じる大村崑さんは、いまだにCMやドラマで活躍されている姿を見てそのパワフルさに衝撃を受け、今回どうしても出てほしいと交渉しました。日本の中でも恐らく一番芸歴が長い大村さんと、橋爪さんのお二人が芝居しているところをとにかく現場で見てみたいという思いもありました。大村さんは撮影当時91歳でしたが、毎朝トレーニングをして体を鍛えたり、滑舌を良くするために発声練習もされているとのことでして、日々「大村崑」のイメージを保つ努力をされていてプロ中のプロだと思いました。
ロケーションを決める上で、プロデューサーが考えることは何ですか。本作はどのように撮影を進めていったのか教えてください。
ロケーションのことでいうと、香月組ではとにかくいかに効率的にやるかを意識しています。また今回は、映画の撮影と同時に宣伝イベントも仕込み、同時進行で行っていました。例えば製作発表会を行ったセルリアンタワー東急ホテルでは、宣伝としての製作発表会を行ったその日に同ホテル内のジャズクラブで映画本編の撮影も行いました。俳優部には記者会見に登壇頂き、個別取材も受けてもらいつつ、その裏で撮影スタッフは撮影の準備をするというような状況でした。
また例えば喫茶店で撮影をする時などは、同じ店内であっても雰囲気の違う背景があれば、別のカフェという設定で撮影したりもしていました。他の場所でも監督がロケハン時に試行錯誤して、一つの施設で幾つの場所も使えないかと検討し、同じ場所でなるべく撮れ高をあげるべく、常に二毛作、三毛作ができないかと探っていました。
今回熊本が劇中に登場しましたが、熊本を選んだ理由はありますか?
実際に熊本は前作でも出ていまして、その時から大原真一の実家という設定にしています。熊本で撮影をしたのは映画の出資社とのご縁ということもありましたが、前作では熊本地震後の熊本城、今作では復興から少し時間が経ってからの熊本城と、同じ被写体を同じ画角から撮影しその変遷を映画の中に残して後世に伝えていくといった意味合いも込められ、大変意義深いものになりました。今後も、その土地の象徴となるものをきちんと写すということはやっていきたいです。
本作の見どころを含め、どんな方に観てもらいたいですか?
実際に終活を気にかけているシニア世代や、その子供世代(40代以上)にまずは観て頂きたいです。終活=死に支度 というイメージを持たれている方もいらっしゃるかとは思いますが、ご覧になって頂ければわかりますが、“笑って泣けて役に立つ”エンターテインメントになっています。この映画を観ることで、何かきっかけがないと話しづらい“終活”についてやこれからの人生をどう過ごすかなどということについて、話をするきっかけにして頂ければと思います。人生のどこかの局面で向き合うであろう、お役立ち情報もふんだんに入れさせて頂きました。また、クライマックスでは、青春時代にシャンソン歌手になることを夢見ていた主人公・千賀⼦がステージで歌う姿や歌声にも是非注目して頂きたいです。
映像制作者を目指す学生の方や、制作部の若い方に向けてプロデューサーとしてメッセージをお願いいたします。
私は最初に就職した大日本印刷の子会社の映像センターに5年程いて、CSの番組や企業向けVPなどを制作していました。
ノンリニアの編集やデジタルカメラでの撮影が始まった頃でしたので、取材の仕込みから撮影―編集―納品と一人でやることも多く、非常に良い経験になりました。そして、そこで出会った映画系のディレクターから刺激を受けて映画学校に通うようにもなり、自主映画のプロデューサーを何本かやりました。ただ、あまりに低予算でスタッフに全くお金が払えず、商業映画をやらないとまずいなと思っていた時、ちょうど東映で芸術職という専門職募集でプロデューサー職を募っていたので応募したところ、採用されました。最初に参加した映画が『男たちの大和/YAMATO』という製作費が15億ぐらいの作品で、規模感の違いに衝撃を受けました。それから15年ほど東映で様々な映画の製作に携わり、宣伝や二次利用に至るまで経験をさせてもらいました。
プロデューサーは、企画を形にするため監督や脚本家との取材や打合せを行い、企画案が出来たらキャスティングやロケーションの仕込み、宣伝から劇場公開、そして二次利用展開にも関わって…というようにやるべきことがたくさんあります。「お終活」のように何年もかけて企画開発を行うことも多く、日々出会う人や場所、出来事が企画のヒントになったり、日常の何気ないことが脚本に生かされたりします。作品が世に出るまでには大変なことも多いので、この1本を作ったら映画製作は終わりにしようと思う時もありますが、公開してちょっと落ち着いて、また次の企画の話を初めてしまうとすぐ2,3年経ってしまうのですよね。今はフリーランスでやっているので一本一本が最後だと思ってやっています。何らかで縁が繋がって新しい作品に携われることになったら、それを有り難く思ってやれれば良いかなと。若くて制作の現場に入ったばかりの人は常に必死で大変だと思いますが、私も出会った人たちとの縁があって多少は長くやれているように、しんどいことがあっても、もがいているうちにたまに良い縁が繋がっていくと思いますので、その日その日を大事にして前向きにやってみてください。
作品情報
映画『お終活 再春!人生ラプソディ』
大原千賀子(高畑淳子)、真一(橋爪功)の一人娘・亜矢(剛力彩芽)が、いよいよ結婚目前! 喜びあふれる大原家だが、真一の認知症疑惑という新たな問題が・・・。その一方で、千賀子は若い頃に習っていたシャンソンの恩師の娘・丸山英恵(凰稀かなめ)との出会いがきっかけで、再びレッスンに通いだす。音楽ライブプロデューサーでもある英恵からステージでシャンソンを歌わないかと勧められ、大張り切りの千賀子だが、コンサート目前に開催が危うくなり・・・。
はたして、千賀子はステージで歌えるのか!?そして大原家は一体、これからどうなるのか!?
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【作品情報】
5月31日(金)全国公開
出演:高畑淳子/剛力彩芽 水野勝 松下由樹 大村崑 凰稀かなめ 長久京三/橋爪功
脚本・監督:香月秀之 音楽:MOKU
挿入歌:『愛の讃歌』 作曲:Margueritte Angele Monnot 訳詞:カツキヒデユキ 歌:高畑淳子
企画・製作プロダクション:フレッシュハーツ
配給:イオンエンターテイメント
2023/日本/118 分/5.1ch/カラー/ビスタサイズ/デジタル ©2024「お終活 再春!」製作委員会 Oshu-katsu.com/2/
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【INTERVIEW】
川田亮(かわだ・りょう)プロデューサー
茨城県出身。2004年東映芸術職プロデューサーとして契約。2018年、フリーランスとなり現在に至る。
プロデュース作は「ベイビィ・ベイビィ・ベイビィ」(09)、「僕達急行 A列車で行こう」(12)、「苦役列車」(12)、「ふしぎな岬の物語」(14)、「サイレント・トーキョー」(20)、「帰ってきた あぶない刑事」(24)他多数。香月秀之監督とは「君が踊る、夏」(10)、「お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方」(21)などで一緒に仕事をしている。
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