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オンエアに対する反応が実感できるので、現場にいることが心地が良いと現場を大事にする飯田和孝プロデューサー。

2024.05.26
プロデューサー
飯田和孝さん

『VIVANT』や『マイファミリー』『ドラゴン桜(2021)』『義母と娘のブルース』シリーズなどヒット作を次々に手掛ける飯田プロデューサー。日曜劇場『アンチヒーロー』が現在放送中。製作企画の経緯やプロデューサーとして今までどのように作品に携わってきたのかを聞きました。

長谷川博己さん演じる主人公・明墨の目的は一体何でしょうか?タイトルの通り『アンチヒーロー』として、主人公像はどのように作り上げたのですか?
企画としては「犯罪者を無罪にする弁護士のドラマ」というところからスタートしました。しかし取材を進めたり、法律監修の國松先生と話していると、これって、弁護士なら普通にすることだよな、というハードルにぶつかってしまって。最初はかなり尖ってる企画のつもりだったのですが、それほどでもない?脚本の打ち合わせでも「アンチって何?アンチ感足りなくない?」と常に話しながら作っていました。その中で見えてきた事なのですが、決して、悪徳ではないし、やり方も多少ダークだけど、それよりも自分の目的のために身内を利用したり、人の心を利用する主人公という方向性に定まってきました。それが、キャラクターの行動とも相まって、「この話の先に何かがあるんじゃないか」と思わせるアンチヒーローたる所以をまとわせたと思っています。「何か普通だよね」という意見をSNSでも目にしていますし、「アンチでダークと言われてもそこまでじゃなくない?」という意見はある種想定内で、その後に広がっているストーリーを見てくれたらいいなと思っていました。
皆さんお気づきの通り1、2話でいうと検察や科捜研などの不正を暴くことによって、緋山(岩田剛典)を無罪に持っていきました。これは、組織に蔓延っている問題、日本の現実を突き付けています。例えば、大きな組織の中に属している人がパワハラに対し声を上げづらかったり、または上司が優秀な部下を自分の都合がいい位置に置いておく状況など、今の日本の世の中の現状を表しています。3話は無罪にすると思いきや、有罪にすることによって政治家の悪を暴く。悪いものは悪いんだっていう。そのあたりから「アンチな主人公」というところの裏切りを、視聴者は感じられたのではないかと思いますね。4、5話では紫ノ宮(堀田真由)を使って父親を落としたように、ターゲットを味方に引き入れて利用するなど明墨の手段を選ばない部分が徐々に見えてきていると思います。そうはいっても、相手の弱みを握って優位に立つというのは、別に弁護士に限ったことではないですが、そこの先にある、絶対に主人公が成し遂げたい“何か”というところがこのドラマの一番の軸になっています。ある目的のために主人公・明墨がどう突き進んでいくのかを視聴者の方に見守ってもらうために、徐々にストーリーが繋がっていくような展開を目指しました。5話まで放送され、徐々にドラマのパズルが集まってはまり始めたというのがここまでですかね。
『アンチヒーロー』は先週6話で折り返ししました。いよいよ今夜後半戦がスタート。7話以降の見どころを教えてください。
5話の冒頭で、長谷川博己演じる主人公・明墨と野村萬斎演じる伊達原が師弟関係だった事実が発覚しました。また、紫ノ宮(堀田真由)の父親を逮捕させるよう動いたのも伊達原だと分かり、伊達原の存在感は高まっています。伊達原は明墨が徐々に真相に近づいていることを感じ、明墨の前に立ちはだかります。7話以降は、キャスト発表時にシンゴジラ対決などと言われていましたが、見応えのある明墨対伊達原の対決をお届けできそうです。また、先週の6話の終わりで、明墨がついに「ターゲットは瀬古(神野三鈴)」と明確に言い切りました。前半のそれぞれの事件が6話でやっと繋がり、7話からはどんどん急展開へと進みますので、引き続き楽しんでみていただけると思います。
撮影現場には、ほとんど帯同するとお聞きしましたが、どうしてですか?
現場にいる方が心地よい、というのが一番ですかね(笑)。俳優さんが現場でどう感じて演じているかとか現場のスタッフの動きや様子だけでなく、世の中の人の様子も見ています。オンエアに対する反応を実感できるのが良いですね。例えばお墓を撮影していた時、参拝者の方が「これアンチヒーロー(の撮影)よね」みたいなこと言ってくれたりするんです。「すいません、お邪魔してます」と返すと「観てるわよ」とか「ここのお墓新しく買うの」とお話を聞くこともありました。「アンチヒーローに出てた場所だもんね」と言ってくれるので、もしかしたら作品を見て、ここにお墓を決めたのかなって勝手に想像したり(笑)。そういうような視聴者の声を現場で聞くと嬉しいですね。
ロケ地で言うと『アンチヒーロー』の中でも、VFXも使いながら撮影されていると聞きました。ロケ地かセットのどちらを使うかという判断は飯田さんがされているんですか?
例えばオフィスと法廷はスタジオセットにするとか、予算に関わってくるので、大まかには僕がディレクターと美術プロデューサー、デザイナーと話して振り分けています。画の繋げ方などはディレクターが考えています。ロケーションの選定は映像になった時のディレクターなりのプランがあるので、全てディレクターにおまかせです。「この場所だとこういう画が撮れる、そうするとこのスタジオセットと繋がる」といった段取りは、最初の段階で美術部やカメラマンも含めてみんなで考えています。裁判所として撮影されてきた建物は今まで数え切れないくらいの撮影がされてきて、今まであまり出ていない場所で古く重厚感のある建物はないだろうなと思っていたところ、制作担当の石渡(VIVANTも担当)が静岡県庁を探してきたんです。法廷の撮影の量が多いことや、距離としても無理のない範囲だったので決定しました。
新橋駅前ビル1号館は、やはり明墨のキャラクターを考えて決まったのですか?
そうですね。霞が関との距離感を踏まえつつ、明墨の法律事務所として適したサイズをまず考えました。建物の中の一部屋の事務所なのか、1棟丸々なのか。いろいろ決めていく中で、田中監督から「あの新橋の1号館ってところがロケできるらしい」と。朝ドローンを上げることができ、前に車をつけたりできるところも良かったです。エレベーターまでの道や、ビルの1階に入っている周りのお店も面白いということで決まりました。ロケ誘致に積極的な自治体や施設は本当にありがたいです。
演出の一人でもある田中健太さんとは同期と伺いましたが、本作『アンチヒーロー』には影響しているでしょうか?
田中監督はとてもマジョリティーな感覚を持っていて、客観的に見て面白いか面白くないかっていうのをよくわかっています。その点、僕は理屈っぽくなってしまったり、世界観や作品のスケール感が小さくなってしまうところがあるんです。その点彼は、大胆な意見をポンと出してきたりするので助かっています。例えば1話の一ノ瀬ワタルさんのキャスティング案は田中監督からの提案でした。阿吽の呼吸というものかどうかはわからないですが、田中監督のそういう感覚的なところも信頼しています。それに、同じドラマ部の同期ということで少し特別です。2005年に入社して、僕も田中監督も1年目は、バラエティ番組の担当で、特に田中監督はかなりハードな現場でした(笑)。その後同じタイミングでドラマ部に異動となり、僕は磯山プロデューサーのドラマ『吾輩は主婦である』(2006)、田中監督はドラマ『クロサギ』(2006)から、ドラマ人生をスタートさせました。その後、ドラマ『最高の人生の終わり方〜エンディングプランナー〜』(2012)や日曜劇場『半沢直樹』(2013)『陸王』『集団左遷!!』『マイファミリー』などで同じ現場を経験しました。今回は、長谷川(博己)さん主演の日曜劇場『小さな巨人』で田中監督がチーフディレクターを担当していて、「長谷川さんはこういう風にしたらすごく魅力的になる」と現場で話しています。今まで色々な現場を僕も田中監督も経験してきて、お互い共有できることが非常に多いので、全部理解できるんです。「そのシーンのここのこういう感じがね」とか「いやこっちじゃない」というような感覚的な会話が、割とストレスなく通じるところはありますね。
プロデューサー自らXでよく発信していますよね。作品の宣伝として効果的に活用されているのですか?
リアルタイム視聴や配信などの視聴方法に結びつくための宣伝方法は、まだまだ模索中です。今回は1話を放送した翌日の月曜日にすぐ試写会を実施したことで、翌日すぐに記事になりました。このタイミングで話題になったことで、その後1日空いて情報番組でも取り上げてくれました。そういったこともあり、割と長くニュースフィードでざわざわしている状態を作り出すことが、今の世の中を見ていると大事なんだろうなと考えます。他には、Xの盛り上がりは以前よりも増して必要なこととして、自分でもポストしています。今はいろんな形で情報を得ることができるからこそ、新しい情報の解禁だけでなく、わくわくするような自分が知らないことが発信されると思うことで、視聴者の方に盛り上がってもらうことを大事にしています。Xは誰でも手軽にポストできますので、投稿によってはネタバレされちゃいますよね。投稿される前に観なきゃと、リアルタイム視聴に繋がっていくんだろうなと思っています。
企画から立ち上げて、作品を世の中に届けるまで見届け、ヒットさせるというのがプロデューサーの仕事ですね。プレッシャーもあると思いますが、プロデューサーでよかったと思う瞬間はありますか?
俳優さんやスタッフから「この番組をやってよかったです」とか「エンドロールに名前が載ったと親が喜んでいる」と嬉しそうに報告してくる時ですね。エンドロールに載るとかは、テレビの仕事に携わっているからこそ感じるやりがいですよね。自分の名前が出るのは、やっぱりすごくいいなと思います。他には、ドラマを担当してるカメラマンが「映画関係の知り合いから、映像が素晴らしいって連絡あったんです」という報告を聞いた時、携わった作品を通してカメラマンが外の世界でも評価されていることが、とても嬉しかったです。
今後映像業界を目指す人にアドバイスをお願いします。
僕が若い頃あまりできていなかったことですが(笑)、いろんな優れた映像作品をたくさん観ておけば良かったと後悔しています。今は簡単に観られる時代なので、やる気次第だと思います。というのも、何が面白くて何が面白くないのかを判断する力を身に着けるのは意外と難しいことなんです。台本を渡されて読んで、何気なく読んでいるのか、それとも「めちゃめちゃ面白いな、なんで面白いんだろう」と考えられるのか。それがつまらないなって思えるというのも、何気ないことなんですがすごく大事な力です。これがなかなかできるようにならない(笑)。昔の僕たちと違って今は、働き方改革や撮影環境の改善で時間も沢山あると思うんです。その時間をどう使うのかは、今は個人次第でそれぞれに委ねられてしまっていて、逆に大変な時代かもしれませんね。ドラマに限らず映画も含めて古今東西の様々な作品の勉強をしっかりとしておいた方が後々、役に立つんじゃないかなと思います。
作品情報
日曜劇場『アンチヒーロー』
長谷川演じる弁護士は、たとえ犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取る、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士。ヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物だ。しかしこのドラマを見た視聴者は、こう自問自答することになるだろう。「正義の反対は、本当に悪なのだろうか・・・?」

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日曜劇場『アンチヒーロー』
放送:毎週日曜 21時00分~21時54分(TBS系)
現在放送中
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎 ほか
©TBS
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【INTERVIEW】
プロデューサー
飯田和孝さん
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