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ホーム > 映像関係者の声 > 監督インタビュー > NEWS・加藤シゲアキの処女作を映画化/知恵を使って映画の場所選びを

NEWS・加藤シゲアキの処女作を映画化/知恵を使って映画の場所選びを

2016.01.08
映画監督
行定勲さん
今回の映画『ピンクとグレー』では渋谷が舞台になっていますが、街中での撮影には苦労されたのではないですか?
今回の映画『ピンクとグレー』では渋谷が舞台になっていますが、街中での撮影には苦労されたのではないですか?

 なかなか撮影許可が下りないんですよ。これはロケなび!からも、きちんと言って欲しい(笑)

 原作の小説「ピンクとグレー」と、「閃光スクランブル」「Burn.」は“渋谷サーガ三部作”と言われていて、渋谷で学生時代を過ごした原作者の加藤シゲアキさんも思い入れは渋谷にある。ものすごく活写されてるんですよ、小説の中に。それを違う街にしてしまうのはあまりにも根源となるものが失われてしまいます。そこで、ギリギリここまで許可が下りますっていう境界線から渋谷らしい背景を借景して撮ったんです。

行定監督の渋谷へのイメージは?

 ごったがえしはしてるけど、なんか秩序はありますよね。東京にいる人たちって目的があってそこにいるから。同じ方向にがーっと列をなして進んでいく。秩序をあまり乱さないでどんな若者であれ、一つの流れに乗って歩いてるでしょ。自己顕示欲を抑圧できる日本の国民性みたいな空気は渋谷にあると思うし。よくも悪くもそれを乱そうとする若者がいて、それが活気ってことになるんじゃないですかね。

今回の作品では、渋谷の限られた場所が繰り返し登場していますね?

 やたらめったらいろんな場所を撮るっていう概念が僕の中にないんです。

 人って自分の中の立脚点がいくつかあって、繰り返しそこをたどって行きながら成長していくものだから。映画もそれも同じってことですよね。それをいろんな角度でいろんなところから撮ってしまったら、そこが何なのかが印象に残らない。ロケーションの場所だってそうですよ。基本的に優れた映画っていうのは3つか4つのひとつの大きな場所があってそこを繰り返していくだけだと考えています。

 ロードムービーは別ですよ。ロードムービーは何かというと旅に出て自分の領域から外れたところまで行った先に何かが起こる。

 人間って朝起きて会社に行って家に帰って来るっていうブーメランみたいな生活を毎日たどってるんですよ。毎日同じ風景を見てるじゃないですか。そこに情緒ってあるんですよ。同じホームから見た木に新緑が出て桜になって、やがて青々となって紅葉となって枯れて行く。何気に見ている風景で気づいていないだけでそこに情緒はある。そこに自分の環境が加わるから、切なかったり楽しかったり希望につながったりしてる。

 同じものを韻を踏んで食べた時に、3回目くらいに「あれだけ好きだったのに残しちゃった」という表現ができるんですよ。「どうしたの食欲ないの?」って。同じものが3回目に出てきた時に一口しか食べてなかったら「大丈夫?」って。「あいつこんなに残しちゃって」という表現できるんですよね。






今回の作品では、もっともこだわったロケ場所はどこですか?

 今回重要だったのは渋谷のビルボードだったんですよね。ビルに掲げられた広告。象徴的にあの場所にあって対峙できる場所ってことで、渋谷以外もガンガン探したんですよ。ビルボードが高いんですよ、日本って。本当に、なるべく近いところにないか探しました。

 あの場所はよく撮影されている場所ですよね。手ごろだから使ってるんですよね。今回は絶対あそこじゃなきゃだめだから使ってるんです。あそこに落ち着くまでは相当大変でした。

ロケ地探しでこだわっているポイントはなんですか?

 「あの場所を通るとあの映画を思い出す」なんて場所って、なかなか今作りづらいでしょ。「あそこでロケしてた」にしかなんない。キーになる場所は「あの映画を思い出す」にならないと。それが撮れるかっていう判断でカメラマンと僕らの中にせめぎあいがあるっていうかね。そういう映画になったら一番いいわけですよね。

 例えばソフィア・コッポラが撮った『ロスト・イン・トランスレーション』って映画はどこも印象的なんですよ。日本の風景で。ランス・アコードっていう素晴らしいカメラマンの切り取り方が上手い。渋谷の街が出て来るんだけど、ただの街を撮ってるだけなのに印象的なんですよ。それはたぶん外国人の目なんですよね。レンズを通した目が違うんです。外国人の感覚でとらえた日本だから印象的なんですよ。

監督が一緒に働きたい制作部はどんな人ですか?

 知恵を使って映画の場所選びをすることが重要だと思っています。「ホンが読める」というのは何かというと、画を想像できるということです。今の制作部って従順で、書いてあることに忠実なんですよ。例えば「洋館」と書いてある。そうなるとどこかに電話して「洋館ありますか?」と聞く。

 昔、岩井俊二監督と初めてやったときに洋館がなくて困ったことがありました。そんなとき、ビル街の中にポツンとある古い日本家屋を見つけて、庭がすごくいい感じで。ぐるっと回って「これは洋館に匹敵する」と勝手に自分で思ったんです。懐かしい、おじいちゃんの家なんです。ホンには「古き怪しげな洋館に住んでいる」と書いてある。『ゴーストスープ』というドラマだったんですけど、スープを飲みに来る場所として貸してある庭だと書いてある。庭が重要だということが分かったんです。この家は味があって、壁を立てればそれらしく見える。なおかつ周りをロケハンすると、袋小路にあって「この路地におばけがずらーっと並んでたらよくないですか?」とプレゼンしたんです。そしたら岩井さんが「いいね」となった。あれほど制作部が「ダメだよ。洋館じゃないんだから」と言っていたのに。

 最終的な画を想像した、ということですよね。そういうことが出来る人が少ないんです。





今回の映画『ピンクとグレー』では渋谷が舞台になっていますが、街中での撮影には苦労されたのではないですか?
今回の映画『ピンクとグレー』では渋谷が舞台になっていますが、街中での撮影には苦労されたのではないですか?

 なかなか撮影許可が下りないんですよ。これはロケなび!からも、きちんと言って欲しい(笑)

 原作の小説「ピンクとグレー」と、「閃光スクランブル」「Burn.」は“渋谷サーガ三部作”と言われていて、渋谷で学生時代を過ごした原作者の加藤シゲアキさんも思い入れは渋谷にある。ものすごく活写されてるんですよ、小説の中に。それを違う街にしてしまうのはあまりにも根源となるものが失われてしまいます。そこで、ギリギリここまで許可が下りますっていう境界線から渋谷らしい背景を借景して撮ったんです。

行定監督の渋谷へのイメージは?

 ごったがえしはしてるけど、なんか秩序はありますよね。東京にいる人たちって目的があってそこにいるから。同じ方向にがーっと列をなして進んでいく。秩序をあまり乱さないでどんな若者であれ、一つの流れに乗って歩いてるでしょ。自己顕示欲を抑圧できる日本の国民性みたいな空気は渋谷にあると思うし。よくも悪くもそれを乱そうとする若者がいて、それが活気ってことになるんじゃないですかね。

今回の作品では、渋谷の限られた場所が繰り返し登場していますね?

 やたらめったらいろんな場所を撮るっていう概念が僕の中にないんです。

 人って自分の中の立脚点がいくつかあって、繰り返しそこをたどって行きながら成長していくものだから。映画もそれも同じってことですよね。それをいろんな角度でいろんなところから撮ってしまったら、そこが何なのかが印象に残らない。ロケーションの場所だってそうですよ。基本的に優れた映画っていうのは3つか4つのひとつの大きな場所があってそこを繰り返していくだけだと考えています。

 ロードムービーは別ですよ。ロードムービーは何かというと旅に出て自分の領域から外れたところまで行った先に何かが起こる。

 人間って朝起きて会社に行って家に帰って来るっていうブーメランみたいな生活を毎日たどってるんですよ。毎日同じ風景を見てるじゃないですか。そこに情緒ってあるんですよ。同じホームから見た木に新緑が出て桜になって、やがて青々となって紅葉となって枯れて行く。何気に見ている風景で気づいていないだけでそこに情緒はある。そこに自分の環境が加わるから、切なかったり楽しかったり希望につながったりしてる。

 同じものを韻を踏んで食べた時に、3回目くらいに「あれだけ好きだったのに残しちゃった」という表現ができるんですよ。「どうしたの食欲ないの?」って。同じものが3回目に出てきた時に一口しか食べてなかったら「大丈夫?」って。「あいつこんなに残しちゃって」という表現できるんですよね。






今回の作品では、もっともこだわったロケ場所はどこですか?

 今回重要だったのは渋谷のビルボードだったんですよね。ビルに掲げられた広告。象徴的にあの場所にあって対峙できる場所ってことで、渋谷以外もガンガン探したんですよ。ビルボードが高いんですよ、日本って。本当に、なるべく近いところにないか探しました。

 あの場所はよく撮影されている場所ですよね。手ごろだから使ってるんですよね。今回は絶対あそこじゃなきゃだめだから使ってるんです。あそこに落ち着くまでは相当大変でした。

ロケ地探しでこだわっているポイントはなんですか?

 「あの場所を通るとあの映画を思い出す」なんて場所って、なかなか今作りづらいでしょ。「あそこでロケしてた」にしかなんない。キーになる場所は「あの映画を思い出す」にならないと。それが撮れるかっていう判断でカメラマンと僕らの中にせめぎあいがあるっていうかね。そういう映画になったら一番いいわけですよね。

 例えばソフィア・コッポラが撮った『ロスト・イン・トランスレーション』って映画はどこも印象的なんですよ。日本の風景で。ランス・アコードっていう素晴らしいカメラマンの切り取り方が上手い。渋谷の街が出て来るんだけど、ただの街を撮ってるだけなのに印象的なんですよ。それはたぶん外国人の目なんですよね。レンズを通した目が違うんです。外国人の感覚でとらえた日本だから印象的なんですよ。

監督が一緒に働きたい制作部はどんな人ですか?

 知恵を使って映画の場所選びをすることが重要だと思っています。「ホンが読める」というのは何かというと、画を想像できるということです。今の制作部って従順で、書いてあることに忠実なんですよ。例えば「洋館」と書いてある。そうなるとどこかに電話して「洋館ありますか?」と聞く。

 昔、岩井俊二監督と初めてやったときに洋館がなくて困ったことがありました。そんなとき、ビル街の中にポツンとある古い日本家屋を見つけて、庭がすごくいい感じで。ぐるっと回って「これは洋館に匹敵する」と勝手に自分で思ったんです。懐かしい、おじいちゃんの家なんです。ホンには「古き怪しげな洋館に住んでいる」と書いてある。『ゴーストスープ』というドラマだったんですけど、スープを飲みに来る場所として貸してある庭だと書いてある。庭が重要だということが分かったんです。この家は味があって、壁を立てればそれらしく見える。なおかつ周りをロケハンすると、袋小路にあって「この路地におばけがずらーっと並んでたらよくないですか?」とプレゼンしたんです。そしたら岩井さんが「いいね」となった。あれほど制作部が「ダメだよ。洋館じゃないんだから」と言っていたのに。

 最終的な画を想像した、ということですよね。そういうことが出来る人が少ないんです。





作品情報
映画『ピンクとグレー』

(STORY)

大人気スター俳優・白木蓮吾が、突然、死んだ。 第一発見者は幼い頃からの親友・河田大貴。蓮吾に何が起きたのか?動揺する大貴は、数通の遺書を手にする。遺書に導かれ、蓮吾の短い人生を綴った伝記を発表した大貴は、一躍時の人となり、憧れていたスターの地位を手に入れる。

初めてのキャッチボール、バンドを組んで歌ったこと、幼馴染のサリーをとりあった初恋・・・。いつも一緒で、いつも蓮吾が一歩先を進んでいた―。輝かしい青春の思い出と、蓮吾を失った喪失感にもがきながらも、その死によって与えられた偽りの名声に苦しむ大貴は、次第に自分を見失っていく。 なぜ、蓮吾は死を選んだのか?なにが、誰が、彼を追い詰めたのか?

蓮吾の影を追い続ける大貴がたどり着いた"蓮吾の死の真実"とは―。

 

監督:行定勲 原作:加藤シゲアキ 脚本:蓬莱竜太、行定勲

キャスト:中島裕翔、菅田将暉、夏帆、岸井ゆきの、柳楽優弥

2016年1月9日(土) 全国ロードショー

 

行定勲(ゆきさだ・いさお)

1968年生まれ、熊本県出身。助監督として林海象監督や岩井俊二監督の作品に参加し、長編第一作『ひまわり』(00)が第5回釜山国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞し、演出力のある新鋭として期待を集める。『GO』(01)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ国内外の50の賞に輝き、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)が観客動員620万人、興行収入85億円、同年実写映画1位の大ヒットを記録。10年には『パレード』が第60回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞、国内外から支持を得る監督のひとりである。

 

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