「カナ」という主人公はどのような経緯で誕生したのでしょうか。
山中監督:元々は原作小説のある別の企画で河合さんを主演に撮る予定でしたが、そちらは今の私が撮るべきではないと考えて降りたいと申し出ました。その時、プロデューサーが「せっかく河合さんのスケジュールを空けてもらっているからやりたいことやってみませんか」と言ってくれて。河合さんを主人公としてどういう人を演じてもらうのがいいのかなと考えたところ、今までに見たことのない河合さんを見たいなと思いました。これまで河合さんが演じてきた役は、周囲の大人に抑圧されることで大きなものを背負わされているような役が多い印象でした。河合さんになら安心してそういう役を託せるのもよく分かると思いつつ、だからこそ今度は無責任で自己中心的な主人公を演じてもらいたいと思ったのが出発点です。
カナのエピソードはキャストやスタッフの実体験を元にしていると聞きました。
山中監督:例えば河合さんに「自分の嫌なところはありますか」と聞いた時に、「話をあまり聞いてないときがある」と言っていて。そのエピソードを聞いて、冒頭のカフェのシーンを書きました。カップルの話も何組か聞いて、女性の方がいろいろ決定権を持っているケースも多いのだと分かりました。これまで映画は男性監督が多く、男性の視点で見た女性像が多かったと思うのですが、カナみたいな振る舞いをする女性も、あまり映画では描かれてこなかっただけで現実にはいます。色々な人の話を聞くことで、より普遍性を持たせることができたように思います。