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ロケ地なぜ町田? 河合優実主演『ナミビアの砂漠』カンヌ受賞の山中瑶子監督に聞いた

2024.09.07
監督
山中瑶子さん

第77回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』が2024年9月6日(金)に全国公開される。主演はドラマ『不適切にもほどがある!』でブレイクした河合優実。高校3年生の時に山中瑶子監督の自主製作映画『あみこ』(2018)を見て「女優になります」と監督に手紙を渡し、今作で念願のタッグがかなう形となった。そんな自身初の長編作で快挙を成し遂げた山中監督に、作品や制作の裏側を聞いた。

「カナ」という主人公はどのような経緯で誕生したのでしょうか。
山中監督:元々は原作小説のある別の企画で河合さんを主演に撮る予定でしたが、そちらは今の私が撮るべきではないと考えて降りたいと申し出ました。その時、プロデューサーが「せっかく河合さんのスケジュールを空けてもらっているからやりたいことやってみませんか」と言ってくれて。河合さんを主人公としてどういう人を演じてもらうのがいいのかなと考えたところ、今までに見たことのない河合さんを見たいなと思いました。これまで河合さんが演じてきた役は、周囲の大人に抑圧されることで大きなものを背負わされているような役が多い印象でした。河合さんになら安心してそういう役を託せるのもよく分かると思いつつ、だからこそ今度は無責任で自己中心的な主人公を演じてもらいたいと思ったのが出発点です。
カナのエピソードはキャストやスタッフの実体験を元にしていると聞きました。
山中監督:例えば河合さんに「自分の嫌なところはありますか」と聞いた時に、「話をあまり聞いてないときがある」と言っていて。そのエピソードを聞いて、冒頭のカフェのシーンを書きました。カップルの話も何組か聞いて、女性の方がいろいろ決定権を持っているケースも多いのだと分かりました。これまで映画は男性監督が多く、男性の視点で見た女性像が多かったと思うのですが、カナみたいな振る舞いをする女性も、あまり映画では描かれてこなかっただけで現実にはいます。色々な人の話を聞くことで、より普遍性を持たせることができたように思います。
普遍性は意図的にもたせたのですね。
山中監督:一切共感できない極端な人を見る映画の楽しさ・面白さもありますが、設定が現代の日本となると、そういう人に実在感を持たせることや、あまりにも特殊な主人公は今回難しいのかなと思いました。オリジナルで好きなことやっていいよと言ってもらいつつも予算は限られているので、急に宇宙飛行士の話とか時代劇なんかはできないわけです。当時22歳の河合さんが演じる世界ってどういう世界かなって考えたら、今の日本の時代設定が現実的で、そうなると普遍的な部分がないと、見ていてスッと入れないかなと思いました。
河合さんとはどんな話をしましたか。
山中監督:お互いに家族の話とかをしました。あとは、私はもうすでに年下の方たちが何を考えているのか分からないところがあるので、毎日何を思っているんだろう、今の日本の東京で生きている気分ってどういう感じなんだろう、といった話もしました。年下のスタッフにも話を聞いたら、そもそも生まれた時点から日本のムードがあまり希望的ではないとか、はっきりとやりたいことがなくて何か夢がある方がもはや恵まれている感じがするとか、共通するものはやっぱありました。
彼氏であるハヤシ(金子大地)・ホンダ(寛一郎)や職場の新人(倉田萌衣)、隣人(唐田えりか)は、それぞれどんな立ち位置になりますか。
山中監督:カナはホンダから逃走をし、ハヤシとは闘争関係になります。そして今度はハヤシがカナから逃走したいと思うようになる。そういった関係性の逆転を描いてるところがあります。あと、ざっくり過去・未来・現在というようなことは考えていました。新人はかつてのカナでもあり得るし、隣人は未来のカナでもあり得る。今のカナはどん詰まり感があるかもしれないけど、それがそのまま未来の自分を決めるわけではないので。隣人に関してはイマジナリーフレンドなのかと聞かれることもありますが、普通に存在している人間です。キャンプのシーンは現実ではないように撮っていますが、実際に隣に住んでいる設定です。
カナとハヤシの喧嘩中に出てきた、イメージの世界も独特でした。
山中監督:喧嘩を繰り返していると、最初は本気でもだんだんルーティーン化して、「何やってるんだろう」みたいなフェーズに入り、そこで自分を客観視できるんじゃないかと思います。どうしたらそれを映像で表現できるのかと考えたときに、あのような表現になりました。
なぜ「ナミビアの砂漠」というタイトルになったのでしょうか。
山中監督:いくつかあります。劇中で登場するあの動画は、実際にYouTubeにあるチャンネルです。「ナミビア」は現地の言葉で「何もない」という意味で、世界最古の砂漠とも言われています。あの水飲み場は人工的に作られたもので、それを定点カメラで撮って、YouTubeで24時間ずっとライブ配信しているんですけど、その収益があの公園の設備維持などに使われているそうです。それ自体は良いことだと思うんですが、我々が安全圏から手軽に見ることができるということが、そこに資本主義消費社会を感じてしまって。あと、カナは恋人や友達など、身近な人のことは粗雑に扱うにもかかわらず、少し遠いカウンセラーや隣人の言うことは素直に聞けるところがあります。砂漠の動画を見て遠いところに思いを馳せて安らげたりすることも、それに近いところがあると思って。人や物との距離感みたいなものは、カナに限らず多くの人に分かるところがあるかもしれない。そういう距離感を象徴するようなイメージです。
カナの暮らす街は町田での撮影が多かったようですが、ロケーションを選ぶにあたり基準などはありましたか。
山中監督:若い女の子は実際そんなにお金がない子ばかりで、遊ぶのに歌舞伎町へ出てくるとしても住んでいるのはもっと郊外なんじゃないかなと思って、町田がちょうどいいのではないかとなりました。最初のカットのマルイの感じが好きなんですよね。佇まいというか、ショッピングモールが並ぶ2階の歩道みたいになっているところが好きで、面白い場所を撮りたいというのもありました。
作品の見どころを教えてください。
山中監督:細かいディティールが楽しめると思います。お話は分かりやすい展開とかがあるわけではないので、最初は何の話だろうと思いながら見る時間が長いかもしれません。でも実はいろいろ細やかに設定し、スタッフも各々で「遊び」を入れているので、注意深く見てくださったらうれしいです。
若手制作者にアドバイスをお願いします。
山中監督:好き嫌いせず、たくさんの映画を見るのがいいと思います。世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな価値観や思惑があるということを目の当たりにできます。映画はどうしても「人」が出てきますが、自分の興味のある人だけでその世界を構築するわけにもいかない。映画はそれを手っ取り早く見ることができます。時代や国に関係なく何でも見るっていうのが、意外と難しいんですけどね。
作品情報
『ナミビアの砂漠』
【作品情報】出演:河合優実 金子大地 寛一郎 新谷ゆづみ 中島 歩 唐田えりか
渋谷采郁 澁谷麻美 倉田萌衣 伊島 空 堀部圭亮 渡辺真起子
脚本・監督:山中瑶子
製作:「ナミビアの砂漠」製作委員会
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
9月6日(金)公開


【Interview】
脚本・監督 山中瑶子
PROFILE1997年生まれ、長野県出身。独学で制作した初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017に入選。翌年、20歳で第68回ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待され、同映画祭の長編映画監督の最年少記録を更新。香港、NYをはじめ10カ国以上で上映される。本格的長編第一作となる『ナミビアの砂漠』は第77回カンヌ国際映画祭 監督週間に出品され、女性監督として史上最年少となる国際映画批評家連盟賞を受賞した。主な作品・『回転てん子とどりーむ母ちゃん』(オムニバス映画『21世紀の女の子』)・ドラマ『おやすみまた向こう岸で』・『魚座どうし』
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