原作は東野圭吾先生が20年前に発表された小説ですが、東日本大震災での原発事故の脅威をまるで予見したかのような内容です。それを、これまで見たことのない強い作品にしたかった。1つはエンターテイメント的な強さ。見た事のないアングル、飛行機同士の綱渡りとか、あまり既視感のないものを提示しようとしました。もう1つは、ある種の社会性を帯びている部分を、映画として逃げずにやろうと思いました。
テロを起こす側にせよ、守る側にせよ、否応がなしに、人間は自分が所属した会社や国が善になってしまいます。それは考えることを放棄してしまう、あるいは考えるなといわれるから。そこがすごく遠いこの作品のテーマという気がしていて、それが仮面という言葉に象徴されているのかもしれません。ハラハラドキドキのエンターテインメントを楽しんでもらう一方で、自分だったらどう動くかも感じていただけたらと思います。自分でもちょっとビックリする仕上がりになりました。
――ヘリを使った撮影、すごかったですね!
子どもを救うシーンが良かったでしょう。江口さんがヘリに乗っているシーンは実写です。廃校になった熱海の中学校を使い、乗り込むシーンも校庭で撮りました。飛行機から身を乗り出すシーンも、そのままのリアルな映像です。江口さんが最初「高いところはちょっと勘弁してくれ」っておっしゃっていたのですが、「やりましょう!大丈夫です、押さえていますから」と。そのかわり、万全の安全対策を講じて、考え得る最高のパイロットでやってもらいました。 子どもに向かって自衛隊員がモールス信号を送るシーンも本当に飛んでいます。浦安のディズニーランドの横で撮影しました。自衛隊機そのものもスタジオに入れてやりましたし、もちろんビッグBはスタジオの中に屋根のないものを丸々作って子どもの芝居を撮ったので、いわゆる撮影で考えられる技法はほとんど使いましたね。
今回の撮影は本当にロケ地・千葉に助けられました。
千葉にある“のこぎり山ハイウェイ”の観光道路でのカーアクションのシーンは、想定している高速増殖炉がある地形にそっくりで、イメージ通りの画が撮れました。しかも、定休日に人をシャットアウトして貸切にしてくれて、役者さんもノリにのっていました。ほかにも、海岸沿いで原発反対派のデモ隊と機動隊が衝突するシーンなど、物語が動く数多くのロケ地となったのが、富津付近や木更津などの千葉県です。僕の作品はもともと千葉で撮らせていただくことが多いのですが、今回のロケーションもまさに“VIVA!千葉”(笑)ですよ。
大きい輸送飛行機というと、僕の中ではサンダーバード2号というイメージがあります。
子供の頃、サンダーバード2号ってウーパールーパーみたいにかわいい感じで、一番人気があったんです。それに近づけたいけど顔は怖くしたいという非常に矛盾したことにこだわっていました。
また、高彦にとってビックBは父親が設計した自慢の証。僕も父親が建築士だったので気持ちが分かります。少年のロマンを詰め込みました。
とにかく楽しむことです。苦しそうな顔をしている人は要りません。映画ドラマは祭りのようなものですからね。みんなで笑いながら仕事しようぜと思っています。そのかわり、周りに気を遣おう。アイデアに上下関係はなくて、誰が言っても、面白ければ採用です。特に助監督にはそう言っています。撮影スタッフの唐沢君はドラマ『金田一少年の事件簿』以降一緒で20年以上の付き合いですが、彼のいいところは底なしに明るいところです。美術デザインの相馬君もすごく明るくて、そんな人が多いので周りも明るいし、何より自分も楽しいですね。しかめっ面したスタッフには80年代に相当懲りたんですよ。おっかないなあ、なぜこんな怖くしているんだろうと、すごく嫌で。無用な緊張感はいらない。そんな面倒くさいなら自分でチームを作ってしまおうと思ったのが始まりですね。
――監督は地域活性に繋がる作品をたくさん撮られていますね。
そうですね。やるのだったら、地域に根差した映像を撮りたいと思っています。最近のドラマ『ヤメゴク』は東京で、どこでもスカイツリーが見える設定にしたかったし、これから撮ろうとしているドラマも錦糸町と言う具体名をつけています。今まで撮った作品も、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』は池袋という街ですごくリアリティがあったし、映画『BECK』の横須賀もそう。今回の千葉のように、いつも別地域の設定になってしまうのは申し訳ないですが、ご当地に恩返しできることがあればやりたい。今は、本当に元気だった頃の気仙沼の映画を作りたいと企画中です。震災後の気仙沼をきちっと見つけるドキュメンタリーも重要だけど、元気だったころの気仙沼を見ていただくこともある種の復興支援になると思っています。広く応援していただく方を求めております。
原作は東野圭吾先生が20年前に発表された小説ですが、東日本大震災での原発事故の脅威をまるで予見したかのような内容です。それを、これまで見たことのない強い作品にしたかった。1つはエンターテイメント的な強さ。見た事のないアングル、飛行機同士の綱渡りとか、あまり既視感のないものを提示しようとしました。もう1つは、ある種の社会性を帯びている部分を、映画として逃げずにやろうと思いました。
テロを起こす側にせよ、守る側にせよ、否応がなしに、人間は自分が所属した会社や国が善になってしまいます。それは考えることを放棄してしまう、あるいは考えるなといわれるから。そこがすごく遠いこの作品のテーマという気がしていて、それが仮面という言葉に象徴されているのかもしれません。ハラハラドキドキのエンターテインメントを楽しんでもらう一方で、自分だったらどう動くかも感じていただけたらと思います。自分でもちょっとビックリする仕上がりになりました。
――ヘリを使った撮影、すごかったですね!
子どもを救うシーンが良かったでしょう。江口さんがヘリに乗っているシーンは実写です。廃校になった熱海の中学校を使い、乗り込むシーンも校庭で撮りました。飛行機から身を乗り出すシーンも、そのままのリアルな映像です。江口さんが最初「高いところはちょっと勘弁してくれ」っておっしゃっていたのですが、「やりましょう!大丈夫です、押さえていますから」と。そのかわり、万全の安全対策を講じて、考え得る最高のパイロットでやってもらいました。 子どもに向かって自衛隊員がモールス信号を送るシーンも本当に飛んでいます。浦安のディズニーランドの横で撮影しました。自衛隊機そのものもスタジオに入れてやりましたし、もちろんビッグBはスタジオの中に屋根のないものを丸々作って子どもの芝居を撮ったので、いわゆる撮影で考えられる技法はほとんど使いましたね。
今回の撮影は本当にロケ地・千葉に助けられました。
千葉にある“のこぎり山ハイウェイ”の観光道路でのカーアクションのシーンは、想定している高速増殖炉がある地形にそっくりで、イメージ通りの画が撮れました。しかも、定休日に人をシャットアウトして貸切にしてくれて、役者さんもノリにのっていました。ほかにも、海岸沿いで原発反対派のデモ隊と機動隊が衝突するシーンなど、物語が動く数多くのロケ地となったのが、富津付近や木更津などの千葉県です。僕の作品はもともと千葉で撮らせていただくことが多いのですが、今回のロケーションもまさに“VIVA!千葉”(笑)ですよ。
大きい輸送飛行機というと、僕の中ではサンダーバード2号というイメージがあります。
子供の頃、サンダーバード2号ってウーパールーパーみたいにかわいい感じで、一番人気があったんです。それに近づけたいけど顔は怖くしたいという非常に矛盾したことにこだわっていました。
また、高彦にとってビックBは父親が設計した自慢の証。僕も父親が建築士だったので気持ちが分かります。少年のロマンを詰め込みました。
とにかく楽しむことです。苦しそうな顔をしている人は要りません。映画ドラマは祭りのようなものですからね。みんなで笑いながら仕事しようぜと思っています。そのかわり、周りに気を遣おう。アイデアに上下関係はなくて、誰が言っても、面白ければ採用です。特に助監督にはそう言っています。撮影スタッフの唐沢君はドラマ『金田一少年の事件簿』以降一緒で20年以上の付き合いですが、彼のいいところは底なしに明るいところです。美術デザインの相馬君もすごく明るくて、そんな人が多いので周りも明るいし、何より自分も楽しいですね。しかめっ面したスタッフには80年代に相当懲りたんですよ。おっかないなあ、なぜこんな怖くしているんだろうと、すごく嫌で。無用な緊張感はいらない。そんな面倒くさいなら自分でチームを作ってしまおうと思ったのが始まりですね。
――監督は地域活性に繋がる作品をたくさん撮られていますね。
そうですね。やるのだったら、地域に根差した映像を撮りたいと思っています。最近のドラマ『ヤメゴク』は東京で、どこでもスカイツリーが見える設定にしたかったし、これから撮ろうとしているドラマも錦糸町と言う具体名をつけています。今まで撮った作品も、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』は池袋という街ですごくリアリティがあったし、映画『BECK』の横須賀もそう。今回の千葉のように、いつも別地域の設定になってしまうのは申し訳ないですが、ご当地に恩返しできることがあればやりたい。今は、本当に元気だった頃の気仙沼の映画を作りたいと企画中です。震災後の気仙沼をきちっと見つけるドキュメンタリーも重要だけど、元気だったころの気仙沼を見ていただくこともある種の復興支援になると思っています。広く応援していただく方を求めております。
(STORY)
1995年8月8日。最新鋭の超巨大ヘリコプター《ビッグB》が突然動き出し、子供を一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止。遠隔操縦によるハイジャックという驚愕の手口を使った犯人は<天空の蜂>と名乗り、“全国すべての原発の破棄”を要求。従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に撃墜させると宣言する。取り残された子供は、《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原(江口洋介)の一人息子。原子力発電所の設計士・三島(本木雅弘)とともに日本消滅の危機を止めるべく奔走するが、政府は原発破棄を回避しようとする。その時、捜査の手は意外な人物に――。
監督:堤幸彦 原作:東野圭吾「天空の蜂」講談社文庫 脚本:楠野一郎
キャスト:江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、國村隼、柄本明ほか
9月12日(土)全国ロードショー
©2015「天空の蜂」製作委員会
堤幸彦 (つつみ・ゆきひこ)
1955年生まれ、愛知県出身。映画、ドラマ、CMなどジャンルを問わずヒット作を連発。映画『トリック劇場版』シリーズ(02年~)、映画『20世紀少年』3部作(08~09年)、映画『BECK』(10年)といった多数のエンターテイメント作品を手がける一方で、『悼む人』(15年)など社会派作品も意欲的に発表している。最新作は『イニシエーション・ラブ』(15年)など。