峠のシーンも福島ですか
【下山監督】はい、福島県只見町で撮影しました。実はこの道路は冬季封鎖されており、頂上付近は雪が積もっています。その期間に雪のない封鎖区間で撮影をしました。あれだけ激しく撮影しているところへ町長やパトカーも来て、普通ならば怒られる局面じゃないですか。聞いてみると「単に見に来た」と(笑)。このような撮影は本来最も迷惑をかけるパターンだと思います。騒音も凄いですし、タイヤ痕も残ります。しかし、町の有志の皆さんが手作業で痕を消してくださったりして、福島県の皆さんの人柄も大きく影響しています。このように地元の方々とのトラブルやクレームがなかった分、撮影で苦労したイメージが本作にはないです。撮影が終わっても、キャンペーンで訪れると駆けつけてくださるなど、本当に良い関係性の中でやらせていただきました。そうしたこともあり、発信の機会を作るクラウドファンディングにつながりました。
【瀬木プロデューサー】県と只見町の方に協力頂きました。行政・地域の皆様との協働関係といいますか、積極的にご協力いただいたので良い関係の中で作り上げることができました。愛情と温かさが素晴らしかったです。本当に人の力で生まれた作品だと感じています。
最後に、これから業界に入ってくる若い方々に向けてアドバイスをいただけますか
【下山監督】近年、CGや加工編集によるバーチャルとリアルの境目がなくなってきています。最終的に加工するのはよいのですが、撮影自体はやはりリアルには勝てないです。それはこの映画で最も実感したことで、あらゆる方々の協力あってのリアルでした。ロケーション交渉においてもですが、楽なものと大変なものがあった時に、常に大変な方を選んで欲しいです。映画というのは、車や人を止めたり雨を降らせたりと、大変な撮影をするのは大前提です。ロケーション交渉をする際も、丁寧に理解してもらうことで協力体制を作らなければなりません。そこで手間を惜しまず地域の方に意図を持って説明をすれば、それは地元のためにもなるはずです。そうして作り上げた作品は、映画としての幸せ度が違うと思います。
【瀬木プロデューサー】監督のおっしゃるとおりです。今は少人数で手軽に映像制作ができるようになって、みんなが自分で情報発信をしています。それはそれで素晴らしいことですが、一方で多くの方に見てもらう作品を作るとなった時、どうしてもお金や手間がかかります。人間はコミュニケーションの動物なので、人と会って話すということの喜びを感じて欲しいです。そのきっかけが映画の現場だったらいいなと思っています。映画は、もっと面白くてためになる素晴らしいものだということを、地域と協力して作り上げる中で共有できればいいと思います。
ありがとうございました!