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ホーム > 映像関係者の声 > 監督インタビュー > 衝撃のラストに感涙。母の愛に隠れた秘密と家族の絆 /本が面白ければ、スタッフも全力で応えてくれる

衝撃のラストに感涙。母の愛に隠れた秘密と家族の絆 /本が面白ければ、スタッフも全力で応えてくれる

2016.10.18
監督
中野量太さん
自分らしい作品を作る、と仰っていた監督。母親の双葉は監督の理想の母親でしょうか?
自分らしい作品を作る、と仰っていた監督。母親の双葉は監督の理想の母親でしょうか?

 理想かどうかは分かりませんが、僕の中では「母親は強い」という印象があります。誰もが母親から生まれるので、すべての中心だと思っているのかもしれません。僕は母に育てられているので、母親が一番愛を与えてくれる存在であって欲しい、という想いから人物像を作りあげたのだと思います。

 劇中での母娘のやりとりは僕が経験したことを描いているわけではありませんが、僕が知らない感覚は描いていないです。そこで嘘をつくと僕らしくないし、嫌なんです。誰かが誰かを思う気持ち、その感覚に嘘は使っていません。

監督と役者さんが一緒に作品をつくっていくような作業はありましたか?

 “家族を作る行為”をしましたね。撮影に入る前から、宮沢さんに「毎日、娘たち(杉咲花、伊東蒼)と連絡をとってください」とお願いしました。実際に毎日メールのやりとりをしてくださり、子どもたちからも「今日はこんなことがあったよ」とお母ちゃんに報告をしていました。ほかにも、一緒に銭湯のお風呂掃除をしてもらったり、食事会をして家族についてみんなで語り合ったりする時間をつくりました。

 僕は監督の仕事というのは、現場で皆さんが一番やりやすい土台を作ることだと思っています。突然現場に来て家族をやってくださいと言われても、役者だから出来ますけど、やはり“絶対に映らないもの”があります。人間同士のお芝居なので当然感情が生まれますから、事前にやりやすい土台を作ってあげることでもっと良くなります。宮沢さんは「あまりこういうやり方はしてこなかった」と少し驚いていました。僕として、事前の役者同士の環境づくりは、やるとやらないではかなり演技に違いが出てくると思っています。 

オダギリさんはどういう父親像をイメージされてキャスティングされたのですか?

 あの父親は「どこか憎めない、どうしようもない人」ですが、中身は悪い人ではない。そういう人物を描くのは難しいですが、オダギリさんは実は三の線もできることを知っていたので、いけるのではないかと思いました。最初は格好良すぎて大丈夫かと不安だったのですが、「格好良くならないようにしてください」とお願いした結果、いい感じに映っています。試写でも「腹が立つご主人だけど、憎めないんだよね」という声があがっていたので、ハマっていたと思います。

子役ならではの演技指導というのはありましたか?

 子役はその子の持つ良さを引き出してあげることが一番だと僕は思っています。(杉咲)花だけあて書きなのですが、あの子は憂いを持っているんですよね。寂しさを持っている子だから、花にぴったりだと思い、引き出してあげようと思いました。(伊東)蒼も同じで、この子のいいところも、子役子役したような芝居ではなく自然な芝居をしてくれるところです。あの子が持っている良さを出すために色々(撮影前から役者同士で交流をさせるなど)やりましたし、ロケに入った時はもう姉妹の感じが出ていて二人はとてもよかったです。

監督のこだわられた銭湯のシーンは東京最古級の木造建築銭湯「月の湯」と栃木県・足利市の銭湯「花の湯」の2つを使用していますが、撮影場所を見つけるのに苦労されましたが?

 外観を撮影した花の湯は「面白い銭湯があるよ」と言われて早い時期に見つけましたが、月の湯は苦労しました。多分、制作部は銭湯内部の撮影も花の湯で撮影したかったのだろうけど、僕はどうしても富士山にこだわっていたので(ロケハン当時は、富士山の壁画ではなかった)、違う銭湯を探してもらいました。実際に十か所以上ロケハンに行ったのですが、最後に出てきたのが月の湯でした。あそこまで綺麗に番台が残っていて、さらに富士山の壁画にもこだわっている所はほかに無かったです。やっぱりロケ―ションは土台ですから、大事にしています。

脚本を書かれる段階で、ロケーションのイメージはあったのですか?

 特別な場所のイメージはなかったですが、人と人とのつながりを描く時はすこし田舎のほうが描きやすいです。でも小さい田舎ではなく地方都市の一つみたいな、北関東での撮影が今までの作品でも多いですね。

 劇中で登場する“タカアシガニ“は、静岡駿河湾にしかないのでそこで撮りました。当初、脚本では”富山のホタルイカ“の設定だったのですが、季節的に合わない上、富山まで行くロケ代はないと言われて(笑)、そこでしか捕れない海産物はないかなと懸命に探して脚本を変えました。結果的にめちゃくちゃいい感じになったと思います。

母娘が激しくぶつかるシーンは、監督も役者さんも苦労されましたか?

 最後の病室のシーンでは、花が本番まで母に会いたくないと言い出しまして、絶対に合わせないようにしました。撮影の時に初めてお母さんの姿を見ているので、感情を見せて本当に泣くのですね。

 港の駐車場で、双葉が安澄に衝撃の事実を告げる車中のシーンも緊張感が凄かったですね。あのシーンはカットかかる前から泣いていました。二人(宮沢りえ、杉咲花)があのシーンに全身全霊をかけてくれたし、みんな泣きながら見ていました。

この映画を、特にどんな方に観て欲しいですか?

 どの世代の方にも共感してもらえるようにできていると思います。子供から大人、さらにもっと上まで。

あえて言うならば、一家みんなで観てくれたらと思います。三世代ぐらいが集まって観て、観終わった後にそれぞれの思いを話し合ってもらえたら……家族で観てもらえたら本当に嬉しいです。

監督ご自身についてー―今後も映画づくりは、オリジナルにこだわっていきたいですか?

 そんなことはないです。でも、僕らしさが出ない物はやらないと思います。デビューだけは意地でもオリジナルでデビューしたかったのでこだわっていましたが、これで少し肩の荷が下りたので。これからもオリジナルにこだわる、ということはないですね。

今後一緒に働きたいと思うスタッフは、どんな方ですか?

 監督なんて、サポートしてもらわないと何もできません。僕は、それぞれ技術パートのプロを気持ち良く動かすことが役割だと思っています。絶対に面白いと思っているものに対しては、どのパートでも必死になってやってくれるし、それをまず提供するのが監督の仕事だと思うのです。僕はちゃんと面白いものをもってくるから、それに全力で応えてくれるスタッフとまたやりたいです。

自分らしい作品を作る、と仰っていた監督。母親の双葉は監督の理想の母親でしょうか?
自分らしい作品を作る、と仰っていた監督。母親の双葉は監督の理想の母親でしょうか?

 理想かどうかは分かりませんが、僕の中では「母親は強い」という印象があります。誰もが母親から生まれるので、すべての中心だと思っているのかもしれません。僕は母に育てられているので、母親が一番愛を与えてくれる存在であって欲しい、という想いから人物像を作りあげたのだと思います。

 劇中での母娘のやりとりは僕が経験したことを描いているわけではありませんが、僕が知らない感覚は描いていないです。そこで嘘をつくと僕らしくないし、嫌なんです。誰かが誰かを思う気持ち、その感覚に嘘は使っていません。

監督と役者さんが一緒に作品をつくっていくような作業はありましたか?

 “家族を作る行為”をしましたね。撮影に入る前から、宮沢さんに「毎日、娘たち(杉咲花、伊東蒼)と連絡をとってください」とお願いしました。実際に毎日メールのやりとりをしてくださり、子どもたちからも「今日はこんなことがあったよ」とお母ちゃんに報告をしていました。ほかにも、一緒に銭湯のお風呂掃除をしてもらったり、食事会をして家族についてみんなで語り合ったりする時間をつくりました。

 僕は監督の仕事というのは、現場で皆さんが一番やりやすい土台を作ることだと思っています。突然現場に来て家族をやってくださいと言われても、役者だから出来ますけど、やはり“絶対に映らないもの”があります。人間同士のお芝居なので当然感情が生まれますから、事前にやりやすい土台を作ってあげることでもっと良くなります。宮沢さんは「あまりこういうやり方はしてこなかった」と少し驚いていました。僕として、事前の役者同士の環境づくりは、やるとやらないではかなり演技に違いが出てくると思っています。 

オダギリさんはどういう父親像をイメージされてキャスティングされたのですか?

 あの父親は「どこか憎めない、どうしようもない人」ですが、中身は悪い人ではない。そういう人物を描くのは難しいですが、オダギリさんは実は三の線もできることを知っていたので、いけるのではないかと思いました。最初は格好良すぎて大丈夫かと不安だったのですが、「格好良くならないようにしてください」とお願いした結果、いい感じに映っています。試写でも「腹が立つご主人だけど、憎めないんだよね」という声があがっていたので、ハマっていたと思います。

子役ならではの演技指導というのはありましたか?

 子役はその子の持つ良さを引き出してあげることが一番だと僕は思っています。(杉咲)花だけあて書きなのですが、あの子は憂いを持っているんですよね。寂しさを持っている子だから、花にぴったりだと思い、引き出してあげようと思いました。(伊東)蒼も同じで、この子のいいところも、子役子役したような芝居ではなく自然な芝居をしてくれるところです。あの子が持っている良さを出すために色々(撮影前から役者同士で交流をさせるなど)やりましたし、ロケに入った時はもう姉妹の感じが出ていて二人はとてもよかったです。

監督のこだわられた銭湯のシーンは東京最古級の木造建築銭湯「月の湯」と栃木県・足利市の銭湯「花の湯」の2つを使用していますが、撮影場所を見つけるのに苦労されましたが?

 外観を撮影した花の湯は「面白い銭湯があるよ」と言われて早い時期に見つけましたが、月の湯は苦労しました。多分、制作部は銭湯内部の撮影も花の湯で撮影したかったのだろうけど、僕はどうしても富士山にこだわっていたので(ロケハン当時は、富士山の壁画ではなかった)、違う銭湯を探してもらいました。実際に十か所以上ロケハンに行ったのですが、最後に出てきたのが月の湯でした。あそこまで綺麗に番台が残っていて、さらに富士山の壁画にもこだわっている所はほかに無かったです。やっぱりロケ―ションは土台ですから、大事にしています。

脚本を書かれる段階で、ロケーションのイメージはあったのですか?

 特別な場所のイメージはなかったですが、人と人とのつながりを描く時はすこし田舎のほうが描きやすいです。でも小さい田舎ではなく地方都市の一つみたいな、北関東での撮影が今までの作品でも多いですね。

 劇中で登場する“タカアシガニ“は、静岡駿河湾にしかないのでそこで撮りました。当初、脚本では”富山のホタルイカ“の設定だったのですが、季節的に合わない上、富山まで行くロケ代はないと言われて(笑)、そこでしか捕れない海産物はないかなと懸命に探して脚本を変えました。結果的にめちゃくちゃいい感じになったと思います。

母娘が激しくぶつかるシーンは、監督も役者さんも苦労されましたか?

 最後の病室のシーンでは、花が本番まで母に会いたくないと言い出しまして、絶対に合わせないようにしました。撮影の時に初めてお母さんの姿を見ているので、感情を見せて本当に泣くのですね。

 港の駐車場で、双葉が安澄に衝撃の事実を告げる車中のシーンも緊張感が凄かったですね。あのシーンはカットかかる前から泣いていました。二人(宮沢りえ、杉咲花)があのシーンに全身全霊をかけてくれたし、みんな泣きながら見ていました。

この映画を、特にどんな方に観て欲しいですか?

 どの世代の方にも共感してもらえるようにできていると思います。子供から大人、さらにもっと上まで。

あえて言うならば、一家みんなで観てくれたらと思います。三世代ぐらいが集まって観て、観終わった後にそれぞれの思いを話し合ってもらえたら……家族で観てもらえたら本当に嬉しいです。

監督ご自身についてー―今後も映画づくりは、オリジナルにこだわっていきたいですか?

 そんなことはないです。でも、僕らしさが出ない物はやらないと思います。デビューだけは意地でもオリジナルでデビューしたかったのでこだわっていましたが、これで少し肩の荷が下りたので。これからもオリジナルにこだわる、ということはないですね。

今後一緒に働きたいと思うスタッフは、どんな方ですか?

 監督なんて、サポートしてもらわないと何もできません。僕は、それぞれ技術パートのプロを気持ち良く動かすことが役割だと思っています。絶対に面白いと思っているものに対しては、どのパートでも必死になってやってくれるし、それをまず提供するのが監督の仕事だと思うのです。僕はちゃんと面白いものをもってくるから、それに全力で応えてくれるスタッフとまたやりたいです。

作品情報
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』

(STORY)

銭湯「幸の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬ることを決意する。

 

タイトル:湯を沸かすほどの熱い愛

配給:クロックワークス

コピーライト:(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会 

公開表記:10月29日(土)新宿バルト9他全国ロードショー

公式サイト:atsui-ai.com

出演:宮沢りえ  杉咲花  篠原ゆき子 駿河太郎 伊東蒼 /松坂桃李 /オダギリジョー

脚本・監督:中野量太

 

中野量太(なかの・りょうた)

1973年生まれ、京都育ち。大学卒業後、日本映画学校に入学。卒業制作の『バンザイ人生まっ赤っ赤。』(00)が日本映画学校今村昌平賞などを受賞。卒業後、助監督やテレビディレクターを経て6年ぶりに撮った短編映画『ロケットパンチを君に!』(06)が7つの映画賞を獲得。その後『チチを撮りに』(12)で各国の映画祭に招待され、国内外で14の賞に輝く。

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