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あの有名なインターネット都市伝説が満を持して映画化!/ 映画『きさらぎ駅』の永江二朗監督に『作品の見どころ』『撮影の裏側』を聞く

2022.06.03
監督
永江二朗さん

2004年にインターネット掲示板“2ちゃんねる”に実況形式の怪奇体験談として語られた「きさらぎ駅」。
その「きさらぎ駅」が、ホラーファンタジー映画として2022年6月3日(金)にいよいよ全国公開される。永江二朗監督に撮影の苦労や思い出、ロケーションへの想いを語ってもらいました。

「きさらぎ駅」の制作に至った経緯を教えてください。
 『真・鮫島事件』という映画を以前監督し、ご一緒させていただいたプロデューサーの方々との間で、ネット都市伝説をシリーズとして作って行こうというお話があり進みました。“2ちゃんねる”の中で、「きさらぎ駅」は最大のネタだったので、今回の映画『きさらぎ駅』がスタートしました。なので、何かきっかけがあったというよりは、「ネット都市伝説」というものの映画化をシリーズ化していこうというところから話が進みました。
企画から撮影に入るまで、どのくらいの期間要したのでしょうか?
 『真・鮫島事件』が終わってからなので、1年半ぐらい企画から撮影まで時間を要しました。ネット都市伝説シリーズとしてやるからにはネタ的に“鮫島事件”を超えていかないといけないと思っていて、超えるものといったら『きさらぎ駅』しかなかったです。『きさらぎ駅』はネット系の都市伝説では、”キングオブ都市伝説”と言われるほど一番有名です。普通の人も一度は聞いたことがあるというレベルなので、『真・鮫島事件』が終わった時から「次やれるチャンスがあれば”きさらぎ駅”がいいと思います」と僕はずっと言っていました。(笑)

 撮影期間は、2週間ないくらいでした。キャストの方のスケジュールや現場のスケジュールも勿論あるんですけど、FPS(First Person Shooterは一人称視点)の手法をとり入れて撮影しており、基本的にワンカットで撮っているのでそれも撮影期間が短い理由だと思います。FPS手法の強みと言うのは4ページ、5ページあるのが、うまくいけば実時間の4分、5分で終わるということです。通常の映画で4、5ページの撮影はカット割りをしてワンカットずつ撮影するので、5、6時間、下手したら一日中かかります。FPS手法は簡単にいうと、「リアルタイムで撮影している」ということになりますので、これほど短時間で撮れた理由だと思います。
作品を撮影している間苦労した点とか、難しかった点は?
 やはりFPSのワンカットにこだわってやっていたので、その苦労しかないくらいの撮影でした(笑)FPSの部分はヘルメットみたいなのにゴープロをつけて、佐藤江梨子さんの吹き替えを、道本成美さんという女優の方がやってくれていたのですが、自分の目線ではないので、カメラがずれてしまったり自分の影が入ってしまったりなどして、壮絶でした。「一回で終わる」とさっきはサラッと言いましたが同じ芝居を基本は9回くらいはやりました。一回で終わることはほぼなかったです。さっきの話と矛盾するのですが、何回もやり直しでした。カット割のある撮影は早坂伸さんが撮っているからいいのですが、FPSは女優さんがカメラをつけて、芝居しながら撮影なので本当に大変です。道本さんには感謝しかないです。吹き替えなので道本さんは絵に入れないですし、声も変えちゃうわけで。そういう意味で彼女なしにはこの作品できなかったと思うくらい感謝しています。
そこまでして、FPSにこだわられたのは何かきっかけがあったのでしょうか。
 FPS手法の映画は、日本では中々ないですが海外ではアクション映画の『ハードコア』という有名な作品があります。全編FPS手法で、世界的に評価されて、「FPSといえば”ハードコア”」という。その世界的に騒がれた撮影方法をホラーでやってみたいという想いが昔からありました。POVというビデオカメラ目線の手法はよくあるのですが、FPSは主人公の目線なのでズームとかができないというのもあり、ずっと一定の画角で撮らなければいけないので、難しかったです。普通の映画では簡単にできる撮影手法が全く出来ないんです。寄れないしカットも割らないというのが、いざやってみると大変で、なぜみんながやらないかっていうことに気づきました(笑)

※POV:「Point of View Shot」で主観ショットを用いた映画の通称。カメラのアングルを登場人物の視線(主観)から物を見ているようなカメラワークで撮影する手法。例:登場人物がカメラを持って他の登場人物を追っている――というスタイル。
そんな苦労して撮影されたFPS映画ですが、観た際の特徴などあるのですか?
 音、ですかね。劇場で一回テストを流してみたのですが臨場感がすごかったです。5.1チャンネルなので後ろから声が聞こえるのです。FPSの一番の特性です。右から聞こえたら右から聞こえるし、完全にVRゲームと一緒です。息遣いとかも全部分かれるので、5.1チャンネルでやると本当に体感する感じになります。なので是非映画館で観てほしいです。
ロケ地についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。舞台の遠州鉄道は今も電車が通っている線路になるのですか?
  廃線じゃないです。(笑)静岡の新浜松駅から西鹿島駅までを運行する電車で、劇中に出てくる赤色の電車と駅のホームが遠州鉄道です。実は、異世界にワープするまでが遠州鉄道で、ワープしてからは長野県にある上田電鉄です。通勤などで、遠州鉄道は今でもすごい人が乗っているので、撮影許可が下りたのは本当によかったです。現場でもお話をした際、協力的で本当に素晴らしかったです。
ロケ場所の思い出などはありますか?
 ご飯が美味しかったというのはあります。休みがなくてずっと撮影だったので、遊びに行くことがなかったのでご飯が楽しみでした。長野県の上田市に泊まっていた時は、近くに有名なとんかつ屋さんがあったのですが、そのとんかつが凄く美味しかったです。あとは、撮影は去年の11月頃だったので、寒かったです。東京より数段、長野に行くと寒かったです。我々はすぐ上着を着たのですが、役者さんは結構薄着だったので申し訳ないなと思いました。天気が悪い日も多く、雨も多い中でもやっていただいて…。
遠州鉄道さんは最初から協力的だったのですか?
 元ネタが遠州鉄道の設定なので、今までも遠州鉄道さんは色々と「きさらぎ駅」コラボされていたのですが、映画化ということで「待っていました!」という雰囲気を感じました。(笑)ダイヤを乱すことが出来ないので並大抵ではなかったと思います。それでも「きさらぎ駅」は、「鷺宮駅」が舞台って言われているので、「本当にお客さんの迷惑にならなければ、やれることはやらせていただきます」と言っていただいていたので本当に心強かったです。電車を下げてもらったり、安全確認や深夜まで一緒にいていただいて、大変だったと思います。ホラー映画は敬遠されてしまったりしますが、「きさらぎ駅」はどちらかというと、ホラーっていうよりファンタジー(異世界)なので快く対応いただけたのかもしれません。
ホラーにもいろいろなジャンルがありますね。今作でロケたくさんされていたと思うんですけれども、監督がロケ場所に求めることは何でしょう。
 深い質問ですね。「プロフェッショナルとは?」って聞かれているみたいです(笑)やはり、ロケ地の魅力って景色というのが最重要だと思うのですが、僕は割と、現地の方とのコミュニケーションが大事で、愛情というか、映画愛に溢れる方が多いと嬉しく思います。最終的には人なのかなと思います。行く先々の方が作品に愛情を注いでくれることが一番うれしいです。担当者の方だったり管理人の方だったりもそうです。景色も大事なのですが、ロケ場所を貸してくださっている方々が気持ちよく貸してくださっていると、すごくうれしいなぁと思います。そこが一番です。
最後に、映像制作業界を目指す学生の方や、監督、プロデューサーを目指す若い方々にアドバイスをいただければと思います。
僕は、下積みというか、助監督の見習いから初めて、徐々に、フォース、セカンド、チーフ、監督になりました。今の時代、助監督を経験せずとも、映像の編集もできてしまうし監督もできてしまうし、何でもできる世代になっています。監督が必ず助監督を経験しているというのはなくなってきているのですが、僕は助監督ってやった方がいいと思っています。そこは、いま、凄く環境が良くなっているので、もし飛び込むことに尻込みしている人がいたら、助監督も決して怖がらずやってみてもらえれば、楽しいと思えるかと思います。助監督もぜひやって、監督を目指してほしいなと個人的には思っています。

‐‐‐ありがとうございました!
作品情報
映画『きさらぎ駅』
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 大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松佑里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者は『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、数か月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋に案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどりついた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものでもなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。純子と別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。
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【作品情報】
2022年6月3日(金)公開
出演者:恒松祐里、本田望結 、莉子、寺坂頼我、木原瑠生/芹澤興人/佐藤江梨子
監督:永江二朗
脚本:宮本武史
制作プロダクション:キャンター 配給:イオンエンターテイメント/ナカチカ
製作:映画「きさらぎ駅」製作委員会(キャンター/イオンエンターテイメント/ナカチカ/BBB/博報堂DYミュージック&ピクチャーズ)
©2022「きさらぎ駅」製作委員会

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