今までの作風とは違うテイストのオファーをいただけたのは、新たな挑戦をするワクワク感があり嬉しかったです。原作は、サスペンス要素がありつつも人を怖がらせるだけの作品ではなく、「愛する人を守るために何ができるか」という選択の話でもあります。そこに映画では「自分が主人公と同じ状況に置かれたらどうする」という問いかけをしたいと思いました。主人公の慎一郎というキャラクターは誰にも言えない秘密を抱えています。自分が誰かを助けても、周囲はそれが分からない。では、助けるのをやめるのか、見捨てるのか、そういった葛藤があります。映画の中では生死ですが、自分の「こうありたいと思う人間像」との葛藤という点で、私たちの日常でも直面するテーマなので、映画を観る多くの人が自分と重ねられるところが良いと思っています。
今までもファンタジー映画は何本か手がけましたが、今回は「人が透けて見える」という表現をするために、合成やCGでかなり工夫しました。実は、ただ透けて見えるだけでは滑稽さや可愛さが出てしまい、そんなに怖く見えないんです。死に近づいていく恐怖感を表現するために、ホラートーンの透け方にこだわって試行錯誤しました。
神戸はアップダウンが大きくて縦の構図を撮れる土地です。僕は、高低差のある地形というのは物語が生まれやすいと思っていて、下っていった先に海があるとか、何かそこに、物語の活路を感じる空間がある。個人的な好みなのかもしれないけど、何かとそういう場所に魅力を感じます。
神戸は全国のフィルムコミッションの中でも先進的な場所なので、経験値も高く素晴らしい対応でした。他にも電車シーンの撮影では、近鉄(近畿日本鉄道)さんの協力度が凄かったです。台本を読んだ時は「これ、どう撮るの?」とプロデューサーが遠い目をしたのですが(笑)、昼間に発煙筒をつけたり、撮影時は人をシャットアウトして頂くなど、ご協力頂きました。映画に理解があって、一緒に良い作品を作りましょうというスタンスの近鉄さんには本当に感謝しています。
ガレージは、奈良にある建物をお借りして、中は美術スタッフさんに飾りこんでいただきました。ガレージも「ただ油臭い」ということでは終わらない形にしたかったので、ディティールにもこだわっていて、慎一郎たちの作業着のデザインなどから考えていきました。映画『シックス・センス』のように街並みがゴシック調な雰囲気であるということもポイントです。観る人にファンタジー要素がすんなり入り込んでくれればいいな、と考えました。
僕は、物語が生まれる街の空気感を、一枚絵でシンボリックに見せたいと考えています。地方のロケーションにインスピレーションを受けたりするので「この街だったら何かが起こりそう」と感じる土地に惹かれます。いつも見慣れた風景ではない、どこか知らない街に行って想像するのが凄く好きなんです。ロケ地を選ぶ際は、キャラクターにおける感情の動きが一番表現しやすい場所はどこかと考えますね。
この世代でトップクラスのお芝居が上手なお二人なので、前からご一緒したいと思っていました。
神木君は、ト書きになくてもキャラクター性を汲み取って演技してくれるのが驚きでした。自分の中で、このキャラクターはここでは涙を流すんだろうなという、その瞬間のベストを察知する力がある役者さんなんだと思います。僕も撮っていて、彼が涙を流すシーンに鳥肌が立ちました。また架純ちゃんが演じた、細やかで優しくて健気なヒロイン像は、彼女が出してくれたアプローチで、ストーリー構成や共感という点で、すごく助けられました。
映画の中のどこかで必ず、役者さんそれぞれのキラーカットを狙っています。今までに撮られたことのないビューティーなカットを撮りたいと毎回思いますね。今回は、慎一郎と葵のデートの振り返りのシーンが「よし、いい画が撮れた!これは予告編に使えるぞ!」と思っていたら、本当に使われていました。
監督の目を持っていて欲しいと思います。例えばデートシーンで「アンティークショップ」と書いてあるけど「このシーンは、アンティークショップじゃないほうが二人も気持ちが出ると思います」と他の提案を持ってきてくれるのは嬉しいです。こちらの意図を汲んで、物語におけるキャラクターたちの感情をよりフォローできる場所をイメージして探してきてくれる方が好きですね。
今までの作風とは違うテイストのオファーをいただけたのは、新たな挑戦をするワクワク感があり嬉しかったです。原作は、サスペンス要素がありつつも人を怖がらせるだけの作品ではなく、「愛する人を守るために何ができるか」という選択の話でもあります。そこに映画では「自分が主人公と同じ状況に置かれたらどうする」という問いかけをしたいと思いました。主人公の慎一郎というキャラクターは誰にも言えない秘密を抱えています。自分が誰かを助けても、周囲はそれが分からない。では、助けるのをやめるのか、見捨てるのか、そういった葛藤があります。映画の中では生死ですが、自分の「こうありたいと思う人間像」との葛藤という点で、私たちの日常でも直面するテーマなので、映画を観る多くの人が自分と重ねられるところが良いと思っています。
今までもファンタジー映画は何本か手がけましたが、今回は「人が透けて見える」という表現をするために、合成やCGでかなり工夫しました。実は、ただ透けて見えるだけでは滑稽さや可愛さが出てしまい、そんなに怖く見えないんです。死に近づいていく恐怖感を表現するために、ホラートーンの透け方にこだわって試行錯誤しました。
神戸はアップダウンが大きくて縦の構図を撮れる土地です。僕は、高低差のある地形というのは物語が生まれやすいと思っていて、下っていった先に海があるとか、何かそこに、物語の活路を感じる空間がある。個人的な好みなのかもしれないけど、何かとそういう場所に魅力を感じます。
神戸は全国のフィルムコミッションの中でも先進的な場所なので、経験値も高く素晴らしい対応でした。他にも電車シーンの撮影では、近鉄(近畿日本鉄道)さんの協力度が凄かったです。台本を読んだ時は「これ、どう撮るの?」とプロデューサーが遠い目をしたのですが(笑)、昼間に発煙筒をつけたり、撮影時は人をシャットアウトして頂くなど、ご協力頂きました。映画に理解があって、一緒に良い作品を作りましょうというスタンスの近鉄さんには本当に感謝しています。
ガレージは、奈良にある建物をお借りして、中は美術スタッフさんに飾りこんでいただきました。ガレージも「ただ油臭い」ということでは終わらない形にしたかったので、ディティールにもこだわっていて、慎一郎たちの作業着のデザインなどから考えていきました。映画『シックス・センス』のように街並みがゴシック調な雰囲気であるということもポイントです。観る人にファンタジー要素がすんなり入り込んでくれればいいな、と考えました。
僕は、物語が生まれる街の空気感を、一枚絵でシンボリックに見せたいと考えています。地方のロケーションにインスピレーションを受けたりするので「この街だったら何かが起こりそう」と感じる土地に惹かれます。いつも見慣れた風景ではない、どこか知らない街に行って想像するのが凄く好きなんです。ロケ地を選ぶ際は、キャラクターにおける感情の動きが一番表現しやすい場所はどこかと考えますね。
この世代でトップクラスのお芝居が上手なお二人なので、前からご一緒したいと思っていました。
神木君は、ト書きになくてもキャラクター性を汲み取って演技してくれるのが驚きでした。自分の中で、このキャラクターはここでは涙を流すんだろうなという、その瞬間のベストを察知する力がある役者さんなんだと思います。僕も撮っていて、彼が涙を流すシーンに鳥肌が立ちました。また架純ちゃんが演じた、細やかで優しくて健気なヒロイン像は、彼女が出してくれたアプローチで、ストーリー構成や共感という点で、すごく助けられました。
映画の中のどこかで必ず、役者さんそれぞれのキラーカットを狙っています。今までに撮られたことのないビューティーなカットを撮りたいと毎回思いますね。今回は、慎一郎と葵のデートの振り返りのシーンが「よし、いい画が撮れた!これは予告編に使えるぞ!」と思っていたら、本当に使われていました。
監督の目を持っていて欲しいと思います。例えばデートシーンで「アンティークショップ」と書いてあるけど「このシーンは、アンティークショップじゃないほうが二人も気持ちが出ると思います」と他の提案を持ってきてくれるのは嬉しいです。こちらの意図を汲んで、物語におけるキャラクターたちの感情をよりフォローできる場所をイメージして探してきてくれる方が好きですね。
(STORY)
幼少期に両親を飛行機事故で失った木山慎一郎(神木隆之介)は、友人も家族も作らず孤独な人生を歩んできた。ある日、自分が“死ぬ直前の人間が透けて見える能力”=“フォルトゥナの瞳”の持ち主であることに気づいた慎一郎は、その能力で携帯ショップの店員・桐生葵(有村架純)の命を救う。惹かれ合う二人は幸せな日々を過ごすが、誰かの命を助けると自分の寿命が短くなるという事実が発覚。そんな折、慎一郎は透けている不特定多数の人々を目撃、そして葵までもが透け始めていることに気づく。
監督:三木孝浩
出演:神木隆之介、有村架純、志尊淳、DAIGO、松井愛莉、北村有起哉、斉藤由貴、時任三郎ほか
2019年2月15日(金)全国ロードショー
(C) 2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会
三木 孝浩(みき・たかひろ)監督
1974年、徳島県生まれ。多数のミュージックビデオ、ショートムービー、ドラマ、CM等を手がけ、カンヌ国際広告祭メディア部門金賞などを受賞。2010年、長編初監督作品となる映画『ソラニン』が大ヒット。主な映画作品に、『僕等がいた 前篇・後篇』(12)『陽だまりの彼女』(13)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)、『坂道のアポロン』(18)などがある。