筒井プロデューサー:中山七里さん原作の小説『護られなかった者たちへ』が2018年1月に発売され、拝見させていただきました。これは生活保護や、震災から10年を迎えた宮城・仙台をテーマとした作品で、意味のある映画にできると直感的に思いました。脚本の林民夫さんとは何回かお仕事する機会があり、たまたま別件で会った時にお話したら、「やるんだったらぜひ書きたいよ」と言っていただけました。松竹の福島プロデューサーに「脚本は林さん、監督は瀬々さんでぜひ一緒に映画を作りませんか?」と持ち込むと、一週間もしないうちにご快諾いただきました。
瀬々監督:2020年4月にクランクインしようとしたら、初めての緊急事態宣言が出ました。撮影が延期になって、コロナがどんな病気がわからない中で、映画どころじゃないという雰囲気もありました。そんな中での地方ロケは初めてだったので、どうやったらいいのかも分からず暗中模索の状態です。特にプロデューサーの方々はものすごく不安だったと思いますね。
筒井プロデューサー:映画・ドラマ業界の団体が出したガイドラインを参考にしながら、瀬々組オリジナルのガイドラインを、スタッフとプロデューサーチームで作っていきました。ガイドラインは日々変わる前提で、撮影するロケーション1か所1か所に共有して、ご理解頂いた上で現場に入っていきました。
瀬々監督:仙台市近郊の役所や公共機関の一角で撮りました。実際の福祉事務所ではないですけど、そういう役所をお借りして場所を確保して、撮らせてもらいました。基本営業時間外の土日で撮影しています。各地にフィルムコミッションがあるので、そういう方々にまず相談して、何か所か候補地を見ました。感染が広がっている時だったので、最初OKだったところがダメになることもありました。
瀬々監督:現地の方々の「方言」ですね。劇中で小学校の避難所に集まっているのは現地の方々です。声だけを取る「オンリー」では、最初にバックにいる人は話しているふりをして役者だけがセリフを言い合い、その後にバックの人たちの声を録ります。その時に方言が聞こえて、生々しく感じられました。実際に経験されていることを再現させることに悩みましたが、これを機に映画への思いを新たにしました。
瀬々監督:作中では佐藤健くんが何杯もうどんを食べていましたけど、それを準備してくれたのは現地のうどん屋さんです。お店の人が現場に来て、その場でゆでてくれました。コロナ禍だとそういう消えモノは、どんな作品もそうですが、専門の人に作ってもらっていました。現地のうどん屋さんが作るとおいしいので、健くんは結構食べていました。
瀬々監督:トップシーンで佐藤健くんが歩いてくる場面がありますが、工場に入るところで脇に一本の松の木が傾いた状態で倒れています。津波がきて、唯一生き残った松です。工場の中に入ると、窓に津波の水の跡が残っていますが、あれは実際の跡なのです。最初に、阿部さんが花を手向けた場所は、現在は復興祈念公園になっています。あそこが石巻市で一番ひどい被害にあったところです。 2011年にみなさんの記憶に残った場所の「今」が映っているので、そういう意味では貴重な映像、記録になっていると思います。最後の防潮堤も被災後に新たに作ったものなので、震災以降に変わってしまった風景が全部作品に映っています。
瀬々監督:そうですね。あとは病院のシーンで使用した、仙台市科学館です。地元の方は小学生の時に絶対行くようなところで、実は奥に鹿のはく製などが置いてあります。最後の病室は科学館の会議室で撮っています。仙台の人が行けば「科学館だ!病院になっている!」という発見があります。
瀬々監督:演出家によって選ぶ風景が全然違うので、一概には言えません。絵葉書みたいにきれいな画が好きな人もいれば、そこで生活している人たちのにおいが香り立つような生活感あふれる場所が好きという人もいるだろうし、フォトジェニックな画が好きな人もいるわけです。そんな中でも、僕は「その地域ならでは」というのは常に探しています。
瀬々監督:水が近くにある場所がわりと好きで、けっこう海の近くで撮っています。川でも水路でも、水けが近くにある風景はやっぱりいいなって思います。水辺っていうのは画になるなと。
筒井プロデューサー:自主制作の映画って海に行きたくなるか、線路を歩きたくなるかですよね。
瀬々監督:若い人たちはどんどん新しい場所を探したほうがいいと思います。なぜならセット撮影はお金がかかりますが、ロケは9億の映画でも30万円の映画でも、同じ場所を使うことができます。そこに格差はないです。頑張って、いい場所を探せば、それだけ映画の質も上がります。僕も若いころは「いい場所ないかな」と普段から捜し歩いていました。今はフィルムコミッションに頼りすぎだなと思うこともあります。
筒井プロデューサー:僕も瀬々さんと同じ考えです。ロケーションはピンからキリまで見つけてくれば自由に使えます。もちろん許可は取らないといけませんが、そういう意味ではロケーションは自由であり、戦う武器になります。今回の映画では、「作品におけるローケーションの重要性」を改めて痛感しました。
‐‐‐ありがとうございました!
筒井プロデューサー:中山七里さん原作の小説『護られなかった者たちへ』が2018年1月に発売され、拝見させていただきました。これは生活保護や、震災から10年を迎えた宮城・仙台をテーマとした作品で、意味のある映画にできると直感的に思いました。脚本の林民夫さんとは何回かお仕事する機会があり、たまたま別件で会った時にお話したら、「やるんだったらぜひ書きたいよ」と言っていただけました。松竹の福島プロデューサーに「脚本は林さん、監督は瀬々さんでぜひ一緒に映画を作りませんか?」と持ち込むと、一週間もしないうちにご快諾いただきました。
瀬々監督:2020年4月にクランクインしようとしたら、初めての緊急事態宣言が出ました。撮影が延期になって、コロナがどんな病気がわからない中で、映画どころじゃないという雰囲気もありました。そんな中での地方ロケは初めてだったので、どうやったらいいのかも分からず暗中模索の状態です。特にプロデューサーの方々はものすごく不安だったと思いますね。
筒井プロデューサー:映画・ドラマ業界の団体が出したガイドラインを参考にしながら、瀬々組オリジナルのガイドラインを、スタッフとプロデューサーチームで作っていきました。ガイドラインは日々変わる前提で、撮影するロケーション1か所1か所に共有して、ご理解頂いた上で現場に入っていきました。
瀬々監督:仙台市近郊の役所や公共機関の一角で撮りました。実際の福祉事務所ではないですけど、そういう役所をお借りして場所を確保して、撮らせてもらいました。基本営業時間外の土日で撮影しています。各地にフィルムコミッションがあるので、そういう方々にまず相談して、何か所か候補地を見ました。感染が広がっている時だったので、最初OKだったところがダメになることもありました。
瀬々監督:現地の方々の「方言」ですね。劇中で小学校の避難所に集まっているのは現地の方々です。声だけを取る「オンリー」では、最初にバックにいる人は話しているふりをして役者だけがセリフを言い合い、その後にバックの人たちの声を録ります。その時に方言が聞こえて、生々しく感じられました。実際に経験されていることを再現させることに悩みましたが、これを機に映画への思いを新たにしました。
瀬々監督:作中では佐藤健くんが何杯もうどんを食べていましたけど、それを準備してくれたのは現地のうどん屋さんです。お店の人が現場に来て、その場でゆでてくれました。コロナ禍だとそういう消えモノは、どんな作品もそうですが、専門の人に作ってもらっていました。現地のうどん屋さんが作るとおいしいので、健くんは結構食べていました。
瀬々監督:トップシーンで佐藤健くんが歩いてくる場面がありますが、工場に入るところで脇に一本の松の木が傾いた状態で倒れています。津波がきて、唯一生き残った松です。工場の中に入ると、窓に津波の水の跡が残っていますが、あれは実際の跡なのです。最初に、阿部さんが花を手向けた場所は、現在は復興祈念公園になっています。あそこが石巻市で一番ひどい被害にあったところです。 2011年にみなさんの記憶に残った場所の「今」が映っているので、そういう意味では貴重な映像、記録になっていると思います。最後の防潮堤も被災後に新たに作ったものなので、震災以降に変わってしまった風景が全部作品に映っています。
瀬々監督:そうですね。あとは病院のシーンで使用した、仙台市科学館です。地元の方は小学生の時に絶対行くようなところで、実は奥に鹿のはく製などが置いてあります。最後の病室は科学館の会議室で撮っています。仙台の人が行けば「科学館だ!病院になっている!」という発見があります。
瀬々監督:演出家によって選ぶ風景が全然違うので、一概には言えません。絵葉書みたいにきれいな画が好きな人もいれば、そこで生活している人たちのにおいが香り立つような生活感あふれる場所が好きという人もいるだろうし、フォトジェニックな画が好きな人もいるわけです。そんな中でも、僕は「その地域ならでは」というのは常に探しています。
瀬々監督:水が近くにある場所がわりと好きで、けっこう海の近くで撮っています。川でも水路でも、水けが近くにある風景はやっぱりいいなって思います。水辺っていうのは画になるなと。
筒井プロデューサー:自主制作の映画って海に行きたくなるか、線路を歩きたくなるかですよね。
瀬々監督:若い人たちはどんどん新しい場所を探したほうがいいと思います。なぜならセット撮影はお金がかかりますが、ロケは9億の映画でも30万円の映画でも、同じ場所を使うことができます。そこに格差はないです。頑張って、いい場所を探せば、それだけ映画の質も上がります。僕も若いころは「いい場所ないかな」と普段から捜し歩いていました。今はフィルムコミッションに頼りすぎだなと思うこともあります。
筒井プロデューサー:僕も瀬々さんと同じ考えです。ロケーションはピンからキリまで見つけてくれば自由に使えます。もちろん許可は取らないといけませんが、そういう意味ではロケーションは自由であり、戦う武器になります。今回の映画では、「作品におけるローケーションの重要性」を改めて痛感しました。
‐‐‐ありがとうございました!
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東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま”餓死”させられるという異様な殺人事件が相次いで発生。被害者はいずれも、誰もが慕う人格者だった。
捜査線上に浮かびあがったのは、別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根(佐藤健)という男。刑事の苫篠(阿部寛)は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し利根を追い詰めていくが、決定的な証拠がつかめないまま、第3の事件が起きようとしていた‐‐‐‐
なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?
やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃的な真実が明らかになっていく‐‐‐
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【作品情報】
2021年10月1日(金)公開
出演者:佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、永山瑛太、緒形直人 吉岡秀隆 倍賞美津子
主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
監督:瀬々敬久
脚本:林民夫・瀬々敬久 音楽:村松崇継
原作:中山七里「護られなかった者たちへ」(NHK出版)
企画:アミューズ 配給:松竹
©2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会
【INTERVIEW】
監督
瀬々敬久さん
プロデューサー
筒井竜平さん