原作から得られるイメージを映像にする際のロケ場所へのこだわりは
原作は愛媛の松山が舞台だったのですが、コロナの状況で撮影することができませんでした。そこで手を挙げてくださったのが岡山県。移動して、私も様々な土地を見させていただく中で「原作に沿ったもの」という考えががらりと変わり、いかに「よく見えるか」という考えになりました。例えば、原作のように居酒屋シーンが多いと映画では飽きるので、岡山の川や町並みを見て「ここで釣りをしながらあの会話をしたらいいのでは」などとパズルのように決めていきました。そうして進めた結果、全編岡山県での撮影になりました。地方都市の子たちという設定に岡山の自然はとても合っていて、誰が手入れをしているのかとてもきれいな景色でした。中でも吹屋は印象的で、深い山の奥にきれいでかわいらしい町があり驚きました。
また、全編岡山に決まった理由として、フィルムコミッションの妹尾さんという方をはじめ、対応してくださる方皆さんが協力的だったこともあります。作品に対して「だったらこれが必要ですね」などと提案してくださり、そのパターンが多くて懐が深い。町会長も一緒にまわってくださるなど、撮影がしやすかったです。
そんなこともあり、劇中では岡山の自然を洗練されたものに見せたかったですし、ポップでキュートなラブコメにしたかったので、撮影には楽し気な場所を選びました。役者の皆さんも開放的な場所での芝居にのびのびされていて、そうした相乗効果もぜひ見ていただきたいです。
主演の神尾楓珠さんはいかがでしたか
勘がいいのかなと思います。僕が思っているニュアンスをすぐに受け取ってくれて、また彼自身が「西条ならこういう感じなんじゃないか」と常に考えていた気がします。
撮影中「カット」と言うと、クスッと笑う時があって、どうしたのと聞くと「自分と西条がシンクロして面白かった」と言うんです。西条のタイミングと自分のタイミングをぴったり合わせることで、あまりない芝居のアプローチをしているのかなと思います。普段の姿勢から西条の雰囲気が出ており、この違和感のあるキャラクターを、生身の人間として見せる努力をしてくれていました。