『アイチェルカーレ』においてのこだわったポイントや、こんな人に見てほしいというメッセージをいただきたいです
どの作品にも当てはまりますが、ファーストシーンとラストシーンにはいつもこだわっています。やはりファーストシーンってその映画を観始める瞬間なので、ファーストシーンで最後まで観たい気持ちになってほしいと思うんです。冒頭1分とか5分とかを観て、つまらなそうだったら観たくなくなるじゃないですか。今回でいうと、僕は過去作品でもクラブみたいな場所が出てくることはあまりなかったのですが、主人公が、この話のきっかけとなる「あい」との出会い部分を印象的に描きたくて使いました。
その他こだわったポイントは、圧倒的にとうふ(犬)ですね。“怪訝そうな顔をするとうふ”とト書きに書いてあって、どうしたらそんな顔するんだ?となり、演出することが難しかったですね。1回やってみても全然うまくいかないし、どうしたらいいんだろうとかと回数を重ねながら徐々に撮影に慣れていきました。
主人公の前に座る動きがあるんですけど、餌を使って覚えさせたりもしました。最後の方のシーンでも呼ばれて主人公のとこに行くシーンは、僕がお芝居見ながら、「今だ!」と言って送り出したりしていましたね。もう圧倒的にとうふ(犬)にはこだわったので、注目してもらいたいです。
観てもらいたい人は…もういろんな人に観てもらいたいですね。作品としてはテーマがちょっと難しいというか、何か大きなことが起きる映画でもないですが、観た人が逆にどう思うんだろうなと楽しみでもあります。
僕は、エンタメは娯楽だと思っているので、1時間ほどの時間をかけて作品を観る時間を単純に楽しんでもらえたらいいなと思います。めちゃくちゃ笑うってわけでも、めちゃくちゃ泣くとかでもない気はするんですけど、いろんな気持ちになりながら作品自体を楽しんでもらえたらいいなっていうふうに思います。
最後に、映像制作者・映像業界・監督を目指す若い方々にメッセージをお願いいたします!
監督を目指す人だったら、とにかく作ってもらいたいですね。
映画を作ることは準備も撮影も仕上げも大変なので、やらない理由はすぐ作れるんですよ。お金がない、人がいない、機材がないとか。
しかも、僕は映画とかって観た人の人生を変える可能性を持ってるものだと思うのですが、一般的に生活する上で別になくてもすごく困るものではない。だから、やる理由を見つける、作るっていうのがすごく難しい気はしています。
好きだからとかそんな理由しかないと思うんですけど、やる理由をどうにか見つけて、作りたいと思ったら1回作ってみてほしいなと僕はいつも思いますね。
今の時代スマホでも撮れますし、最初は友達や家族にも出てもらったっていいのかもしれないし、SNSとかでも募集かけたり、工夫すればいかようにも制作できる。ロケ地なんて、ロケなび!のようなサイトを使うのはもちろん、足を使って探し、時にはお店にも飛び込んでみたらOKしてくれたりもするかもしれない。やらない理由を見つけるより、とにかくやってみて作ってみて、今後に生かせばいいんじゃないかなと思います。
僕は大学生のときに映画専攻の大学に行って、18歳の秋に1本実習で撮りました。そのときに「手を抜かずに、その瞬間、この作品に対して今の自分ができることを全てやったから後悔はない。でも満足はしてない。」というふうに思いました。やっぱり結果に満足はしない方がいいと思うんですよね。きっと満足したら、次がない気はするので。満足しないで次の作品ときに、何かを活かしますというようなことで、もう12年間くらいずっと映画を撮り続けています。未だに満足はしてないですけど、1つも後悔はしてないです。
大変なことだけれど、それくらい単純でいいんじゃないかって。とりあえずやってみたらいいと思います。