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ホーム > 映像関係者の声 > 監督インタビュー > 8つのストーリーで紡がれるアンソロジー映画/介護施設や民家、ロケ地にもこだわり

8つのストーリーで紡がれるアンソロジー映画/介護施設や民家、ロケ地にもこだわり

2016.07.01
監督
伊藤秀裕さん
映画製作のきっかけは、加藤(雅也)さんのラジオに出られたことがきっかけなのですか?
映画製作のきっかけは、加藤(雅也)さんのラジオに出られたことがきっかけなのですか?

 それ以前、確か二年前ぐらいに、うちの女性社員が「今、片思いがトレンドだ」という話をしてきたんです。片思いというキーワードから、「普通の片思いじゃつまらない」「全員が片思いだったらどうだ」とどんどん言葉が独り歩きしていって映画になったという次第です。キーワードから映画が生まれたので、逆転していますね。最初の問題は「じゃあ全員片想いというのは、どうやって作るんだ?」ということで、そこから企画に肉づけをしていきました。

映画は8つのエピソードからなるアンソロジー(複数の作家による短編や読み切りの作品を収録したもの)ですが、この形はどうやって考えられたのですか?

 全員が片思い、ということは何通りもの「片思い」のパターンがあるということです。そこからアンソロジーを思いつきました。『エブリスタ』(小説・コミック投稿コミュニティ)の方と少しお付き合いがあったので、そこで投稿小説を募集させてもらったのです。エブリスタさんから何篇か候補をもらって、その中から絞って、7つのエピソードを作りました。その当時に加藤雅也君と出会って、FM横浜でラジオ番組を持っているという事だったので、彼が一つ一つの話をラジオで紹介していく展開にしたらどうだろう、ということになりました。そこから生まれたのか「ラジオパーソナリティ」のエピソードで、7つの話を繋ぐ形になっています。

具体的に企画はどのように進行していったのですか?

 まずラジオで、投稿された作品は、エブリスタで投稿小説として発表し、映画化するという触れ込みで、小説応募の告知をしていただきました。実際の応募はエブリスタからできるようにしていただき、ここで出来たエピソードで、映画の前に7本の朗読劇もやっています。その上で、映画の制作にとりかかっています。映画のオリジナルエピソードは2つで、あとは投稿小説がベースになっています。特殊な構造になってしまいましたが、あらかじめ考えてそうしたものではありません。小さいファクターが寄せ集まっていって、そうなった形ですね。

“片思い”にもいろんなかたちがあると思いますが、そのバランスも考えられましたか?

 キャラクターによって片思いも色々なので、その辺は考えています。誰でも片思いはできますが、その彩は七人七色じゃないですか。そういうバリエーションを作っていこう、ということを心がけていました。物語の導入もどういうところから入っていこう、とか。最初から変化球の片思いよりは、まずはストレートなものからいって、そこから徐々に変わった所へ、という風になっていきました。

8つの作品は、監督や脚本家さんもバラバラですね。

 うちの女性プロデュサーの糸井さんが、それぞれのエピソードについて、適した監督やキャスティングを考えて決めていきました。エピソードにも相性があるんですよね。選ばれてきた監督に、それぞれ自分で選んでいただきました。自分が撮りたいものを選んでもらったのです。やっぱり相性がいいのか、みんな頑張ってやってくれましたね。

キャスティングが豪華ですが、これは監督の意見や主張がいきているのでしょうか?

 キャスティングは配給に関係するので、こちらでやっています。本来は「あと1、2年でブレイクするよ」という理由では提案しづらいのですが、今回は敢えてそういう方を据えて、先方を説得していきました。大成功だったと思うのですが、結果論ですね(笑)。今ではこのキャストは、とてもスケジュールがとれなくてキャスティングできません。

伊藤さんが制作されたのは『イブの贈り物』と『ラジオパーソナリティ』ですよね。
まず『ラジオ~』から伺います。FM横浜が舞台ですが、やはり撮影は横浜でされたのでしょうか?

 FM横浜、という名称を出す以上、横浜という地名にはこだわりたいと思いました。実際は、山梨県という名の横浜でも撮影したのですが(笑)。でも「横浜縛り」は消さないよう、心がけました。港は横浜で撮影しています。

『イブの贈り物』はどこで撮影されたのですか?

 神奈川県川崎市にある実際に運営している介護施設、SOL星が丘をお借りして撮影しました。施設の方に脚本を読んでいただいたところ「凄くおもしろい」と言って協力していただけました。実際に運営中なので患者さんたちの声もところどころ入っているのがリアルですし、また他の作品で出てくるクラブも都内で実際に運営している場所です。セットよりも、実際の店舗や施設を使って撮影させていただいたシーンが多いですね。

 あと地域感といえば『サムシングブルー』でしょうか。原作も映画でも湘南を舞台にしています。海岸沿いにもともとあるお店を借りての撮影でした。最初からそういうロケーションがあるとわかっていてやっているわけではないのに、探すとその場所が出てくるのですよね。そういうことってよくあるのかな、と最近思い始めています。

『あさはんのゆげ』も古民家や田園風景が印象的でした。

 こちらは茨城県でロケしました。脚本を書いている時にイメージしていたのが、僕の同級生が持っている田舎の農家を改造した別荘で、そこを実際に借りて撮影しました。普通の農家とは違った作りで面白い画になったと思います。

他の監督さんもあわせて、撮影で苦労された点などはありましたか?

 僕も含めて特に苦労した声はあがらなかったですね。もっとも、各監督に予算を渡して裁量権をすべて渡したので、みんなやりたいことを出し合って、大変なことも乗り越えるべき壁だと思ってくれたのではないかと思います。僕が全員をディレクションしたのは尺の問題だけですね。編集の関係でずいぶん切ったり直したりをお願いしました。エピソードの中では短編で完結させたディレクターズカット版のものもあり、それらは映画祭などに出したりもしています。

 

――最後に、映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。


 色々な片思いがある映画なので、一人でもご家族やご友人とご一緒でも楽しめる映画になっていると思います。片思いって、失恋や恋愛と違って劣化しないのですよ。記憶の中で純粋培養されたものが凍結されて残っている。僕ですら共感を覚えたぐらいですから、ぜひ老若男女色々な方にご覧いただきたいと思います。

映画製作のきっかけは、加藤(雅也)さんのラジオに出られたことがきっかけなのですか?
映画製作のきっかけは、加藤(雅也)さんのラジオに出られたことがきっかけなのですか?

 それ以前、確か二年前ぐらいに、うちの女性社員が「今、片思いがトレンドだ」という話をしてきたんです。片思いというキーワードから、「普通の片思いじゃつまらない」「全員が片思いだったらどうだ」とどんどん言葉が独り歩きしていって映画になったという次第です。キーワードから映画が生まれたので、逆転していますね。最初の問題は「じゃあ全員片想いというのは、どうやって作るんだ?」ということで、そこから企画に肉づけをしていきました。

映画は8つのエピソードからなるアンソロジー(複数の作家による短編や読み切りの作品を収録したもの)ですが、この形はどうやって考えられたのですか?

 全員が片思い、ということは何通りもの「片思い」のパターンがあるということです。そこからアンソロジーを思いつきました。『エブリスタ』(小説・コミック投稿コミュニティ)の方と少しお付き合いがあったので、そこで投稿小説を募集させてもらったのです。エブリスタさんから何篇か候補をもらって、その中から絞って、7つのエピソードを作りました。その当時に加藤雅也君と出会って、FM横浜でラジオ番組を持っているという事だったので、彼が一つ一つの話をラジオで紹介していく展開にしたらどうだろう、ということになりました。そこから生まれたのか「ラジオパーソナリティ」のエピソードで、7つの話を繋ぐ形になっています。

具体的に企画はどのように進行していったのですか?

 まずラジオで、投稿された作品は、エブリスタで投稿小説として発表し、映画化するという触れ込みで、小説応募の告知をしていただきました。実際の応募はエブリスタからできるようにしていただき、ここで出来たエピソードで、映画の前に7本の朗読劇もやっています。その上で、映画の制作にとりかかっています。映画のオリジナルエピソードは2つで、あとは投稿小説がベースになっています。特殊な構造になってしまいましたが、あらかじめ考えてそうしたものではありません。小さいファクターが寄せ集まっていって、そうなった形ですね。

“片思い”にもいろんなかたちがあると思いますが、そのバランスも考えられましたか?

 キャラクターによって片思いも色々なので、その辺は考えています。誰でも片思いはできますが、その彩は七人七色じゃないですか。そういうバリエーションを作っていこう、ということを心がけていました。物語の導入もどういうところから入っていこう、とか。最初から変化球の片思いよりは、まずはストレートなものからいって、そこから徐々に変わった所へ、という風になっていきました。

8つの作品は、監督や脚本家さんもバラバラですね。

 うちの女性プロデュサーの糸井さんが、それぞれのエピソードについて、適した監督やキャスティングを考えて決めていきました。エピソードにも相性があるんですよね。選ばれてきた監督に、それぞれ自分で選んでいただきました。自分が撮りたいものを選んでもらったのです。やっぱり相性がいいのか、みんな頑張ってやってくれましたね。

キャスティングが豪華ですが、これは監督の意見や主張がいきているのでしょうか?

 キャスティングは配給に関係するので、こちらでやっています。本来は「あと1、2年でブレイクするよ」という理由では提案しづらいのですが、今回は敢えてそういう方を据えて、先方を説得していきました。大成功だったと思うのですが、結果論ですね(笑)。今ではこのキャストは、とてもスケジュールがとれなくてキャスティングできません。

伊藤さんが制作されたのは『イブの贈り物』と『ラジオパーソナリティ』ですよね。
まず『ラジオ~』から伺います。FM横浜が舞台ですが、やはり撮影は横浜でされたのでしょうか?

 FM横浜、という名称を出す以上、横浜という地名にはこだわりたいと思いました。実際は、山梨県という名の横浜でも撮影したのですが(笑)。でも「横浜縛り」は消さないよう、心がけました。港は横浜で撮影しています。

『イブの贈り物』はどこで撮影されたのですか?

 神奈川県川崎市にある実際に運営している介護施設、SOL星が丘をお借りして撮影しました。施設の方に脚本を読んでいただいたところ「凄くおもしろい」と言って協力していただけました。実際に運営中なので患者さんたちの声もところどころ入っているのがリアルですし、また他の作品で出てくるクラブも都内で実際に運営している場所です。セットよりも、実際の店舗や施設を使って撮影させていただいたシーンが多いですね。

 あと地域感といえば『サムシングブルー』でしょうか。原作も映画でも湘南を舞台にしています。海岸沿いにもともとあるお店を借りての撮影でした。最初からそういうロケーションがあるとわかっていてやっているわけではないのに、探すとその場所が出てくるのですよね。そういうことってよくあるのかな、と最近思い始めています。

『あさはんのゆげ』も古民家や田園風景が印象的でした。

 こちらは茨城県でロケしました。脚本を書いている時にイメージしていたのが、僕の同級生が持っている田舎の農家を改造した別荘で、そこを実際に借りて撮影しました。普通の農家とは違った作りで面白い画になったと思います。

他の監督さんもあわせて、撮影で苦労された点などはありましたか?

 僕も含めて特に苦労した声はあがらなかったですね。もっとも、各監督に予算を渡して裁量権をすべて渡したので、みんなやりたいことを出し合って、大変なことも乗り越えるべき壁だと思ってくれたのではないかと思います。僕が全員をディレクションしたのは尺の問題だけですね。編集の関係でずいぶん切ったり直したりをお願いしました。エピソードの中では短編で完結させたディレクターズカット版のものもあり、それらは映画祭などに出したりもしています。

 

――最後に、映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。


 色々な片思いがある映画なので、一人でもご家族やご友人とご一緒でも楽しめる映画になっていると思います。片思いって、失恋や恋愛と違って劣化しないのですよ。記憶の中で純粋培養されたものが凍結されて残っている。僕ですら共感を覚えたぐらいですから、ぜひ老若男女色々な方にご覧いただきたいと思います。

作品情報
映画『全員、片想い』

(STORY)

ラジオパーソナリティーの三崎透(加藤雅也)は自身の番組で、リスナーからの片想いにまつわるエピソードを

毎週紹介する特集をスタートさせる。学生時代の幼馴染への片想い「MY NICKNAME is BUTATCHI」、女性上司への片想い「僕のサボテン」、男装女子の片想い「片想いスパイラル」、年上の美容師への片想い「サムシングブルー」、純朴な男子への片想い「嘘つきの恋」、従兄に片想い「あさはんのゆげ」、老女の最後の片想い「イブの贈り物」。そんな7つの片想いの体験談を紹介していく中、三崎自身も同僚女性に微かな恋心を抱き始める。

 

監督・製作・脚本:伊藤秀裕 ほか

出演:加藤雅也、芳賀優里亜、伊藤沙莉、中川大志、森絵梨佳、桜田通、広瀬アリス、斎藤工、知英、佐津川愛美、TAKUYA、新川優愛、志尊淳、清水富美加、千葉雄大、橋本マナミ、横浜流星 ほか

公開中

(C)2016「全員、片想い」製作委員会

  

伊藤秀裕(いとう・ひでひろ)監督

 1948年生まれ、秋田県出身。映画制作会社エクセレントフィルムズ代表。監督・脚本・プロデューサーとして様々な映画に関わる。主な監督作品に「ピカレスク 人間失格」(02)、「想文~おもひぶみ~」(05)、「チャイ・コイ」(13)など。本作の朗読劇「全員、片想い」(15)でも演出・脚本を手掛けた。

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