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ホーム > 映像関係者の声 > 監督インタビュー > 自力で勝ち抜く爽快ストーリー/テレビ視聴率の捉え方

自力で勝ち抜く爽快ストーリー/テレビ視聴率の捉え方

2015.04.16
監督
犬童一心さん
今回『夢を与える』をドラマ化した経緯と、映像化したいと思った一番の理由を教えてください。
今回『夢を与える』をドラマ化した経緯と、映像化したいと思った一番の理由を教えてください。

小説を読んだ6年前位からずっと映画にしたいと思い脚本をつくっていたんですが、WOWOWプロデューサーの高嶋さんと出会って、やっと実現しました。

(同作は)一人の女の子が、マスコミや母親などに生け贄にされていくのが、まず物語の題材として面白いと思いました。現代では何かのタイミングで誰かを生け贄にしてしまうことがあると思います。例えば事件報道で、それが間違いだったということも平気であるし、嘘を本当のことであるかのように書かれて、それが消えないまま終わっていくことはしょっちゅうある。女の子がそういう状況に追い込まれた時にどうやって抜け出すのか、その抜け出し方をきちんと表現すると、自分を生け贄にしようとする者たちと一人で戦う者という対決の構造になって盛り上がるし、ドラマとして面白いんじゃないかなと。

本作で、ここで撮れてよかったという場所はありますか。

テレビのスタジオです(笑)。僕はバラエティ番組を撮ったことがないから、テレビスタジオに大きいカメラが4台ぐらいあって、複数のクルーがスイッチングして一遍に撮るっていうのは初めてで、楽しそうだなと思ってました。

あと撮れてよかったのは三浦の商店街です。昔ながらのタイムスリップした感じがすごく良かったですね。昭浜という主人公が住んでいる架空の場所として使ったので、一番多く登場します。撮影では、すごい雨が降ったり強風で大変でした。もう埋まっちゃうんじゃないかと思う程の砂嵐でした(苦笑)。

本作で一番監督が伝えたかったことは、なんでしょうか。

(本作は)自分が一番信頼していた全員が離れていった時に、生贄になりかかった女の子がどんなやり方でその危機を抜け出し勝ち抜いたのかという話です。   ドラマを見てもらうとわかるんですけど、彼女が話すだけなんですよね。一体彼女が何を話すことでそれを打ちとめたのか。(幼少期からスターになるまでの)一つの年代記になっているので、彼女が生きてきた成長の中で、一体何を大事にしてきたことで、最後の言葉を生み出し、勝ち抜くのかを観て欲しい。最終的には、「自力で勝ち抜く」爽快ストーリーになっていると思います。

監督自身が、他にもこだわって描かれたことはありますか。

自分はテレビが重要で面白いものだと思っているので、それがうまく機能しなくなっているということですかね。これを物語の中に入れていくと面白いのではと思いました。テレビは小さいころから身近にある一種の教育機関だし、娯楽、あとは情報機関をすべて兼ね備えてるじゃないですか。僕が子供のころはテレビが始まってからまだ間もないというのもありますけど、創世期の面白さみたいなものがまだ残っていて、新しいものがテレビの中からどんどん生み出されてくる。その意味でもすごく面白かったし、作っている人たちが、面白さと視聴率という評価とのバランスをうまく取っていた。

ある時期から(視聴率など)数字が評価軸として強くなっていくけど、うまくバランスが取れなくなりつまらなくなっていくっていうか……。僕たちの頃ってまず視聴率なんか知らなかったし、一般の人も自分の好きな番組が視聴率どれぐらいかなんて気にしてませんでしたよ。それっていつごろからなんですかね。

今と昔では、視聴率への意識が違うんですね

今は視聴率が記事になりますよね。なぜかというと、視聴率を重要なことにしたいから。評価基準がはっきりして一般の人も視聴率を気にしていることにすることで、視聴率を中心にして物事をはかる、仕事が進めやすくなるという風に考えた人たちがいると思うんです。視聴率が業界の中だけのものとした場合に「一般の人たちは気にしてませんよ」っていわれるのが怖いんですよ。結局業界の中の成績だけでしか物事を判断できない人間みたいになるから。一般の人たちも視聴率を気にしているのだと、わざとどこかのタイミングで扇動したと僕は思いました。僕が子供の頃は「あれ面白いよねー」とか言いながら観て、視聴率30~40%っていう番組がいっぱいありました。それが爆発的人気だって取り上げられていたけど、(視聴者は)コント55号の番組が30%を超えてるから大人気だって思ってたわけじゃなくて、その番組が面白いと思ってただけですよ。

本作に登場するAD・松田さんも視聴率に固執していますね。

松田はキャラクター的には本当にテレビが好きな人間です。本当にテレビが好きな人間は、どれだけの人が見てくれているか、参加しているのかということがものすごく重要。だから重要さの測り方が違うんです。それを松田で表現したかった。彼にとっての視聴率と、他で言われてる視聴率の重要さは違うんです、実は。コンサートだったら目の前にいる人たちが一緒にグルーヴをつくるけど、松田はテレビの生放送でそれをやりたいという欲望に駆られてしまう。そのときに生まれるグルーヴを自分は経験したいと思うんです。

でもせめて、一般の人たちは視聴率を気にしなくていいんじゃないかなとずっと思っています。

今回『夢を与える』をドラマ化した経緯と、映像化したいと思った一番の理由を教えてください。
今回『夢を与える』をドラマ化した経緯と、映像化したいと思った一番の理由を教えてください。

小説を読んだ6年前位からずっと映画にしたいと思い脚本をつくっていたんですが、WOWOWプロデューサーの高嶋さんと出会って、やっと実現しました。

(同作は)一人の女の子が、マスコミや母親などに生け贄にされていくのが、まず物語の題材として面白いと思いました。現代では何かのタイミングで誰かを生け贄にしてしまうことがあると思います。例えば事件報道で、それが間違いだったということも平気であるし、嘘を本当のことであるかのように書かれて、それが消えないまま終わっていくことはしょっちゅうある。女の子がそういう状況に追い込まれた時にどうやって抜け出すのか、その抜け出し方をきちんと表現すると、自分を生け贄にしようとする者たちと一人で戦う者という対決の構造になって盛り上がるし、ドラマとして面白いんじゃないかなと。

本作で、ここで撮れてよかったという場所はありますか。

テレビのスタジオです(笑)。僕はバラエティ番組を撮ったことがないから、テレビスタジオに大きいカメラが4台ぐらいあって、複数のクルーがスイッチングして一遍に撮るっていうのは初めてで、楽しそうだなと思ってました。

あと撮れてよかったのは三浦の商店街です。昔ながらのタイムスリップした感じがすごく良かったですね。昭浜という主人公が住んでいる架空の場所として使ったので、一番多く登場します。撮影では、すごい雨が降ったり強風で大変でした。もう埋まっちゃうんじゃないかと思う程の砂嵐でした(苦笑)。

本作で一番監督が伝えたかったことは、なんでしょうか。

(本作は)自分が一番信頼していた全員が離れていった時に、生贄になりかかった女の子がどんなやり方でその危機を抜け出し勝ち抜いたのかという話です。   ドラマを見てもらうとわかるんですけど、彼女が話すだけなんですよね。一体彼女が何を話すことでそれを打ちとめたのか。(幼少期からスターになるまでの)一つの年代記になっているので、彼女が生きてきた成長の中で、一体何を大事にしてきたことで、最後の言葉を生み出し、勝ち抜くのかを観て欲しい。最終的には、「自力で勝ち抜く」爽快ストーリーになっていると思います。

監督自身が、他にもこだわって描かれたことはありますか。

自分はテレビが重要で面白いものだと思っているので、それがうまく機能しなくなっているということですかね。これを物語の中に入れていくと面白いのではと思いました。テレビは小さいころから身近にある一種の教育機関だし、娯楽、あとは情報機関をすべて兼ね備えてるじゃないですか。僕が子供のころはテレビが始まってからまだ間もないというのもありますけど、創世期の面白さみたいなものがまだ残っていて、新しいものがテレビの中からどんどん生み出されてくる。その意味でもすごく面白かったし、作っている人たちが、面白さと視聴率という評価とのバランスをうまく取っていた。

ある時期から(視聴率など)数字が評価軸として強くなっていくけど、うまくバランスが取れなくなりつまらなくなっていくっていうか……。僕たちの頃ってまず視聴率なんか知らなかったし、一般の人も自分の好きな番組が視聴率どれぐらいかなんて気にしてませんでしたよ。それっていつごろからなんですかね。

今と昔では、視聴率への意識が違うんですね

今は視聴率が記事になりますよね。なぜかというと、視聴率を重要なことにしたいから。評価基準がはっきりして一般の人も視聴率を気にしていることにすることで、視聴率を中心にして物事をはかる、仕事が進めやすくなるという風に考えた人たちがいると思うんです。視聴率が業界の中だけのものとした場合に「一般の人たちは気にしてませんよ」っていわれるのが怖いんですよ。結局業界の中の成績だけでしか物事を判断できない人間みたいになるから。一般の人たちも視聴率を気にしているのだと、わざとどこかのタイミングで扇動したと僕は思いました。僕が子供の頃は「あれ面白いよねー」とか言いながら観て、視聴率30~40%っていう番組がいっぱいありました。それが爆発的人気だって取り上げられていたけど、(視聴者は)コント55号の番組が30%を超えてるから大人気だって思ってたわけじゃなくて、その番組が面白いと思ってただけですよ。

本作に登場するAD・松田さんも視聴率に固執していますね。

松田はキャラクター的には本当にテレビが好きな人間です。本当にテレビが好きな人間は、どれだけの人が見てくれているか、参加しているのかということがものすごく重要。だから重要さの測り方が違うんです。それを松田で表現したかった。彼にとっての視聴率と、他で言われてる視聴率の重要さは違うんです、実は。コンサートだったら目の前にいる人たちが一緒にグルーヴをつくるけど、松田はテレビの生放送でそれをやりたいという欲望に駆られてしまう。そのときに生まれるグルーヴを自分は経験したいと思うんです。

でもせめて、一般の人たちは視聴率を気にしなくていいんじゃないかなとずっと思っています。

作品情報
WOWOW 土曜オリジナルドラマ「連続ドラマW夢を与える」

5 月16日(土)より毎週土曜22:00 ~ (全4話)
<第一話無料放送>

(STORY)

13年前、とある郊外の自然に囲まれた街へ引っ越してきた阿部家。フランス人の父親・トーマ(ド・ランクザン望)と、日本人の母親・幹子(菊地凛子)、そして2人の娘である美しい少女・夕子(谷花音)。それは完全無欠な家族のよう。幹子は幼い夕子をあるCMのオーディションに参加させる。広告代理店のクリエイティブディレクター・村野(オダギリジョー)に見いだされた夕子は芸能界入りする。

数年後、大手芸能事務所に移籍した夕子(小松菜奈)は、母親の念願どおり、ついにブレイクする。雑誌の表紙、バラエティー番組、テレビドラマ・・・急速に人気が高まる中、夕子は世間に向けて作り出されたイメージと自分自身とのギャップに強い違和感を覚えていた。そんな最中、夕子は世間に媚びず生きているダンサー・正晃(真剣佑)と出会い、恋愛にのめり込んでいく。だがそれは、すべての歯車が狂いだす悪夢のはじまりだった。

<キャストスタッフ>

監督 犬童一心
原作 綿矢りさ『夢を与える』(河出文庫)
脚本 髙橋泉
出演 小松菜奈、菊地凛子、夏帆、浅野和之、オダギリジョー ほか

 

犬童一心(いぬどう・いっしん)

大学在学中に脚本・監督を手がけた『気分を変えて?』がぴあフィルムフェスティバルに入選。大学卒業後はCMディレクターとなり、TV-CMの 企画・演出を手がけながらも、映画製作を継続。

『二人が喋ってる。』('95)で日本映画監督協会新人賞、『ジョゼと虎と魚たち』('03)で第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞、『メゾン・ド・ヒミコ』('05)で第56回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど、数々の映画賞を受賞する。

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