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様々な「はざま」を乗り越える、”こだわり”が詰まった純愛映画が誕生/映画『はざまに生きる、春』葛監督と菊地プロデューサーに『作品のこだわり』や『撮影の裏側』を聞く

2023.05.26
監督
監督 葛里華さん/プロデューサー 菊地陽介さん

映画コンテスト“感動シネマアワード”にて大賞を受賞し制作が決定した映画『はざまに生きる、春』。
”こだわり”が表現された本作がいよいよ2023年5月26日(金)から全国公開になります。
そこで、葛里華監督と菊地陽介プロデューサーに、本作でのこだわりやロケーションへの想いなどを語っていただきました。

本作はレプロエンタテインメント企画の『感動シネマアワード』での作品ですね。
菊地プロデューサー)2017年ぐらいから、レプロエンタテインメントでは自社で作品企画を立て制作をするという形で、コンテンツに関わることが増えるようになりました。
今までのマネージメントとは違う動きですが、今後10年を見据えた時に、会社として必要なことだと考えました。映画制作をする体制を整えられるようになるためにも、映画コンペティション企画「感動シネマアワード」を実施しました。
当社で映画を作る意味として、やはり俳優のための企画がベストだと思い、最初に主演を決め、その主演俳優に合った企画と脚本を集める形を取りました。
また、同世代や若い世代の映画監督から、オリジナルで商業映画を撮れる機会が少ないとも聞いていたので、本企画をきっかけにオリジナル脚本の映画を撮れる機会が生まれると良いと思っていました。
本作が生まれた経緯を教えてください。
葛監督)コロナ直前の2019年末くらいに菊地さんが、私が以前制作した自主映画『テラリウムロッカー』を見に来て下さったのが最初のきっかけです。その作品の感想を下さった時に菊地さんが、レプロでこういう企画を予定しているとお知らせを下さり、挑戦してみたいとこの話を考え始めていました。そこから直ぐ2019年11月~12月頃にコンペの募集が始まり、企画集計の2020年2月末に向けて、本格的に企画を考え、脚本も書くような感じでした。
以前から発達障害を抱える方の恋愛を映画にしたいと思いつつ、自分の力で作品にできるのかと二の足を踏んでいました。ですが、感動シネマアワードの中で、宮沢さんが主演して下さるのを知り、宮沢さんに演じていただきたいと、すごくイメージが湧いてきて作り始めました。
本作でこだわった点や工夫した点を教えてください。
葛監督)多々ありますが、特にこだわったのは「色」ですね。視覚的にもこだわりを表現したいと思い重視しました。
主人公「屋内透」の特性が、こだわりが強くて青色しか描かないという役でした。そのキャラクターを作るにあたり、実際に発達障害を抱える方に何人もお会いし、取材も沢山させて頂きました。お家にも伺い、その人のパーソナリティを知った上で「だからこの人はこういう家の配置をしているのか」と感じることが多々ありました。そこで、色を通じて「この人の生活の様子も含めてこだわりを表現できたらいいな」と思いました。なので、洋服や壁や小物など全て青にしています。
他にもこだわった点はありますか。
葛監督)ヒロイン「小向春」の服にもこだわりました。最初は普通の様々な服だったんですが、段々と青い色の服が増えていく描写になっています。気持ちの変化って、自分でも気づかない内に洋服などの選ぶものに出てるかもと思ったので、細かいところまでこだわりました。

あとは、「孤独」や「場所」とかにもこだわりましたね。水族館でのデートシーンがあるのですが、制作部から「デートだったら、動物園でもよくない?」といった話が出ました。ですが主人公は青色が好きだから、青の中に溶け込んでいく画にしたいと話したところ、制作部も納得して下さいました。水族館で撮影できてよかったです(笑)
ただ、水族館での撮影は時間がタイトでとても大変でしたね。
その他にも苦労したロケ地はありますか。
葛監督)冒頭の団地の壁に絵を描くシーンは制作部の方々がすごく探して、交渉して下さいました。あの壁の絵は実際に描いたんですよ。あとは、木の皮を取るシーンも何ヶ所も探しましたね。フィルムコミッションの方と制作の方がすごく探してくれて最高のロケーションでした。

本作でロケ場所を探す時にすごく嬉しかったことが、制作部の方々がシーンの状況だけでなく、このシーンで何が大切なのかみたいなところまで考えて場所を選んで下さったんですよ。
前述の団地の壁に絵を描くシーンも「多分“光”が大事なシーンだから、光がしっかり当たっても不自然ではない場所の方がいいよね」と考えてくださいました。
他にも、ラストの桜のシーンも「周りは平たくて桜だけが引き立っているような場所がいいよね」といった感じで。監督側の気持ちまですごく考えて、ロケ場所を提案頂けたことは本当に嬉しかったです。
ロケハンの期間はどのくらいとられたのですか。
葛監督)場所を回る期間は3週間程でしたね。全部みっちりではないですけれども。私も出版社で働きながらなので基本的に土日が動きやすく、制作部の方々もすごく配慮して下さいました。平日は午前中だけで、土日は朝から晩まで毎週一緒に回るような感じでしたね。ロケ場所は全部行きました。

ロケ場所を選定する中で、制作部の方が、私が何かピンと来てないことをすごく察知してくれるんですよ。
ここが違ったのかなと、多分ご自身で色々汲み取ってくださって、その上で修正した場所をいつも提案してしてくれたんですよね。それがすごく最高でした。最高という言葉しかでないです。
撮影期間での裏話はありますか。
葛監督)スケジュールがすごく大変で3週間パツパツの撮影をしていました。その中で、宮沢氷魚さんがよく差し入れしてくれて、忙しい中での気配りがとても嬉しかったです。
あとは私自身こういった大きな現場が初めてで、これまではお弁当も自分たちで作るか注文していました。それが今回は、制作の方が初日には「祝!クランクイン」や、最終日にも「クランクアップおめでとう!」とやって下さり、「本物だ!」とすごい喜びましたね。
あとは、焼肉屋さんで撮影した時に、私は次の予定があり帰ってしまったんですけど、撮影後に、撮影に使用したお肉をみんなで美味しく食べて、喜んでくれたみたいで良かったなと思いました。
菊地プロデューサー)後日の現場で、みんなその話をしてましたよ(笑)
コロナ禍の撮影はどうでしたか。
菊地プロデューサー)そうですね。少し時間も経って落ち着いたような、何となくコロナ禍での撮影方法が分かってきた時期でした。気をつけるべきことややるべき手順は決まっていて、毎日体温を測り、キャストはフェイスシールドを着用、スタッフは全員マスクつけて、などは気を付けていました。
ただ、今までは比較的簡単に申請が下りていた場所も、コロナ禍により中々許可が下りないこともありました。その点でも制作部の方には大変感謝しております。
最後に、映像制作者、映像業界を目指す若い方世代の方々にメッセージをいただけますか。
菊地プロデューサー)今年34歳になるのですが、10代・20代の次世代がどういう環境で仕事をできるのか、映画を撮れるのかを考えていかなければと思っています。
撮影に限らずとも、映画にかかわったときに「面白い」と思われる、継続して働くことができるような環境をどうやって準備できるかが、業界全体の課題であり急速に変わった、これからも変わっていく部分だと思います。昔と比べると労働環境も改善されている中で、若い世代がこの業界に入ってきて、この仕事・この作品に関わることをが楽しいと感じて、さらに次に繋がっていくための環境をどうやって作り上げるかを考えなければいけないと思っています。
我々プロデュース部は特にそれを考えなきゃいけない人たちで、今はその考えが強いですね。
そのためにもいつまでも謙遜して若者側にいるのはよくないなと思いました。今後に繋いでいく環境や機会をちゃんと考えなきゃいけない年齢や立場になっているなと実感もあるので。

葛監督)この撮影の時にすごく思ったのが、私「いい人」って思われたいんですよ。人に対して嫌な感情を与えたくないという気持ちがすごく大きくて。
私は自分のことを“こだわり”が強い人間だと思っているのですが、自分の中で、わがままを言うこととこだわりを言うことの境目が今まであまりわかっていなくて・・・

本作の撮影でもあらゆるものを青くするなど、すごくこだわりがあるんですよ。自分の中では具体的なイメージで考える節があるので、演技に関しても多分細かいし、撮影も何度もやり直しをお願いしたり・・・。他の監督がどうかわからないので、比較は出来ないですけど。
その時に、心の中のもう1人の自分が「こんなにこだわって大丈夫?」「みんな嫌な気持ちしない?」みたいなことを言い出すんですよ。そのときに、こだわることが悪いのではなくて、“なんでこだわりたいか”を説明することが大切だということを、本作の撮影で感じました。だから、こだわりがあることをちゃんと大切にしつつ、それをどうやって伝えたら、みんなにそれを一緒に表現してもらえるかどうかを考えるようになると、とても良いと思いますし、私もそれを精進したいと思います。

――ありがとうございました!!
作品情報
映画『はざまに生きる、春』
出版社で雑誌編集者として働く小向春(小西桜子)は、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた。ある日、春は取材で、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透(宮沢氷魚)と出会う。
思ったことをストレートに口にし、感情を隠すことなく嘘がつけない屋内に、戸惑いながらも惹かれていく春。
屋内が持つその純粋さは「発達障害」の特性でもあった。ただ、人の顔色をみて、ずっと空気ばかり読んできた春にとって、そんな屋内の姿がとても新鮮で魅力的に映るのであった。
周囲が心配する中、恋人に怪しまれながらも、屋内にどんどん気持ちが傾いていく春だったが、「誰かの気持ちを汲み取る」ということができない屋内にふりまわされ、思い悩む。
さまざまな “はざま”で揺れる春は、初めて自分の心に正直に決断するー。

【作品情報】
映画『はざまに生きる、春』
出演:宮沢氷魚 小西桜子
細田善彦 平井亜門 葉丸あすか 芦那すみれ
田中穂先 鈴木浩文 タカハシシンノスケ
椎名香織 黒川大聖 斉藤千穂 小倉百代
渡辺潤 ボブ鈴木/戸田昌宏
監督・脚本:葛里華
エグゼクティブプロデューサー:本間憲 倉田奏補 古賀俊輔
企画・プロデュース:菊地陽介 かなりかピクチャー
プロデューサー:吉澤貴洋 新野安行 松田佳奈
©2022「はざまに生きる、春」製作委員会

【Interview】
監督:葛里華さん
プロデューサー:菊地陽介さん
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