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半同居生活を演じる3人に「少しずつ家族になっているのが見ていて分かった」/映画『夜、鳥たちが啼く』城定秀夫監督インタビュー

2022.12.12
映画監督
城定秀夫さん

 近年『アルプススタンドのはしの方』や『愛なのに』『女子高生に殺されたい』など、様々な色味の話題作をハイペースに生みだし続けている鬼才・城定秀夫監督。そんな監督がまた新たな題材に挑戦した映画『夜、鳥たちが啼く』について、人気作家の小説を映像にするプレッシャーや楽しさを伺った。

本作の話が挙がったのはいつ頃でしょうか
 約3年前、当時まだ『アルプススタンドのはしの方(2020年)』を撮影する直前でした。コロナ禍に突入したことを考えると、この期間で公開できたのはかなり順調な方だったと思います。話に挙がるだけで気づけば頓挫して終わっているなどということも往々にしてあるので、公開を迎えられてよかったです。
佐藤泰志さんの作品を映画化するということにはどうお感じになりましたか
 これまでそうそうたる監督が映画化をされている佐藤泰志さんの作品というプレッシャーはありました。皆さんそれぞれ作家性の強い方々で、いわゆる「映画っぽい」作品を作らなければならないと感じたので。
 しかし、その一方でプレッシャーはいつしか喜びに変わっていました。オリジナル脚本と違って、原作ものというのは人それぞれに色んな解釈があります。つまりストーリーの広げ方にもそれだけ可能性があるので、料理のしがいがあると思っています。ましてや小説は漫画とは異なり視覚の情報がないので、ある程度脚本の骨子を作ってしまえば原作に戻ることなく進められます。もちろん原作担当者とのやりとりは常に行っていますが、原作の短編集の中の他作品のテイストを入れるなど、僕なりのアレンジも加えています。
主演のお二人は5度目の共演ということですが、どのように決定されましたか
 このお二人ありきでということではなかったのですが、それぞれの作品に賭ける思いを知ってお願いしようと決意しました。
山田さんは様々な作品で見ていますが、気持ちで芝居をしていますし本当に色んな役ができる俳優です。これまであまり演じたことのない役に挑戦したいとのことで台本を読んでいただいたのですが「何も言うことがありません」と快諾していただきました。「このような自分の一面を見て欲しい」と何もてらわずに言ってくださったのでお願いしました。
一方の松本さんからは、段取り(テストの前にシーン全体を通して演じ、動きを固める)を入念にやって欲しいと希望されました。そこで雰囲気を作りたいと。テクニックよりも気持ちの部分で演じたい方で、この作品に対して「女優松本まりかとして賭けている」というほどの熱意で臨んでくださっていましたので、我々も襟を正し丁寧に準備を進めました。
お二人の演技に求めたものはありましたか
 山田さんはやってみないとわからないということで、事前の打ち合わせはほとんどなかったです。こちらから細かいことを言えばもちろん役者さんなので完璧にやってくれます。ただ、台本を読んでその役に入っている人というのは僕よりもその役の人物を理解しているはずなので、まずは彼らの表現を見せてもらいます。その上でどう捉えるのかなど話し合い、こうしよう、ああしようと決めていきました。松本さんとは「この女性がどういう人間なのか」という話をしました。都合のいい女に見える、だからこそ悩んでいるのではないか、というようなことを打ち合わせた上で臨みました。
 お二人の共演が多いと聞いていましたが、実際の撮影現場ではいい意味で馴れ合いのようなものがなかったです。子役の森優理斗くんも含めて、少しずつ家族のような雰囲気になっているというのは感じていました。それは本人たちも意識していたようで、先にクランクアップを迎えた森君はすごく寂しそうにしていました。
今回本編のほとんどを埼玉県飯能市で撮影されていますね
 制作部さんが見つけてくれた地域で、まだ飯能市ロケーションサービスは立ち上がったばかりだと聞いています。ですが、非常に手厚い対応をしてくださいました。なんでもロケ受け入れを始めたきっかけが「テレビで冷たいロケ弁を食べているロケ現場を見て」だったそうで、温かいお弁当を用意してくださったり、コーディネーターの方のつながりから様々な方が協力してくださったりと、これまでに見たことのない対応のよさでした。町を盛り上げようということを主としている映画でないにも関わらず、これだけ深く関わってくださるのはありがたいです。
この作品をどう見てほしいですか
 解釈にも幅があると思うので、それぞれの好きなように見てもらえればと思います。正解はありませんし、これが言いたいということもない。何かを生み出す苦しみや痛みもあるけれど、こんな人たちも頑張って生きている。嫌いな人を最後は許してあげられたり、気持ちが軽くなって笑えるようになったり、身近な話ではありますが、誰しも少なからずこうした人間性を持ち合わせていると思います。人間の成長物語ということではなく「ふわっ」とした目線でご覧いただければ。
最後に、映像業界を目指す若者へメッセージをいただけますでしょうか
 僕も気持ちは分かりますが、若いうちはお金と人脈に苦しみます。この作品も決してお金がかかっているわけではありません。しかし、だからこそ出る雰囲気もありますし、なんといっても自主制作は自分の好きなように撮ることができます。映像制作に大切なのはお金ではないということはお伝えしたいです。
 今、業界の環境も良くなってきています。もちろん、必ず幸せになれるという保証はありませんし、うまくいかないことも多いです。しかし、まずは思い切って飛び込んでみてもいいかもしれませんね。
作品情報
映画『夜、鳥たちが啼く』
若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子(松本まりか)が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。慎一が恋人と暮らしていた一軒家を、離婚して行き場を失った2人に提供し、自身は離れのプレハブで寝起きするという、いびつな「半同居」生活。自分自身への苛立ちから身勝手に他者を傷つけてきた慎一は、そんな自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。
書いては止まり、原稿を破り捨て、また書き始める。それはまるで自傷行為のようでもあった。
一方の裕子はアキラが眠りにつくと、行きずりの出会いを求めて夜の街へと出かけてゆく。親として人として強くあらねばと言う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼女もまた苦しんでいた。そして、父親に去られ深く傷ついたアキラは唯一母親以外の身近な存在となった慎一を慕い始める。慎一と裕子はお互い深入りしないよう距離を保ちながら、3人で過ごす表面的には穏やかな日々を重ねてゆく。だが2人とも、未だ前に進む一歩を踏み出せずにいた。そして、ある夜・・・。

【作品情報】
『夜、鳥たちが啼く』
出演:⼭⽥裕貴、松本まりか
森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ/藤田朋子/宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹
監督:城定秀夫
脚本:⾼⽥亮
原作:佐藤泰志「夜、⿃たちが啼く」(所収「⼤きなハードルと⼩さなハードル」河出⽂庫刊)
エグゼクティブプロデューサー:藤本款
プロデューサー:秋山智則 姫田伸也

制作協力:Gemini Films
製作・配給 クロックワークス

© 2022 クロックワークス 製作・配給:クロックワークス
  映画『夜、鳥たちが啼く』オフィシャルサイト (yorutori-movie.com)
2022年/日本/115分/ビスタ/DCP5.1ch 映倫:R15

12月9日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

【Interview】
監督:城定秀夫さん
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