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地元の人も普通にそこにありすぎて注目するのを忘れちゃうくらいの「場所」が魅力的/映画『いとみち』の監督・横浜聡子さんに「ロケーションのこだわり」を聞く

2022.08.05
映画監督
横浜聡子さん

第16回大阪アジアン映画祭にて観客賞とグランプリのダブル受賞、第13回TAMA映画賞特別賞を受賞作品。全編青森ロケで挑んだ本作の「撮影の裏側」「経緯」「ロケーション」を横浜監督に深掘っていただきました。

本作が生まれた経緯を教えてください
 約10年前の作品で、青森のリンゴ農家を舞台にした阿部サダヲさん主演映画『奇跡のリンゴ』という映画がありまして、本作のプロデューサーである松村さんが、その製作担当で青森県弘前市にずっと滞在していました。私も丁度同時期に『りんごのうかの少女』という短編映画を弘前市で撮っていました。それから松村プロデューサーが独立して、制作会社を設立しましたが、『奇跡のリンゴ』がきっかけで青森をすごく好きになったそうで、ご自身の初プロデュース作品は青森で作りたいという思いがあったそうです。その時に青森を舞台にした越谷オサム先生の『いとみち』という原作を、青森生まれの監督に撮って欲しいということで最初にお話し頂いたことがきっかけでした。私も青森で何本も作品を作っていたこともあると思いますが、そのような出会いがあって始まりました。
主に青森県で撮影されていましたが、ロケーションに対してのこだわりはありますか
 原作と同じ、弘前市と板柳町が主な舞台でした。私自身は青森市出身ですので弘前市と板柳町のことを正直よく知りませんでした。ですので、とりあえずまちに行ってみて、どういう人がこの場所で生活しているかを見てきました。比較的早い時期にプロデューサーとだったり、一人でも足を運びました。もちろん原作がベースにありますが、原作にないシーンも、そこに行かないと絶対わからないようなディテールからアイディアが生まれ、私の中で物語が膨らむことがありました。映像で切り取られにくい場所の方が、私は興味沸いちゃいますね。普段日常生活を営んでいたら気にも留めないような場所だったり、ポイントだったりを映画に取り入れていきたいと思っていました。
弘前市、板柳町内のロケーションはどのように見つけたのでしょうか
 ネットで検索して見ることのできる場所ではなくて、地元の人も普通にそこにありすぎて注目するのを忘れちゃうくらいのものの方が魅力的だと思っています。そのような場所を探すために一人で現地に行って、時間に追われず、なんのプレッシャーも感じずにぶらぶらと自転車で回ったりしました。板柳町では、役所の方に自転車を借りましたが、その自転車がスピードがでなくてすごく疲れました(笑い)。板柳町って1日もあれば回れる広さなのですが、歩くと大変、車だと素通りしちゃうので、自転車が丁度いいんです。誰もいない田んぼの中のあぜ道を一人で走ったり、道端で突然墓場みたいなものに遭遇したりして、気になったりして。そんな風に一人で一回見て面白いところ見つけて、制作部スタッフの合流後、こういう場所があったけどどう?と伝えていきました。ただ、メインのロケ地となった主人公の家などは地元の方の方が断然よく知っているので、そこは役場の方にお願いしました。
ロケ場所の担当者に求めることはありますか
 フィルムコミッションの方も役場の方も、皆さんシナリオを読んでくれます。どういう話か理解した上で場所を探してくれていると思うのですが、遠慮せずに意見を伝えてくれると嬉しいです。例えば、この登場人物だったらこの道を通るんじゃないかとか。映画関係者じゃない皆さんからも積極的にアイディアを出してくれると嬉しいなと思います。こういう家あります、道あります、場所ありますということに加えて、この物語で何が必要とされているかを一緒に考えてくれると。難しいですけどね。そういう深いところまで本当はお互い話し合って、良い場所が見つけられたらいいなと思います。まずはこちらの作るもの、意図をちゃんと伝えることが大事だなと思いました。
本作では弘前市、板柳町の担当者とそのような関係を築けましたか
 はい。撮影の3年程前から青森にプロデューサーと足を運んで、じっくり時間をかけて関係を築きました。弘前市のフィルムコミッションの方とは、15年ほど前、自主映画の時に手伝って頂き、知り合いだったのでやりやすかったです。関係性が出来ていたからこそですが、プロデューサーがフィルムコミッションの方へ発破をかけているところを何回か見ました(笑)
本作で一番印象に残っているロケ場所を教えてください
 いっぱいありすぎて(笑)。岩木山の前を岩木川という川が流れているのですが、その川沿いを歩く主人公のシーンは、ロケハンしながら探した場所だったと思います。シナリオの中に最初はなく、ただ“道”としか書いていませんでした。その“道”というのが私のシナリオには結構多く書かれていて。主人公が歩く道はどういう道なのかと、いつも制作部と話し合いながら探すのですが、なんだかんだで道選びが一番難しくて。家とか学校とかは比較的限られる。でも道は無限です。だからこそ、劇中で出てくる道は試行錯誤して選んだ場所ばかりです。とても難しかったです。主人公の生活範囲を表現する道は、良く見ると色々な情報が含まれています。例えば、木が沢山あって自然を感じるだけでもダメで、そこに民家が少しだけ映り込んでいるだけでも見え方が変わってきます。道だけで物語を語れる場所が沢山あるんですよね。それぞれの部署でも見る視点が違っているので、制作部が探してきた場所を、カメラマンが見て、ちょっと違うなということで、また0から探してもらうことはよくありました。
主演の駒井蓮さんとの撮影の裏話はありますか
 クランクインする前に、駒井さんと顔を合わせる機会を何回か作っていただきました。他愛もないお話をしていたのですが、駒井さんってすごく自然体な方なんですよね。駒井蓮さんをどこからどうやって撮ったら、駒井蓮という人間の顔が一番よく映るのか、そういうことを考えるためにも何回も会いました。ですが結局、撮影に入ってからでないと分からないことがいっぱいありました。お互い多少不安もある中でクランクインしたのですが、クランクインして割とすぐ呼吸があった感じがしました。私は演出上で具体的に言葉にして伝えることがすごく苦手なので、少し抽象的な言い方でしか伝えられないことが多いのですが、駒井さんは呑み込みがすごく早かったです。私が言い淀んでいると、分かりました!と。その言い淀み方の加減で分かってくれることがあったようです。結局最終的には駒井さんに助けられていました。特に具体的に言葉を交わした訳ではないですけど、通じるものがあったのだと思います。
他にも撮影の裏話はありますか
 おばあちゃん役の西川洋子さんは三味線のベテランですが、お芝居がほぼ初めてでしたので、始めは出演を迷われていました。何回か直接交渉にお伺いした際、迷っているけれどもシナリオをすごく読み込んでいました。本当は出たいのではないかって思っちゃうくらい。しかも、お芝居が初めてとは思えないほどシナリオを読み込む力がありました。加えて、西川さんの生き方がすごく独特で面白く、対話の中で西川さんが語る言葉をそのままシナリオの中のセリフに生かすこともありました。西川さんからは色々なインスピレーションを頂きました。
監督を目指そうと思ったきっかけを教えてください
 映画製作に足を踏み入れたのは大学の時に映画を見るようになったことがきっかけです。最初は監督って何をやるのか想像すらできなかったので、とりあえずシナリオ書く人になりたいと思っていました。しかし、結局普通の会社に就職して仕事をしていました。ですが諦めきれず、シナリオを書くために、仕事を辞める決心をしました。でも一人で机に向かって黙々と書くのではなく他人と一緒にもの作りしたいと思い直し、映画美学校という専門学校に2002年頃に入学しました。そこでは各々が作品を撮るのですが、自分が監督・脚本をする中編作品をつくる機会があり、そこから今に至っています。いつの間にか、お仕事としてやっていました。
最後に、映像業界の若い世代へメッセージをいただけますか
 とにかくいっぱい作るってことですね。お金集めとか大変だと思いますが、若いうちはいっぱい作った方がいいと思います。若い人が頑張っていると、周りのみんなが応援してくれると思います。若い人をちゃんと支えなきゃって想いは誰でも持っていると思いますし、まちの人たちもきっとそうだと思います。その大人の力をどんどん借りながら、作品をいっぱい撮ることが大事だと思います。

―――ありがとうございました!
作品情報
映画『いとみち』
「人があるげば道ができ、道を振り返れば歴史という景色が見えるど言う。
わあの歴史はまんだ、どごさも見当たらね」
青森県弘前市の高校。日本史の授業で音読をあてられ、相馬いと(駒井蓮)は
この世には珍しく激しい津軽弁で、みんなから笑われる。

訛りと人見知りのせいで本当の自分を見せることができず、友人もいない。
得意だったはずの津軽三味線も気乗りせず、弾かないままずっとしまい込んでいる。

そんなもやもやした日々を過ごすいとが意を決して始めたアルバイト先は
なんとメイドカフェ!五能線と奥羽本線を乗り継ぎ “大都会”青森市へ。
津軽メイド珈琲店には、やたら丁寧な店長の工藤優一郎(中島歩)、
強気なシングルマザーの葛西幸子(黒川芽以)、
漫画家を目指している福士智美(横田真悠)がいた。
いとはメイド服はばっちり似合って喜んだものの、キメ台詞が言えないいと。
「お、お、おおんがえりなさいませ、ご、ごすずんさま!」。
オーナーの成田太郎(古坂大魔王)はその不気味さでびびるいとに「絆」をアツく語る。

ある日、テレビのニュースで成田が逮捕されたことが報じられ驚愕するいと。
突然のメイドカフェ廃業の危機に、いとが立ち上がった。
「わあ、好ぎだ人だぢど、ずっと一緒に働きてえです。
まんだいっぺえお客さんさ来てもらいてえんです。三味線弾がせでください!」。
_______________________________
【作品情報】
2021年6月18日(金)公開
出演者: 駒井蓮、豊川悦司、黒川芽以、横田真悠、中島 歩、古坂大魔王、ジョナゴールド(りんご娘)、宇野祥平、西川洋子
原作:越谷オサム
脚本・監督:横浜聡子
劇中歌:人間椅子「エデンの少女」
 配給:アークエンタテインメント
©2021「いとみち」製作委員会

【INTERVIEW】
監督・横浜聡子さん
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