ロケ地について、文が働くカフェはこだわられたそうですね
原作には町の設定がありません。漠然と町を探すよりも、本作においてはあのカフェ、つまり“点”を決めることがロケハンの第一目標でした。ただもちろん“点”と言いながらも、どんな立地にあるかが大事で。劇中に登場するカフェは、人通りに面していながらもポツンとした佇まいで主張をしない。それでいて映像的には風景の中に埋もれてしまわないようにと、言わば真逆の要素を満たさねばなりませんでした。
更紗と文が引き離される湖も印象的でしたが、どのような意図があって「湖」を選んだのでしょうか?
実は、原作は湖ではなく動物園の設定なのです。ただ、更紗と文を繋ぐイメージとして“水”が浮かびました。風水的にも二人はどこか水に近い。なので、二人のいる場所には水や雨の存在が介在する構図を意識しました。ちなみに、亮は火、谷さんは土。亮のマンションは火にちなんでソファを赤にしたり、壁に赤い絵がかかっていたり、鍋も赤だったりします。衣装にもオレンジを入れました。海や川に比べて、湖には神秘性を感じます。更紗と文の記憶を繋ぐ場所として適していると思えました。ただこのシーン、撮影をしたのが9月でちょうど水が冷たくなる時期だったので俳優は苦労しましたね。