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“あの頃”の昭和をリアルに再現するには?友近主演YouTubeドラマで話題!実はテレビ制作者/フィルムエスト西井紘輝さんインタビュー

2024.11.11
監督
西井 紘輝さん

昭和のサスペンスドラマを再現した90分の動画が公開2ヶ月で再生回数360万超え!友近サスペンス劇場『外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人』制作や愛媛ロケの裏側を監督、脚本、編集、主題歌の作詞まで手がけた西井紘輝さんに聞いた。

どういった経緯でこの動画が生まれたのでしょうか?
友近さんとは去年フィルムエストで『知りすぎた女』という作品を作ったんです。そのご縁でまた一緒に何かやりたいねという話をずっとしていました。話している中で友近さんの故郷である愛媛を舞台に撮りたいという案が出てきました。
「あの頃の2時間ドラマをやりたい!」という友近さんの積年の願いがあったんです。昔は2時間ドラマ枠自体が多く、日常に溶け込んでいたんですよね。でも地方ロケは制作費がかかることもあり、今はその枠が消滅してしまいました。それを友近さん自身すごく寂しがっていたそうです。そこでお声がけいただいたのが去年のちょうど今頃(10月)です。
1時間以上の長い動画を作るのは初挑戦とお聞きしましたが、大変でしたか?
脚本が難しかったですね。長編ドラマの脚本なんて書いたことがなかったですし、そもそもドラマ制作が初めてだったので。脚本は少しずつ書いて、友近さんに見せてを繰り返し、方向性を合わせながら完成させました。
2時間ドラマを完成させるには時間と労力がかかるので、これは集中しなくてはと思い、僕は制作会社で普通に働いていたので、まず休職しようと決意しました。おかげで、いい作品ができただけでなく各地でのイベントなど様々な経験ができました。会社には感謝しかないですね。
どのようにして昭和の映像を再現しているのでしょうか?機材?それとも編集?
実は地道な編集作業で生み出しています。撮影機材は一般的にバラエティー番組で使うような最新のものです。それで撮った素材を何回も何回も書き出してあの雰囲気にしています。
出力して設定を変えて書き出すと画質が悪くなります。それをひたすら手動で繰り返し、物理的に画質を落としています。デジタルの力を駆使して実はめちゃくちゃアナログで面倒くさいことをやっています笑。

―テロップもこだわりがあるのだとか。

今回のタイトルは僕が筆ペンで書いたもので、テロップの文字は人一倍こだわりました。エンドロールも、実は手間がかかっています。今の明朝体と当時の明朝体って、デザインが微妙に違うんです。当時の写植機を持っている方にお願いして、印字してもらった紙をスキャンし、字の間隔を調整して使っています。最近は昭和再現ものが多いですが、「フォント周り」が適当だとつい気になってしまうんですよね笑。

―西井さんはリアルタイム世代ではないですよね。何か参考にされたのですか?

もちろん昔の2時間ドラマはたくさん観て、そこで掴んだ基本的なフォーマットを踏襲する形にしました。その中に「ここで一旦整理しましょう」や「最後は崖」など、“2時間ドラマあるある”をいかに入れ込めるかというのが今回のミッションでした。
古いセリフの言い回しをたくさん脚本に書きました。劇中、友近さんが「ナイス!」と言う決めゼリフがあるのですが、あれは友近さんのアイディアで加えました。本当に二人三脚で進めたという感じですね。
愛媛でのロケについてお聞きします。途中で流れるCMが実在の企業だと知り驚きました。そのスポンサーやロケ地探しはどのようにされたのですか?
ロケ地探しと営業を一緒にやっていました。友近さんは愛媛をすごく大切にしておられるし、そこでの交友関係やネットワークが本当にすごいんです。コマーシャルは、友近さんの講演会によくいらっしゃる企業の方などから賛同を募り、制作しました。動画バージョンと静止画バージョンでちゃんと金額も違うんですよ。地道に少しずつお金と協力を集めていきました。

―特に印象に残ったロケ地や協力してくれた人はいますか?

山のようにいます。特に協力してくださったのは、やはりホテルです。撮影隊の拠点兼ロケ地として、友近さんが普段から親しくされている「奥道後 壱湯の守(松山市)」さんに協力いただきました。
スタッフとキャスト合わせて30人以上のロケ隊だったので、宿泊費が大変なんです。タイアップ協力や食事の提供をしてくださり本当に感謝しかありません。味があって最高にいいホテルなんですよ。
他にも、ロバート秋山さんの親戚の方が愛媛県の幅広い企業と関係があったこともあり、そちらからも協力いただきました。ロケ弁の手配には友近さんのお母様が動いてくださったりと、本当に全員野球でした。
また違う町を舞台に『友近サスペンス劇場』を見ることはできるのでしょうか?
ありがたいことに次回作を見たいという声をたくさんもらっています。タイトルが『外湯巡りミステリー』ですから、日本各地の温泉地を巡って撮っていきたいですね。友近さんは沖縄でやりたいとか、僕は東海地方もいいなとか思っているんですけど、やはり問題は制作費ですね。一時は数百万円の赤字で僕の貯金から持ち出していましたし、今回友近さんの出演費は1円もお支払していないどころか、ご自分で協賛までされているので、「企画・協賛・主演 友近」というとんでもない作品なんです。次回作を作るとしたらそこが課題ですが、本当にシリーズ化できたらいいなと思っています。
そもそもフィルムエストをはじめたきっかけは?
映像を作ることがずっと好きで、10歳から編集していました。当時大学生だった2014年に世の中に発信したいという思いで、YouTubeチャンネル(フィルムエストTV)を立ち上げたんです。映像を使って面白いことをやりたいという友達と一緒に、最初はバラエティー番組の真似ごとをやっていましたが、全く再生回数は伸びませんでした。
そんな中、当時から好きだった古い映像を再現して、“あの頃”っぽいニュース映像を投稿したらPV数が伸びて、あれ?と思ったんです。そのあとコロナ禍になって、世間でテレワークの推進が叫ばれたとき、「テレワーク」というワードはどこか古臭いのに、新しいものとして言われているのが自分の中で面白くて、そこで「昭和風テレワークCM」を作ったらかなり反響がありました。そこから昔の視点や解釈を通して、現代の物事を見るとどうなるか?という動画を立て続けに制作しています。チャンネル自体は今年で10周年、このスタイルになったのは4年前ですね。
フィルムエスト今後の展望を教えてください!
今回、初めて長編の「作品」という形にできたことが良かったと思っています。これまで動画自体はすごい数を作っていますが、「作品」にすることによって今回のように何回も繰り返し見てもらえる。だから今後はもっといい「作品」を作っていきたいです。そのためには、普段やっている短編作品を続けて腕を磨きながら、また次に備えていきたいと思っています。
あと香港映画を撮りたいですね!80年代のジャッキー・チェンがバリバリやっていた頃の香港映画ってめちゃくちゃ面白いんですよ!あの雰囲気を再現してみたい。いつかは海外で撮ってみたいですね。
最後にロケなび!を見ているみなさんに向けてメッセージをお願いします。
今回痛感したのは、東京目線だけで作っちゃ駄目ということです。東京の発想だけでは絶対撮れないカットって山ほどあって、今回は地元の方と協力したからこそできたことが多かったです。例えば最後の崖のシーン。いろいろ探した末、最終的には地元の方に聞いて案内してもらったところがロケ地になりました。さらに今回は助監督さんやカメラマンさんも普段愛媛で仕事されている方で、その方々のおかげで融通がきいたり許可が下りたり、本当に助かりました。作品作りを通して、地域で頑張っている人たちと協業する取り組みは、今だからこそ必要だと感じています。
作品情報
友近サスペンス劇場『外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人』
【作品情報】
◆出演◆
友近、芝大輔(モグライダー)ほか
◆スタッフ◆
企画:友近
監督・脚本・編集:西井紘輝
プロデューサー:西山由、井口恭子
EP:秋山真哉

【Interview】
西井紘輝(にしい・ひろき)
1994年兵庫県神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。2014年からYouTubeチャンネル「フィルムエストTV」を主宰。映像作家「にしい」として、現代の事象を昔の価値観で解釈・表現する〝アナクロ映像〟を考案し、多数制作。近年では、バンド「礼賛」のミュージックビデオ制作を手掛けるほか、友近主演の長編サスペンスドラマ『道後ストリップ嬢連続殺人』では脚本・監督を務めるなど幅広く活動中。

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