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ちひろさんに、あの海辺の街へ会いに行きたくなる/映画『ちひろさん』今泉監督に『作品のこだわり』や『撮影の裏側』を聞く

2023.02.22
監督
今泉力哉さん

恋愛映画の旗振り手・今泉力哉監督が主演の有村架純とともに新たな境地を描いた、映画『ちひろさん』が、2月23日(木・祝)にNETFLIXで全世界配信&全国劇場にて公開される。今泉力哉監督に「撮影の思い出や苦労」「ロケーションへの想い」を語ってもらいました。

本作が生まれた経緯を教えてください
 2、3年ほど前に、㈱デジタル・フロンティアの中里プロデューサーから、「この漫画を映画化したいと思っている」という連絡を受け、お会いしたことから始まりました。中里さんとは、10年ほど前に一度だけ深夜ドラマでご一緒し、それから何度かお会いしていました。
 簡単なプロットを見せていただいた時は、概要だけピックアップすると所謂良い話やヒーリングムービーのイメージで、この内容なら自分には向いていないのではないかと思ったのですが、漫画を読んでみたらとても面白くて、是非やりたいとお引き受けしました。脚本などはそこからのスタートだったので、どういう形になるのか楽しみでした。
劇中でこだわった点を教えてください
 まさにロケ場所ですね。原作の漫画があるので、人物や風景がすでに絵として存在し、世界が一回出来上がっていました。全く同じ場所を探すことは難しいですが、どういう町で撮るか、どういう建物を見つけるかなどをすごく気にしました。
全体がフィクショナルな世界であれば美しい画や風景づくりを目指してもいいのですが、これはそういう作品ではない。あまりに綺麗な海に佇んでいても、ちひろさんの世界には近づかない。少しでも町と近い雰囲気が見える場所でやりたいとプロデューサーや制作部と相談しました。
例えば、足先だけ海に浸かりながら佇んでいるシーンですが、ああいった場面を原作にある感じそのままに、すごくだだっ広い海でやるとどうしても美しすぎて、嘘っぽくて、ぐっとこない。生活圏から離れない場所で探した方がいいのではないかということで、カメラマンさんとも話し合いながら場所を探しました。船着き場で鉄のレールがあるような、あまり人が入るような場所ではないのですが、町の近さを感じられる場所をロケハン時に見つけて撮影しました。
作品制作を進める中で、苦労した点はありましたか?
 お弁当屋さんや海辺の空気感がちゃんとその地域にある、ということを映像の中に組み込めるかがとても難しかったです。お弁当屋さんを決めるまでは何店も見ましたね。
あのお弁当屋さんは実在しています。原作と同じ店名の看板にするなど、外観だけ飾らせていただきました。お弁当屋さんは撮影初日から計5日ほど撮りました。普通に営業されているので、一週間で2日間連続で撮影して、また一週間後に2日間撮影するなどしてご協力頂きました。なので、飾りの看板などは営業しているときははずして、撮影時ごとにつけ直していました。クランクアップまでは情報を解禁していませんでしたが、撮影初日から本作の“のこのこ弁当”を知っている人が、「のこのこ弁当って、これちひろさんじゃないか」という噂が広がってしまってましたね(笑)
メインロケ地を選んだ決め手は?
 町と海の近さや、どこか感じるもの寂しさ、屋上から海が見える立地など、色々な面で焼津市がイメージに合いました。加えて、原作にはそれほど船が出てくるわけではありませんが、船着き場や漁港の空気はとても魅力的で取り入れていきました。
夜間に撮影する山も、どこか分からない程に暗かったのですが、撮影部と照明部が遠くに町の光が見える場所が奥行きと高さが感じられて良いということで、そういった場所を制作部に見つけてもらいました。
ロケ場所を探す制作部の人たちにどれだけ能力があっても、予算がなければ都内近郊で探さなければいけないのですが、今回は予算的に静岡県まで範囲を広げて探すことができ、本当に良かったと思っています。
ちひろさんの家も独特ですよね
 あの家が見つかったのは本当によかったです。ただ、中がだいぶ広いので、どう狭く見せるか苦労しました。
 選んだ決め手は、川のゆらめきの光が本当に室内に広がっているところです。夜はその光を生かしつつ、照明を当てて演出しています。落ち込んでいる夜に、室内いっぱいに光が揺らいでいるシーンは、少しフィクショナルになってもいいから、と、照明部から提案された感じで色味をつくっていきました。
光以外でも、外観の謎のピンクの建物の感じや、海辺や建物付近の空気感もポイントでした。ちひろは定住しないイメージだったので、当初はもっと普通のアパートで、あまり物もなくて部屋も飾り過ぎたくないという話をしていました。しかし、ロケハンをする中で、逆に古い海辺の一軒家もありかもという話が出て、あまり縛られずに探してほしいと伝えたら、あの謎の物件が見つかりました(笑)。物欲のない人が一時的に定住して、家賃を払っているという感じのリアルさがあると思って、あそこに決めました。
撮影時の裏話を教えてください
 風の強さには泣かされましたね。海辺はどこに行っても風が強い(笑)。 すごく晴れているけど、役者さんの服がなびいてしまったり、風が目に当たって涙が出てしまったり。冒頭の、ちひろさんがホームレスと一緒にお弁当を食べている出会いのシーンは風がすごかったです。映画で見るとわかるのですが、二人で座ってお弁当を食べている場所は、あの漁港の開かれた空間の中で、唯一風を避けられる場所を探した結果、あそこになりました(笑)
 そのシーンの撮影前に昼休憩になったので、風の中で撮影が出来る、あまり風が吹かない場所を自分で座りながら探し回って、どこだったら風が避けられるだろうかと考え、午後の撮影を再開しました。
それでもやはり風が強く、有村さんの髪が顔にかかってしまって、それこそ裏話ですけど、髪を肩とあごで挟んでもらっていました(笑)。梅干しをもらうやりとり以降は仕方なかったので、そこからは髪がなびき出しますが、それまではずっと髪を挟んでもらっていました。お芝居はやりにくかったでしょうけど、臨機応変に対応してくださりました。
他にも裏話はありますか?
 忘れられないのは、雨のシーンですね。通常、雨の撮影をする日はクレーン車のような雨降らしの特機を借りて雨を降らして撮影するのですが、なんと雨を撮る予定の撮影日には毎回自然と雨が降ったんです。嵐の撮影日は大雨でした。なので、クレーン車は呼んでいるけど使わない…みたいなことが起きました。
ただ、晴れていれば、嵐のシーンもカットをかけたら雨を止められるじゃないですか。でも、カットをかけても大雨なんですよ(笑)。撮影効率が悪くなってしまう上に、実際の嵐なので弱まったり強まったりする。シーンが繋がるかの不安はすごくありましたね。そんな環境の中でも、有村さんも風吹ジュンさんもとても集中して演じ切ってくださいました。
ロケ地のご協力もありましたか?
 もちろんです。焼津市と静岡市が主な撮影場所でしたが、撮影許可、またエキストラをはじめ、多くの地元の方にご協力いただきました。焼津市には撮影後もお礼がてら、表敬訪問しに市役所にプロデューサーと一緒にお伺いしました。コロナもまだ収まっていない中ですし、地域によっては東京から人が来ること自体に敏感になったり、撮影なんて…という街も多い中、すごく協力して下さいました。スタッフ一同とても感謝しています。
地方での撮影の際に気にすべきことは、この撮影に協力してよかった、とその土地の人たちに思ってもらえるような現場にすることです。なぜなら、協力したのに気分が良くない撮影をしてしまったり、撮影隊がその景観や土地を荒らしてしまったら、もう別の撮影隊は受け入れてもらえなくなってしまうと思うから。自分達さえよければいいわけじゃなくて、次の組がまた撮影でお世話になれるような関係性が築けたら嬉しいです。そういう意味でも、今回は撮影後に、また来て下さい、というお言葉をいただけたので、とてもほっとしました。焼津市や静岡市では、また撮影したいです。
ロケ場所に求めることはありますか?
こちらから何かを望むというよりは、地域の皆さんの迷惑にならないことが一番だと思っています。また、撮影や完成した映画が、お世話になったそのロケ地の方々やその土地や街のなにかしらのプラスになればなあ、と思っています。
日常をある意味で非日常にしてしまう撮影って、普段生活している人にとっては迷惑だったりする部分もあると思います。ただそう思わず、お互いに楽しめる場所になったり、撮影自体を楽しんだり、後々その場所が聖地になるなど、撮影したことが地元のプラスになるということが一番理想だと思います。
普段、その道を使って通勤・通学、生活している人の中には、撮影で道を塞ぐことを嫌がる住民の方がいてもおかしくない。というか、普通に嫌ですよね。正直、関係ないですから。だから、できるだけお互いに楽しめる空間になったり、その非日常を楽しんでもらえたり、後々その場所が聖地になるなど、撮影したことが地元のプラスになるということが一番の理想だと思います。
ですので、こちらが求めることは特にないです。撮影はロケ地にとってプラスの部分もマイナスの部分もあると思う。それを忘れることなく、協力してもらうことを当たり前だと思わず、映画をつくっていきたいです。
最後に、映像制作者、映像業界、監督を目指す若い方世代の方々にメッセージをいただけますか。
 普段生活している“なんてことない場所”にも興味を持ってほしいですね。映画『街の上で』を撮った時に、自分が本当に普段から通っている下北沢の飲食店や路地で撮影をしたんです。
住んでいる場所とか、生活している町とか、自分が身近に感じている場所って、撮影場所とはかけ離れた場、創作と別の空間、と捉えているかもしれません。ですが、普段の生活している場所とか、極端な話、自分が住んでいる部屋とか、そういう場所を切り取るならどういう目線になるのかなって考えるだけでも、創作のプラスになると思います。私自身、自主映画はずっと自分の家と近所の公園で撮影していたので。
 場所に関してだけではないです。アルバイト生活などもそう。例えば、なかなか映画をつくれずにアルバイトをしているとします。でも、その日々はなんら創作からはかけ離れた時間ではないのです。もし、バイト先が接客業でレジをうっているとします。そのレジという作業を知っているのと知らないのとでは演出力も変わりますし、その“ただ生活している”日常のひとつひとつの出来事が、映画をつくる時に全部プラスになる。その感覚を自分は持っています。だから、あの時間は無駄だったとか、あれは損したとか、そういう風には考えないようにしています。監督だけじゃなく俳優とかもそうなんですけど。ずるい仕事だと思っています。マイナスとか無駄と思えることが、すべて使える仕事なので。なので、今は日々がうまくいかないと思っていても、腐らずにその日々に敏感に過ごしてほしいです。


―――ありがとうございました!!
作品情報
映画『ちひろさん』
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海辺の町の小さなお弁当屋さん「のこのこ弁当」で働くちひろ(有村架純)。彼女は元風俗嬢だが、過去を隠すことなくあっけらかんとしている。ありのままに生きる彼女の姿は、やがて“生きづらさ”を感じている町の人々に少しずつ大きな影響を与えていく―。
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【作品情報】
2月23日(木・祝)より、NETFLIXで全世界配信&全国劇場にて公開
出演者:有村架純、豊嶋花、嶋田鉄太、van、若葉竜也、佐久間由衣、長澤樹、市川実和子、鈴木慶一、根岸季衣、平田満、リリー・フランキー、風吹ジュン
【INTERVIEW】
監督:今泉力哉
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