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撮影最終日に子どもたちが泣いてしまったほど、現場は青春そのものでした。/映画『劇場版 おいしい給食 卒業』綾部監督に訊く、コロナ禍で“みんなで食べる給食”に込めた想いとは

2022.05.18
監督
綾部真弥さん

給食を題材とした大人気学園コメディの最新映画『劇場版 おいしい給食 卒業』。
ドラマ第1シリーズから4年。ついに完結を迎える、子供たちの青春そのものとなった本作を手掛けた綾部真弥監督に撮影の裏話や思い出、ロケーションへの想いを語ってもらいました。

「おいしい給食」シリーズが生まれた経緯を教えてください
企画プロデューサーの永森裕二さんから「給食を扱ったものをやらないか」と声をかけていただいたのがきっかけです。 “食ものドラマ”は近頃増えてますが、 “給食”はない。どのような作品になるか想像もつかなかったのですが、給食は大人から子どもまでいろんな方が楽しめるツールなので、あらすじを聞き「これは面白くなるな」と思いました。そこから半年をかけて準備し、1か月半ほどの撮影。子どもたちの夏休み期間中に納めなければならず、終盤はかなり急ピッチでした。子どもたちの夏休みを丸々「おいしい給食」の撮影で使わせて頂きましたが、忘れられない思い出になっていればと思います。
劇中でのこだわりや工夫された点はございますか
給食ということで、まずはリアリティ。瓶牛乳や竜田揚げなど、おいしそう、かつ見たことのあるもの。しかし、そこから少しデフォルメして、彩りや品数などフィクションの部分も加えました。とにかくおいしそうに懐かしそうに、それだけで会話ができるような画になればと思っています。もう一点は、甘利田先生のキャラクターです。実は脚本を制作した時点ではここまで激しいキャラではなかったんです。リハーサルをする中で、主演の市原隼人さんと「思いっきり振り切ってみよう」と。厳しくて怖そうな先生が給食になるとウキウキする、そして生徒に負ける。という設定になっていきました。子どもが音を消して観ていても分かる、チャップリンのような身体的アクションと、一方で深い人生訓めいた内面の芝居、この2つを作品の魅力にしたいと思いました。そこは本当に市原さんの表現力が素晴らしく、実はアドリブを挟みながらも台本にあることはすべて忠実にクリアしてくださっています。その上で、市原さんなりに「こうしたら面白い」ということを考えてくださったので、制作陣は市原さんが乗ってくれる現場をいかに演出するか、そんな雰囲気でした。
市原さんのキャスティングというのは、企画段階から上がっていたのでしょうか
上がっていました。演者によって大きく変わる役どころで、かっこよく男らしいだけではない市原さんなら面白くなると思いました。お願いしてもやってくれるだろうかという心配はありましたが、台本を読んでいただき、面白いということで引き受けてくださいました。今までの彼のイメージと異なる部分もあったので、受けてくださって嬉しかったです。本当にぴったりだったと思います。
今回のロケはほとんどが埼玉県川島町だったそうですね
そうですね、いくつか見せていただきましたが、ドラマのシーズン1からほとんど川島です。作品が昭和設定なので、現代の建造物等が少なく、田園風景の素晴らしいこの町の雰囲気がマッチしていました。シーズン1と2とでは学校が変わりますが、いずれも哀愁があり昭和を描きやすかったです。この雰囲気で都会からもそう遠くないので、ぴったりでした。千葉県茂原市でも少し撮影をしていて、こちらもとても協力的に対応して頂きました。
地域の方も喜んでいらっしゃったのではないですか
シーズン2の撮影をしていたときに、近所のご年配の方が「あれ『おいしい給食』やってるの。観てるよ」と声をかけてくださいました。温かく迎え入れてくださっているようで嬉しかったです。また、フィルムコミッションの方には大変お世話になりました。奇跡的に残っている瓶牛乳を見つけてくださったり、コッペパンを地元のパン屋さんへ手配してくださったりと、本当に制作スタッフのように協力していただきました。他にも、使用した廃校では校庭の草を刈ってくださるなど、本当に感謝しかありません。ここまで一緒に作品を作ってくれることもないので。地域の方々のバックアップも含めて本当に充実していました。
ロケの裏話などございますか
ドラマや映画の場合、通常は設定より少し上の年齢層の役者が演じる場合が多く、最近では20代半ばの役者が高校生を演じることもあります。ただ今回はリアルを追求したかったので、本物の中学生たちに集まってもらいました。すると、本当の学校みたいになる。仲のいいグループができたり、喧嘩したり、あるいは好きな子ができたり。現場自体が青春そのもので、僕らはさながら引率教師のようでした。褒めるところは褒め、締めるところは締めて。ハードなスケジュールでしたが、慣れてくると子どもたちも待ち時間で宿題をするなどして、アジャストしていました。撮影に入る前と後で彼ら彼女らの目つきが変わる様を見ていると、映画撮影の充実感を感じてもらえたのかなと思います。そんな素敵な現場だったので、撮影最終日に教師役の市原さんから子どもたちへ卒業証書を渡すイベントを行いました。すると子どもたちは本当の卒業式のように泣いてしまいまして…。一緒に過ごした時間は忘れられない思い出になりますし、そこまで感情移入してもらえて嬉しかったです。
劇中に登場する校歌は元々あった曲なのでしょうか
あれは作りました。プロデューサーの永森さんが、中学のとき給食前に校歌が流れたと仰っていて、これは面白いと。ひとつの様式美として、給食の前は歌って踊る。神野ゴウ君に対して攻撃的な日もあれば、ウキウキ楽しい日もある。その時々の心情表現にもなるので、それも見どころです。
給食のエピソードはプロデューサーの方々の体験談なのでしょうか
脚本は経験豊富な永森さんが書いていらっしゃいますが、当然そこにはご自身の体験もあると思います。ただそれだけでなく、例えば視聴者の方から送られてくるプレセントメールなどに、思い出を添えてくださるものがたくさん届くきます。それを読み、アイデアとして使っていると仰っていました。給食はいろんな人との会話の種になります。僕らは紙パックの牛乳だった、など。そうした色々な会話ができるというのは、ドラマや映画のあるべき姿だと思いますし、そこを目指しています。市原さん含め俳優の方々も、台本に加え実体験で膨らませて演じていらっしゃいました。
コロナ禍での給食シーンは大変だったのではないでしょうか
撮影直前までマスクをつけるなど対策はもちろんですが、みんなで机を合わせて食事をするシーンなどは大変でした。隣の教室に調理場を作ったり、食事にカバーをして運ぶなどの工夫を施しました。オーディションで子どもたちから聞いたのですが、実際の学校現場の給食はいまだに机を前向きにしての黙食。本来楽しい時間のはずなのに、ワイワイできない。かわいそうだなと思いましたが、聞いているとどうやら友だちとアイコンタクトをとったり、物を落とした隙に少し会話してみたりして、こんな状況の中でも彼らなりに楽しんでいるようで。なので「かわいそう」というのは少し違うかもしれません。みんな逞しい。もちろん、学校関係者の皆さんも、今できる最大限の努力をしている状況です。しかし、やはり我々のやってきた、机を合わせてお喋りしながら食べるという楽しみも、いずれ戻ってきて欲しいです。みんなで食べる給食って素晴らしいじゃないですか。我々大人でも人と一緒に食べるとやっぱり嬉しい。この作品が少しでもその役に立てればいいなと思います。
最後に、映像業界を目指す若い世代の方に向けてアドバイスをいただけますでしょうか
私自身、映画やドラマを作る仕事をしていて、まったく飽きていない。業界に入った頃のまま、すごく楽しくて未だに毎日ワクワクしています。日々生活しているだけでは行かない場所を知ることも、さまざまな職業の方と接することもできて、またできた作品をみんなが笑ってくれたり感動してくれたりして、こんな素敵な職業は他にないと思うくらい好きです。続けていくと少しずつやりがいが出てくるので、興味があるのならば、ぜひこの業界に入って欲しいですし、続けてもらいたいです。お待ちしています。


ありがとうございました!
作品情報
映画『劇場版 おいしい給食 卒業』
 【作品概要】
80年代。ある中学校で、給食マニアの教師と生徒が、静かな「闘い」を続けていた―。
それは、どちらが給食を「おいしく食べるか」!今世紀最大の給食スペクタクルコメディ!!
2019年にドラマシーズン1が放送され、ハマる人が続出。翌年劇場版第1弾公開、2021年にはシーズン2が放送され絶大な支持を集めた「おいしい給食」が、笑いも涙も飯テロもスケールアップしてスクリーンに帰ってくる。本作は1980年代の中学校を舞台に給食マニアの教師・甘利田幸男と生徒・神野ゴウによる、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描いた学園グルメコメディ。
学校給食に人生の全てをかける数学教師、甘利田幸男。与えられた献立に異次元のアレンジを加える生徒、神野ゴウ。二人の長き戦いがゴウの義務教育最後の年、遂に完結する。強烈な個性の甘利田を市原隼人が驚天動地の熱演。生真面目ゆえに甘利田に翻弄される女教師に土村芳、給食の神童を演じるは佐藤大志。他に勇翔(BOYS AND MEN)、山﨑玲奈、いとうまい子、直江喜一、木野花、酒井敏也のほか、田村郁久(BOYS AND MEN)、登坂淳一が参戦!
日本中を笑顔にする給食スペクタクルコメディが誕生した!!

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【作品情報】
2022年 5 月 13 日 金 より 新宿 シネマカリテ ほか全国公開
出演:市原隼人、土村芳、佐藤大志、勇翔(BOYS AND MEN)、山﨑玲奈、田村侑久(BOYS AND MEN)、登坂淳一、いとうまい子、直江喜一 木野花 酒井敏也
監督:綾部真弥
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
プロデューサー:岩淵規
撮影:小島悠介
音楽:沢田ヒロユキ・ペイズリィ
制作プロダクション:メディアンド
企画 ・配給 AMG エンタテインメント
配給協力:REGENTS
製作:「おいしい給食」製作委員会

【INTERVIEW】
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