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“江戸っ子”が映画で「本当の東京」を映し出す/映画『TOKYO,I LOVE YOU』中島監督に『作品のこだわり』や『撮影の裏側』を聞く

2023.11.10
映画監督
中島 央さん

11/10(金)に全国公開される映画『TOKYO,I LOVE YOU』。大都市・東京を舞台に恋人・親子・親友と3つの愛のかたちをテーマに描いたヒューマンストーリーだ。今注目の若手俳優・山下幸輝が主演を務めることでも話題になっている。今回は本作を手掛けた中島央監督に「撮影の思い出や苦労」「ロケーションへの想い」を語ってもらった。

本作が生まれた経緯を教えてください
タイトルでばれるかもしれませんが、映画『パリ、ジュテーム』や『ニューヨーク、アイラブユー』という映画の東京版を作りたいと思ったのがきっかけです。
元々アイディア自体は長い間あり、ずっと“誰かがやるのかな”“次は東京、愛してるの番だな”と思っていたのですが、誰もやらないので自分が撮ろうとなりました。
劇中でこだわった点を教えてください
本作のこだわりはやはりロケ地です。お台場をはじめ東京タワーや新宿、中野など東京各地で撮影しています。生まれも育ちも東京の“江戸っ子”な自分が映画を撮るからには「自分にしか見えない東京の景色」を映し出したいということもあり、ロケ地の見せ方もこだわりました。私自身「ハイパーリアル」という言葉が好きで。現実的にはあり得なそうだけどリアルでギリギリ信じられる事象という意味なのですが、私はそれを映画作りの上でいつもこだわっています。本作ではただ東京を見せるのではなく、もっと「こういう東京が見たい」という“ハイパーリアルな東京”を見せようと心掛けました。それこそハル(羽谷勝太)の家が顕著ですが、日本家屋で着物を着て、豪勢なごはんを食べている人なんてそうそういないしあり得ないですよね(笑)。冒頭部分に出てくる親友たちがお台場の夢の大橋での待ち合わせというのもまずない。ただ、「何があってもいいじゃん」みたいな夢を売る映画にしたいと思っていました。ハイパーリアルにいきつつも、バランスをどうやって取っていくかという点にも注意しています。例えば中野の何気ない街角の風景を入れることで実際の東京の日常や愛おしさを感じる部分を映し出しました。

こういった“東京”や“ハイパーリアル”な路線を突き詰めてみたいなというのはずっと思っていたので、本作によってある意味デビュー作をもう一度撮ったような感覚です。この映画を撮ることで、ある意味、デビュー作をもう一度作っているという感覚と言いますか、あえて言うなら、もう一度、フィルムメーカーとしての自分の基礎がしっかりと作れたと思っています。
メインロケ地を選んだ決め手は?
今回のメインロケ地に東京・お台場を選んだのは自分自身お台場という街が大好きだからです。20代の青春時代にお台場へ行った際、一つのワンダーランドのような“ニュー東京”を感じました。特に夢の大橋などは初めて見た時、この世のものとは思えないような美しい雰囲気が漂っていたのを鮮明に覚えています。当時20代だったことも相まって独特な雰囲気に一気に包まれました。だから漠然とですが、“絶対お台場で映画を撮りたい”という思いはずっとありましたね。最初のシーンも最後のシーンもお台場で撮ったのはこういった個人的な思いからです。
お台場ロケのこだわりで言うと、「モノレールをきちんと見せたい」というのがありました20代のときからお台場のモノレールに大きな憧れや愛があり、モノレールが遠ざかっていくところの線路の円形のシーンとか、あの場所の雰囲気がとても好きで。なんで誰も撮らないんだろうとずっと思っていました。結構何度も何度も執念深く撮りに行って完成したシーンなので、自分でも特に気に入っているシーンの一つです。
八王子でも多く撮られたということですが?
ロケハンに行った際、導かれるままに多くのロケ地が見つかった場所が八王子です。特にリヒト(山下幸輝)たちが集まってブリティッシュパブで飲むシーンがあるのですが、あの場所は一目見て恋に落ちました。ロケ地を決めた後お店のオーナーに「お前これからどこ行くんだ」と言われたので「ここから他のロケ地を探しに行く」と伝えたら、「ちょっとうちも貸すわ」と言ってオーナー自身の家を貸してくれたんです。それがとてもよくてリヒトの家になりました。あとハルの家も八王子で見つけました。あそこは元々旅館で使われている施設です。脚本を書いた段階だと、もっと洋館っぽい豪華な感じでしたが、あの場所に行ってから脚本の設定を変えてこのシーンだけ全部和にしようとなりました。もうテリーさんとかみんなは着物着て出てくるみたいな。あんな家、あまり現実世界ではあり得ないんですけど。ただ私的に「とんでもジャパン」みたいなのを1回作ることで本当の東京とのギャップを際立たせたいと思いました。
撮影時の裏話を教えてください。
ジョージ(オギー・ジョーンズ)がカメラ捨てる川のシーンは映画の中では、夕陽が川面に反射する夕方になっていますが、実際に撮影したのは朝6時です。撮影監督や照明とかで話して、早朝の光が夕陽として表現するのは一番美しいからその時間に撮ろうとなりました。あとリヒトの最後の早朝の朝焼けのシーンなどは、実際は昼の2時ぐらいに撮って、早朝に見立てています。本当の朝に撮ると光が青白くなり、ちょっとホラー映画の色みたいになってしまうんですよね。あえて通常とは違う時間で撮りに行き、ロケ場所本来のベストな部分を見せるように心掛けました。僕自身、撮影を通して隅田川に太陽が反射しているようなところをモニターで見ながら「とんでもなく素晴らしいシーンが撮れたな」とか思っていました。
撮影の上で苦労したことなどありますか?
リヒトのダンス大会のシーンを撮る際、最初決めていた場所に不備が生じてその後全く決まらないということがありました。もともと踊るシーンを撮るときは、リヒトの周りをLED画面のパネル4面全面を光らせて見せたいという構想があったのですが、なかなか合う施設が見つからない。私もいろいろ見に行きましたがダメで、妥協せざるを得ないかな…と自分含め周りが諦めモードだったとき、プロジェクトチームが4面ある施設を見つけてくれたんです。実際に行ってみたら自分のイメージしたのより室内が少し小さかったのですが、撮影が迫っていたことと施設自体人気のある場所で今決めないと取られると言われたことでもうここ以外ないなと思い決めました。あれはミラクルでしたね。自分のコントロールを超えたところで、きちんと素敵なロケ地に導かれたのでこの映画は愛されているのかなと思いました。あとは中野セントラルパークでのシーンでしょうか。撮影は2021年の冬と22年の冬で2年かけて行ったのですが、第2章の最後のシーンを撮影する前日に大雪が降ってしまい。周囲に「監督明日どうしますか?強硬しますか?」と言われたときはとても悩みましたね。お金など実際的な面も考えて、強硬してとりあえず終わらせようとも思いました。ただ、強硬して道に雪が残っていたら、他のシーンとの整合性が合わなくなり、もう映画として使い物にならない。結局1週間延期しました。1週間後、完全に元に戻った状態で撮影できたのでスタッフも「あれ大英断だったけど、良かったね」と言ってくれましたが、もうプレッシャーが凄かったです。
監督はハリウッドで映画を撮られた経験もありますが、日本とアメリカの違いを感じる瞬間はありますでしょうか?
日本の現場に入ることも多くなり慣れてきているのもあるのですが一番の違いはスタッフの呼び方でしょうか。アメリカは「監督」「プロデューサー」とか言わず誰もがみんなファーストネームで呼び合うので面白いと思っていました。あと歳とか聞く習慣がないのも特徴です。現場にスタッフが200人近くいたときは最後誰が何歳だかよく分からなかったですが(笑)。年齢に関係なく実力を持っている人だけがきちんと生き残るシステムがよかったです。ただ基本的には劇中の「日本もアメリカももう変わらないな」というセリフにもあるように特に変わらないと思います。アメリカはロケ撮影において、システマチックに整備されているのでとても撮影しやすいです。日本もよく「撮影しにくい」といわれますが、実際に撮影してみると最悪を想像していたからなのか全然撮影しやすいなと感じました。
本作で多くの東京の風景を映し出していましたが、今後東京で撮りたい場所などありますか?
沢山ありますよ。今回もロケハンをする中でこんな面白いところあるんだみたいな、誰も気づかないような迷路みたいになっている道とかが荒川とかの方にあるのでそういうところでも撮ってみたいなと思いました。あとは六本木とか表参道のようないわゆる“ザ・ニュー東京”みたいな場所を海外ノリっぽい感じで撮れないかなとかもずっと考えていますし。逆に奥多摩とかも撮りたいです。奥多摩をそのまま映し出してしまうと地方創生ビデオみたいになってしまうので、もっと物語の中心を支えるような感じで見せられたらいいなと思っています。
今後ロケ場所に求めることはありますか?
場所とかではなく、結局は自分自身がどう映し出すかというところに帰結するのだと思います。最近も東北に行ってCMを撮っていたのですが、やはりカメラ向けたときと人の目から見える景色とは全然違うなと言うことに気が付きました。そうすると自然にカメラワークやアングルもわかってくるんですよね。結局「どこ行って撮ってくれ」と言われても、自分なりに撮れる自信があります。
最後に、映像制作者・映像業界・監督を目指す若い方々にメッセージをいただけますか?
この映画で特に伝えたかったことは“自分が自分であることの大切さ”です。作品を通して「君が一番大事なものを信じている・わかっている時点で、人に君の人生は決められないし、君は君でいいんだよ」ということはどこかで伝えたいと思っていました。世の中はよく「あなたは勝ち組、負け組」とか、「あなたは夢が叶った、叶ってない」というように二分化されている印象を受けます。特に今を生きる若い世代は、それに左右されていて、いつもちょっと可哀想だなと思っていました。ただ実際よく考えてみると夢が叶っている大人なんてごくわずかです。だからそんなに「夢が叶った、叶ってない」といったことで人生を左右されるほど悩む必要はないと思います。映画にもそういうメッセージを込めました。人生は自分の選択によって成り立つものだからこそ、どんな道に行っても長い目で見れば間違いとか失敗はないと思っています。「何かにならなくてはいけない」とか「何かやらなきゃいけない」のではなく、自分は自分自身である時点で儲けものです。あとは「それをいかに楽しめるか」とか「社会という大きな目で見たときに自分はどれだけ世の中の役に立てるか」とかそういう思考でいくといいと思います。どんなことをやっても止めない限りそれは正解だということを伝えたいです。自分を責めるより認めて、失敗を恐れずに突き進んでいってください。ありがとうございました!
作品情報
映画『TOKYO, I LOVE YOU』
日本の首都「東京」―この大都市のいくつかの街角で起こる、恋人、親子、親友たちの愛にまつわる物語。東京タワー、新宿界隈、お台場を舞台にした3つのオムニバスが、時に交差して描く人間賛歌!日本に帰国したばかりのダンサー・リヒト(山下幸輝)が、余命3ヶ月と診断された脳腫瘍に苦しむ親友・シモン(松村龍之介)を救うために、幼馴染の親友たちハル(羽谷勝太)、ノア(坂井翔)、ユージン(下前祐貴)、レイ(島津見)、ダン(西村成忠)と力を合わせ、高額な手術費を工面しようとする。果たして、リヒトを始めとした東京の様々な街で暮らす主人公達は、迫りくる危機と試練に抗い、自分達なりの愛を貫き通す事ができるのか?

【作品情報】
出演:山下 幸輝
松村 龍之介、羽谷 勝太、坂井 翔、島津 見、下前 祐貴、西村 成忠加藤 ナナ、草野 航大、奏 みみ、小山 璃奈、オギー・ジョーンズ、長谷川 美月、テリー伊藤、田中 美里 ほか
監督・脚本:中島 央
音楽:ネゴロノブ 
撮影:神野 誉晃 
エグゼクティブプロデューサー:齋藤 隆 中山 由衣 山本 泰宏 
プロデューサー:中山 友翔 中島 央
制作:株式会社ウィスコム
配給:ナカチカピクチャーズ
製作:「TOKYO, I LOVE YOU」製作委員会
【Interview】
監督・脚本:中島 央
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