もともとこの原作を映画にしようと思って読んだのではなく、1人の宮部みゆきファンとして本屋さんで1巻目を手にとったら、止まらなくなってしまったんです。それで周りの映画スタッフに「この子供達の精神は、映画作りには絶対必要だと思うから読んでみてよ」って薦めました。そしたら松竹のプロデューサー陣が「これは映画にするべきです!」と逆に説得されました(笑)。とはいえ主役は中学生たちなので、オーディションは必須。いわゆるスター俳優を使わない話は最初から出ていたので、これは大変なことになるなと。ほぼ素人の子たちが主役を張って、前代未聞の校内裁判をやる。そんなことが成立するの?って思うけど、見たことがないものって強いんですよね。宮部さんが撮影現場に来てくれた時、涼子と神原を見て「イメージ通りだ」と泣いて感動されていたのも嬉しかったです。
僕の作品へのテーマはいつも一貫していて、人と人の繋がりが人を救う。もっと言えば世界を救うってことなんです。前篇で事件が起こり、後篇の裁判で謎が解けてゆく。その中で見えていくのは、一人一人の関係性が救われていく姿。人と繋がることでしか、人は救われない。謎が解けていく時に、それが大きな感動に変わっていくことを是非劇場で体感してもらいたいです。
今回の舞台は下町(江東区)で、クランクインの前には原作イメージのところをロケハンしたのですが、場所柄スカイツリー等が映ってしまい、90~91年をなかなか作りきれず苦労しました。
また、夏に雪のシーンを撮らなくてはならなかったのですが、本物の雪を下町で撮るというこだわりがありました。実際ロケを始めたのは、去年の大雪が降った時です。カメラマンたちが雪を撮影できるよう常に待機していたので、見事に下町で本物の雪が撮れました。涼子と野田が歩くシーンは、下町で撮影した雪道と同じ距離をはかって歩いてもらい、雪景色と合成しました。その後、大阪府堺市での校門シーンは、塩で作った雪を美術部総出で製作。死体を発見する裏門は山梨県大月市の学校で、再び夏に雪を作り込んで撮影するなど、とても手間がかかりました。
でも、映画の冒頭で出てくる雪のシーンは、本物の下町に降った雪です。真夏の雪という大ウソをつくために、リアルな雪が役立ったわけです。
今回は、いろんな場所を組み合わせて撮影する必要があったのですが、ただ安直に画を組み合わせていくと、嘘っぽくなってしまします。僕は「八日目の蟬」や「ふしぎな岬の物語」のように、割とロケーションジャパンに取り上げてもらえるような(笑)撮影をする方なのですが、今回は全くそうではない。だから、地域ロケで培ってきた経験が生かせるかなと、本物があって映画の嘘をついていくことができたかと。それがすごく大事だと思います。
まず“人間的にしっかりした人”がいいですね。ロケ地があって僕らは撮らせてもらえるわけで、今回の映画でもいろんなところに行っています。相手を口説くには、きちんとした人間じゃないと向こうも信用してくれませんから、映画のお仕事というよりそれ以前に、人間として信用できる人が集まったチームは強いのではないかと思います。
『八日目の蟬』で小豆島の棚田を選んだとき、最初は断られてしまいました。でもうちの制作部が何日も何日も通って、地元の人たちとお酒を飲んだり色々と交流をして、それこそ5回6回通ってようやく口説いて、撮影が実現しました。
残念ながらロケ地の中には、撮影でむちゃくちゃにされたから二度と貸さないという場所も沢山あります。昔に比べたら随分なくなってきましたが、昔はひどかったですからね。
ロケ地側も「あの映画で貸して良かった」私たちも「借りてよかった」と思う関係にしたい。ロケ地があって、ふるさとの風景があるから、僕らも映画を撮れるわけですから、お互いに「良かった」という思いを共有できる形で作っていければいいなあと思います。その橋渡しをしてくれるのが制作部です。”最初の要”であり、撮影隊と現場をつないでくれる“橋渡し役”、その時に一番大事なのが人間性であると思います。
もともとこの原作を映画にしようと思って読んだのではなく、1人の宮部みゆきファンとして本屋さんで1巻目を手にとったら、止まらなくなってしまったんです。それで周りの映画スタッフに「この子供達の精神は、映画作りには絶対必要だと思うから読んでみてよ」って薦めました。そしたら松竹のプロデューサー陣が「これは映画にするべきです!」と逆に説得されました(笑)。とはいえ主役は中学生たちなので、オーディションは必須。いわゆるスター俳優を使わない話は最初から出ていたので、これは大変なことになるなと。ほぼ素人の子たちが主役を張って、前代未聞の校内裁判をやる。そんなことが成立するの?って思うけど、見たことがないものって強いんですよね。宮部さんが撮影現場に来てくれた時、涼子と神原を見て「イメージ通りだ」と泣いて感動されていたのも嬉しかったです。
僕の作品へのテーマはいつも一貫していて、人と人の繋がりが人を救う。もっと言えば世界を救うってことなんです。前篇で事件が起こり、後篇の裁判で謎が解けてゆく。その中で見えていくのは、一人一人の関係性が救われていく姿。人と繋がることでしか、人は救われない。謎が解けていく時に、それが大きな感動に変わっていくことを是非劇場で体感してもらいたいです。
今回の舞台は下町(江東区)で、クランクインの前には原作イメージのところをロケハンしたのですが、場所柄スカイツリー等が映ってしまい、90~91年をなかなか作りきれず苦労しました。
また、夏に雪のシーンを撮らなくてはならなかったのですが、本物の雪を下町で撮るというこだわりがありました。実際ロケを始めたのは、去年の大雪が降った時です。カメラマンたちが雪を撮影できるよう常に待機していたので、見事に下町で本物の雪が撮れました。涼子と野田が歩くシーンは、下町で撮影した雪道と同じ距離をはかって歩いてもらい、雪景色と合成しました。その後、大阪府堺市での校門シーンは、塩で作った雪を美術部総出で製作。死体を発見する裏門は山梨県大月市の学校で、再び夏に雪を作り込んで撮影するなど、とても手間がかかりました。
でも、映画の冒頭で出てくる雪のシーンは、本物の下町に降った雪です。真夏の雪という大ウソをつくために、リアルな雪が役立ったわけです。
今回は、いろんな場所を組み合わせて撮影する必要があったのですが、ただ安直に画を組み合わせていくと、嘘っぽくなってしまします。僕は「八日目の蟬」や「ふしぎな岬の物語」のように、割とロケーションジャパンに取り上げてもらえるような(笑)撮影をする方なのですが、今回は全くそうではない。だから、地域ロケで培ってきた経験が生かせるかなと、本物があって映画の嘘をついていくことができたかと。それがすごく大事だと思います。
まず“人間的にしっかりした人”がいいですね。ロケ地があって僕らは撮らせてもらえるわけで、今回の映画でもいろんなところに行っています。相手を口説くには、きちんとした人間じゃないと向こうも信用してくれませんから、映画のお仕事というよりそれ以前に、人間として信用できる人が集まったチームは強いのではないかと思います。
『八日目の蟬』で小豆島の棚田を選んだとき、最初は断られてしまいました。でもうちの制作部が何日も何日も通って、地元の人たちとお酒を飲んだり色々と交流をして、それこそ5回6回通ってようやく口説いて、撮影が実現しました。
残念ながらロケ地の中には、撮影でむちゃくちゃにされたから二度と貸さないという場所も沢山あります。昔に比べたら随分なくなってきましたが、昔はひどかったですからね。
ロケ地側も「あの映画で貸して良かった」私たちも「借りてよかった」と思う関係にしたい。ロケ地があって、ふるさとの風景があるから、僕らも映画を撮れるわけですから、お互いに「良かった」という思いを共有できる形で作っていければいいなあと思います。その橋渡しをしてくれるのが制作部です。”最初の要”であり、撮影隊と現場をつないでくれる“橋渡し役”、その時に一番大事なのが人間性であると思います。
(STORY)
雪がしんしんと降り積もるクリスマスイブの朝。中学2年生の藤野涼子(藤野涼子)は、クラスメートの野田健一(前田航基)と共に、雪に埋もれた柏木卓也(望月歩)の死体を発見する。屋上から転落したとみられる柏木は、不登校が続いており、悩んだ末の自殺だろうと早々に警察は結論づける。しかし涼子のもとに、柏木は学校1の問題児=大出俊次(清水尋也)らに殺されたという衝撃的な内容の告発状が届き事態は一変。真実を隠そうと躍起になる大人たちに不満が募った涼子は、自分たちで真実を見つけ出そうと前代未聞の“学校内裁判”を開こうと立ち上がるが…。
監督:成島出
原作:「ソロモンの偽証」宮部みゆき(新潮社刊)
出演:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、西村成忠、西畑澪花、若林時英、加藤幹夫、石川新太、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、小日向文世、黒木華、尾野真千子 ほか
配給:松竹
前篇 3月7日(土)ロードショー
後篇 4月11日(土)ロードショー
ⓒ 2015「ソロモンの偽証」製作委員会
成島出(なるしま・いずる)
61年生まれ。山梨県出身。相米慎二監督らの助監督を務め、『油断大敵』(04)で監督デビュー。近作に『孤高のメス』(10)、『聯合艦隊司令長官山本五十六』(11)、『草原の椅子』(13)など多数。『八日目の蟬』(11)はその年の映画賞を独占、『ふしぎな岬の物語』(14)は第38回モントリオール世界映画祭で審査員特別賞グランプリを受賞した。