プロデューサーインタビュー

2018.10.29

「千原ジュニアにアカデミー賞を」芳賀正光プロデューサー/ お蔵入りになる筈だった映画が奇跡の復活。本当に良い映画の条件とは(映画『ごっこ』)

プロデューサー芳賀正光

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  • ――偽りの親子関係から様々な社会問題を描いた衝撃の話題作『ごっこ』(原作:小路啓之)が実写映画化。プロデュースを手がけたのはブロードバンド放送局「あっ!とおどろく放送局」等で知られる芳賀正光プロデューサー。諸般の都合でお蔵入りになるはずだった作品に関わることを決めた決め手は? また芳賀さんの心を動かした映画『ごっこ』とは一体どんな作品だったのか。『ごっこ』の魅力から芳賀さんが考える「メディア」についての話題まで広くお話を伺った。

     

     

     

    ――撮影に参加されたのは撮影が終わった後だったとか。参加されることになったきっかけは何だったのでしょうか?

     最初は「お蔵入り寸前の映画を復活させてほしい」と言われ、「お断りします」とお答えしました。作品を観て何かアドバイスだけでも、と思い未完成のフィルムを観てみたら、平尾菜々花さんという子役女優が素晴らしい! 彼女のあの年代のあの映像はもう二度と撮れない。映画を公開しなかったら、この天才子役の演技も、頑張ったことも埋もれさせてしまう。「幼児虐待」がテーマの映画なのに、彼女の演技を埋もれさせるというのは幼児虐待ではないかと。それがあまりにも不憫だと思ったので「やります」と言いました。

  • ――千原ジュニアさんの演技にも惹かれた、と伺っています。

     僕が今この映画を広めようとしている理由は大きく二つあって、その一つが「千原ジュニアさんをアカデミー賞にノミネートさせること」です。この映画では千原さんが「子供に向かって愛が芽生えていく様」を観て欲しい、と思います。この映画は順撮りなのだそうです。城宮役のジュニアさんとヨヨコ役の菜々花さんの距離感が変わっていく様は、本当にリアルです。撮影当時、ジュニアさんには子供がいなかったのですが、子供が産まれた現在になって、「子供が生まれる前にこの役を演じられて良かった」と言っています。ラストに向かって『ごっこから本物に!』変わっていく親子像がこの映画の見所です。

    ――もう一つの理由はなんでしょうか?

     「平尾菜々花の存在を世に伝えること」です。彼女には映画が完成した時に初めて会いました。「あなたと出会えなかったらこの映画は復活していないのですよ」と伝えたら、凄く喜んでくれて。この映画に携わって本当に良かったのは、映画公開を喜んでくれた2つの家族に出会たことです。平尾菜々花とそのお母さん。そして、原作者小路啓之さんのお子さんとお母さん。小路啓之さんは不慮の事故で映画が完成する前に他界してしまいました。完成作品をご覧頂いたときの奥様の涙を見た時…、本当に完成させて良かったと思いました。拘わった人たちの家族に心底喜んでもらえる作品は素晴らしいことなんだと。そんな大切なことを教えてもらった映画だから、1人でも多くの人に伝えたい、と思っています。

  • ――作品のテーマにも関わると思うのですが、芳賀さんからは「人と人の繋がり」の大切さを強く感じます。いつもそういったことを念頭に置かれて、制作されているのでしょうか。

     僕もいい歳なんで…、人を中心に動くようになりました。人を選ぶということです。相性ではなく、愛性があって、楽しい時間を過ごせる人を選んで仕事がしたいので。なぜそうするかというと、相手によって出せる馬力が変わってくるからです。人が好きでなければ、100万円で発注された仕事なら100万円のものを納品すればいい。でも好きな人に頼まれたら、その人を驚かせたいから10万円の発注でも100万円のものを作ってしまう。ちゃんと喧嘩ができるぐらい相思相愛であるのがポイントだと思っています。100人の人と付き合うより1人の付き合いの方が関係が深いですしね。

    ――主題歌の川谷絵音さんを選ばれたのも、芳賀さんだと伺っています。

     川谷絵音さんはじめ何人かの有名な方に相談した結果、有難いことに皆さん映画を見て「やりたい!」と言ってくれました。映画「ごっこ」には力があると感じた瞬間でした。その中で川谷さんは、とても忙しいスケジュールだったにも拘わらず『劇伴もやりたい!』というメッセージを頂きました。作品への参加意欲、愛を感じ、信頼ができるクリエーターだと確信したんです。生憎、劇伴への参加は叶わなかったのですが、主題歌「ほころびごっこ」(indigo la End)をはじめて聴いたとき、主題歌を超越、劇伴要素も兼ね備えた完成度の高い楽曲に感銘しました。「ごっこ」が持つ力を多くの人に感じて欲しいという目線が一緒なんだと思いました。実際!「ゲスの極み乙女。」の全国ツアーで「ごっこ」のチラシを配ったり、映画の舞台挨拶に登壇してくれたり、「ほころびごっこ」のMVに平尾菜々花さんを起用したりと映画へ寄り添ってくれました。作品に愛と自身がある象徴。1人でも多くの人に「ごっこ」に触れて欲しいという想いが人と人の繋がり生んでいきます。

  • ――芳賀さんと川谷さんの『愛』が同じだった、注目のシーンや視線は映画のどこなのでしょうか?

     どこ、という具体的なシーンではないのですが…、敢えて言うならば、一番は歌詞の中に出てくる「グリコ・チョコレート・パイナップル」という遊びでしょうか。昔の、何もなかったときの子供たちの遊びの象徴なのですが、それをしているシーンが彼にとっては非常に焼きついていたそうです。本来ならもっと派手なシーンをあげますよね。カレーのシーンとか、平手打ちのシーンとか、抱きしめている姿とか。川谷さんは、物凄くシークエンスの中で非常に深いところを紐解いている。そういうところが感性として僕とあったというか、いいなと思いました。

    ――芳賀さんはブロードバンドを活用されていることでもご高名だと思います。今回も宣伝にネットを多用されているのも、そういった理由からでしょうか。

     ネットだけを特別視しているわけではなく、重要なのはメディア論が変わったということです。昔はTVがメディアの王様で、次に新聞、ラジオ、雑誌でした。所謂、接触率でした。でもピコ太郎さんは、ジャスティン・ビーバーが一言ネットに書いたことで世界的に有名になった。日本で言えばインスタグラムの渡辺直美さん、ツイッターの有吉弘行さんですね。単に普及しているからネット、ネット、と言っているわけではありません。信頼される個メディアが大きな価値になってきていると思うんです。信頼する人から良いサービスや情報を得ることが『個対個』から『個対∞』になった。本格的な「個メディア」の時代の到来だから、僕みたいな無名でも「努力に優る才能は無し」という諺が証明できる時代でもあると信じています。

  • ――芳賀さんのお話を聴くと心からこの映画を薦めたい!と思わされます。映画宣伝において大事なことだと思います。

     他の映画だったらこういうことは言っていないかもしれません。僕は人づきあいが上手い方ではないので、インタビューやラジオ等の出演は基本しないのですが、今回は作品に触れて欲しいという気持ちが強くあちこちに出ています。今回はPR予算も無いし、タレントスケジュールも厳しいので、僕で良ければいくらでも挨拶します、とやっている部分もありますが(笑)。今までの作品では、自分自身が積極的にメディア露出しなかったことに対して、疑問が沸き起こっています。だって、おかしいですよね~。今回の映画はゼロから制作に入っている作品ではなく、最後の仕上げをしているだけなのです。今までも作品はなぜ?『ごっこ』と同じように動いてくれなかったの!?と言われると困ります(笑)。

    ――今回の映画に関わって特に感じられたこと、または観る方に伝えたいことがあったら教えてください。

    (試写で)映画を観た方に「この作品で人生が変わりました」なんてなかなか言われないと思いますが、僕は今回そういうものに立ち会えたことが大変素晴らしいと思っています。マスコミ専用のパンフレットで僕は、皆に「ありがとう」と書いています。そういう気持ちで今後、ゼロから映画を作ればもっと良いものが作れる自信があります。この映画はそれを教えてくれました。大竹まことさんがラジオ番組で「ごっこ」を大絶賛してくれました。あの情熱あるコメントを聞いたら必ず作品熱が伝染するはず。観た方が「核」になって勧めていったら必ず紡がれて凄いことになると思います。ぜひ観た方は声高々に感想を言っていただきたいと思います。

INFORMATION

映画『ごっこ』

(STORY)

大阪の寂れた帽子店には、40歳目前にも関わらずニートの城宮と、5歳児・ヨヨ子の親子が仲睦まじく暮らしていた。実はこの二人、他人に知られてはいけない秘密を抱えた親子だった。十数年ぶりに城宮が実家に戻ったことを知る幼馴染で警察官のマチは、突如現れたヨヨ子に疑いの目を向ける。ごっこ生活のような不安定な二人のその日暮らしはある日突然、衝撃の事実によって崩壊してしまう……。

 

監督:熊澤尚人

出演:千原ジュニア、優香、平尾菜々花、ちすん、清水富美加、秋野太作、中野英雄、石橋蓮司

原作:小路啓之 「ごっこ」(集英社刊)

主題歌:indigo la End 「ほころびごっこ」作詞・作曲 川谷絵音

2018年10月20日 東京 ユーロスペースほか全国ロードショー

 

芳賀正光(はが・まさみつ)プロデューサー

1965年、青森県出身。プロデューサー、マルチプランナー、作家。過去のプロデュース作品に、映画『起終点駅 ターミナル』(15)、『暗黒女子』(17)などがある。

ラップ姫「小島あやめ」、まねきねこダッグ「ますやまたかし」、映画『八日目の蝉』で史上最年少日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した渡邉このみ他、天才子役は歌う楽曲の作詞を手掛けることが多い。

 

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