はい。原作を好きだったからこそ、オファーを受けるか少し悩んだのですが、キャストの提案を聞いて「この2人だったら自分も観てみたい」と思いました。ラブストーリーを映画化するのは初めての挑戦でしたが、結果的には、女子高生とおじさんの恋愛というより、2人の成長物語になりました。大泉さん演じるファミレス店長の近藤が、彼女(あきら)に出会ったことで止まっていた時間が動き出し、彼女もまた、恋は現実からのちょっとした逃げ場だったと気付き、それぞれの道を歩き出す、という爽やかな感じにしようと考えました。
2人とも、同性からも異性からも嫌われない稀有なキャラクターなので、とてもよいバランスだと思います。もし大泉さんがイケメン過ぎたりしたら「こんなカッコいい店長、ファミレスで働いているわけない」と思われてしまうし、菜奈ちゃんは、主人公が可愛い女の子じゃないと、観る方が興味をなくしてしまうので(笑)。
最初こそ菜奈ちゃんは人見知りだったかもしれないけれど、大泉さんの場を和ます力と、人を包み込むような大らかさによって、最後はハグを交わすまでの関係に。俳優として最高のパートナーシップだったのではないかと思います。女性向け、男性向け、ということもなく、また年齢関係なく幅広い方々が楽しめる映画になったと思います。うちの6歳の息子も「早く観たい!」と言っています。
冒頭のシーンは、あきらがどういう職場で働いているのかを見せたいと思い、長回しで気合いを入れて撮りました。ファミレスが舞台の映画って、スケール感がないんですよね。異様に狭い世界の話なので、映画的には、もう少し大きなスケールで、物語の舞台をお客さんに体感させたいという思いがありました。準備とテストに時間がかかったので、テイク数はそんなに多くはないのですが、シーンの最後しか出番がない人は待ち時間が長いし失敗できないプレッシャーが大きかったようです。ワンカットで撮影したので、現場でOKが出たときには拍手喝采が起きました。達成感が違いましたね。
千葉県の我孫子にある閉店したレストランをリフォームして撮影しました。制作業界ではわりと有名な場所で、一番最初に決まったロケ地です。今回は、神奈川で撮影するという縛りの中、原作と同じ場所をロケハンしました。ただ実際に行ってみると、漫画では描かれていない余計な看板が立っているなど画にならないところもあったので、全て同じ場所というわけにはいきませんでしたが、出来るだけ原作に沿って再現しました。
難しいですね。特に神奈川や東京は許可も下りないので、地方に行ったほうが撮影しやすいです。プロデューサーとは当初、金沢や長崎など特殊な世界観に置いて撮影しようと構想していました。ですが、原作者の先生が神奈川県に思い入れがあり、そこで撮って欲しいという強い要望から、神奈川での撮影が決定しました。撮影したのが冬だったため、街はクリスマスのイルミネーションだらけで、夏のシーンにするのにも苦労しました。
そうですね。原作キャラクターが生活してきた場所の設定があることで、普段は坂道を通って学校に行くんだね、コンビニはこういう所にいくんだね、と、自分たちの中でも分かってくる気がします。見栄えが良いからといって色々なロケ地で撮影するより、神奈川のこんなまちで生まれて、東京に出たりしない子なんだと伝える方が、役者もキャラクターに対する理解が深くなり、演じ方が違ってきます。
画も込みで漫画なので、それをリアルに再現するのはほぼ不可能だと思っています。漫画の良いところだけ借りて新しいものを足すよりは、漫画と同じ事をやっているのだけど、映画の方が凄くいいところもある、という風に思わせたい。漫画を超えるぐらいの気持ちでやらないとだめです。そうしないと原作者の方にも失礼ですし、漫画家さんも監督みたいなものなので、そこも含めて原作者と同じ想いでやらないとやる意味がないかな、と思います。
アメリカ映画の『パルプ・フィクション』などを参考に、すこし古ぼけたアメリカのレストランのイメージに近づけました。ファミレスやコンビニは、画としてスタイリッシュにならないので、撮影しにくく、鬼門なのです。今回はファミレスが舞台で、アメリカのダイナーみたいなお洒落なイメージにしたかったので、ソファを張り替えました。
みんな仲がいいね、と言われます。デビュー作の撮影現場が、喧嘩も多く、凄く大変だったので、そういう現場はもう嫌だと思いました。それからは、なるべく楽しくやれる現場を目指そうと変えていったので、その意識が出たのかもしれません。当時の私は、まだリーダーシップのとり方がわからず、みんなが主張をし始めてもまとめることができませんでした。今回の現場もそうですが、監督が一番わがままでいれば、みんなの文句が監督に集中するので、それが一番健康的なのだと思います。
演出部など私のまわりのスタッフは固定していますが、カメラマンは毎回違う方にお願いしています。CM監督をやっていた経験から来ているのだと思いますが、その方が現場的に刺激があるので良いと思っています。毎回違うカメラマンを使うとストレスにもなるのですが、刺激になって科学反応が出ることもあります。それに、素敵なカメラマンの方がたくさんいるのに、一緒に仕事しないのは勿体無いです。全て固定するのは逆に嫌だな、という考え方なので、今後は海外の方とも一緒に仕事すると思います。その方が楽しそうですから。
はい。原作を好きだったからこそ、オファーを受けるか少し悩んだのですが、キャストの提案を聞いて「この2人だったら自分も観てみたい」と思いました。ラブストーリーを映画化するのは初めての挑戦でしたが、結果的には、女子高生とおじさんの恋愛というより、2人の成長物語になりました。大泉さん演じるファミレス店長の近藤が、彼女(あきら)に出会ったことで止まっていた時間が動き出し、彼女もまた、恋は現実からのちょっとした逃げ場だったと気付き、それぞれの道を歩き出す、という爽やかな感じにしようと考えました。
2人とも、同性からも異性からも嫌われない稀有なキャラクターなので、とてもよいバランスだと思います。もし大泉さんがイケメン過ぎたりしたら「こんなカッコいい店長、ファミレスで働いているわけない」と思われてしまうし、菜奈ちゃんは、主人公が可愛い女の子じゃないと、観る方が興味をなくしてしまうので(笑)。
最初こそ菜奈ちゃんは人見知りだったかもしれないけれど、大泉さんの場を和ます力と、人を包み込むような大らかさによって、最後はハグを交わすまでの関係に。俳優として最高のパートナーシップだったのではないかと思います。女性向け、男性向け、ということもなく、また年齢関係なく幅広い方々が楽しめる映画になったと思います。うちの6歳の息子も「早く観たい!」と言っています。
冒頭のシーンは、あきらがどういう職場で働いているのかを見せたいと思い、長回しで気合いを入れて撮りました。ファミレスが舞台の映画って、スケール感がないんですよね。異様に狭い世界の話なので、映画的には、もう少し大きなスケールで、物語の舞台をお客さんに体感させたいという思いがありました。準備とテストに時間がかかったので、テイク数はそんなに多くはないのですが、シーンの最後しか出番がない人は待ち時間が長いし失敗できないプレッシャーが大きかったようです。ワンカットで撮影したので、現場でOKが出たときには拍手喝采が起きました。達成感が違いましたね。
千葉県の我孫子にある閉店したレストランをリフォームして撮影しました。制作業界ではわりと有名な場所で、一番最初に決まったロケ地です。今回は、神奈川で撮影するという縛りの中、原作と同じ場所をロケハンしました。ただ実際に行ってみると、漫画では描かれていない余計な看板が立っているなど画にならないところもあったので、全て同じ場所というわけにはいきませんでしたが、出来るだけ原作に沿って再現しました。
難しいですね。特に神奈川や東京は許可も下りないので、地方に行ったほうが撮影しやすいです。プロデューサーとは当初、金沢や長崎など特殊な世界観に置いて撮影しようと構想していました。ですが、原作者の先生が神奈川県に思い入れがあり、そこで撮って欲しいという強い要望から、神奈川での撮影が決定しました。撮影したのが冬だったため、街はクリスマスのイルミネーションだらけで、夏のシーンにするのにも苦労しました。
そうですね。原作キャラクターが生活してきた場所の設定があることで、普段は坂道を通って学校に行くんだね、コンビニはこういう所にいくんだね、と、自分たちの中でも分かってくる気がします。見栄えが良いからといって色々なロケ地で撮影するより、神奈川のこんなまちで生まれて、東京に出たりしない子なんだと伝える方が、役者もキャラクターに対する理解が深くなり、演じ方が違ってきます。
画も込みで漫画なので、それをリアルに再現するのはほぼ不可能だと思っています。漫画の良いところだけ借りて新しいものを足すよりは、漫画と同じ事をやっているのだけど、映画の方が凄くいいところもある、という風に思わせたい。漫画を超えるぐらいの気持ちでやらないとだめです。そうしないと原作者の方にも失礼ですし、漫画家さんも監督みたいなものなので、そこも含めて原作者と同じ想いでやらないとやる意味がないかな、と思います。
アメリカ映画の『パルプ・フィクション』などを参考に、すこし古ぼけたアメリカのレストランのイメージに近づけました。ファミレスやコンビニは、画としてスタイリッシュにならないので、撮影しにくく、鬼門なのです。今回はファミレスが舞台で、アメリカのダイナーみたいなお洒落なイメージにしたかったので、ソファを張り替えました。
みんな仲がいいね、と言われます。デビュー作の撮影現場が、喧嘩も多く、凄く大変だったので、そういう現場はもう嫌だと思いました。それからは、なるべく楽しくやれる現場を目指そうと変えていったので、その意識が出たのかもしれません。当時の私は、まだリーダーシップのとり方がわからず、みんなが主張をし始めてもまとめることができませんでした。今回の現場もそうですが、監督が一番わがままでいれば、みんなの文句が監督に集中するので、それが一番健康的なのだと思います。
演出部など私のまわりのスタッフは固定していますが、カメラマンは毎回違う方にお願いしています。CM監督をやっていた経験から来ているのだと思いますが、その方が現場的に刺激があるので良いと思っています。毎回違うカメラマンを使うとストレスにもなるのですが、刺激になって科学反応が出ることもあります。それに、素敵なカメラマンの方がたくさんいるのに、一緒に仕事しないのは勿体無いです。全て固定するのは逆に嫌だな、という考え方なので、今後は海外の方とも一緒に仕事すると思います。その方が楽しそうですから。
(STORY)
高校の陸上部で短距離のエースとして活躍していたあきら(小松菜奈)。しかし、練習中にアキレス腱に大ケガをした彼女は、陸上選手の夢を絶たれ、傷心の日々を過ごしていた。そんなある日、雨宿りのために入ったファミレスで、店長の近藤(大泉洋)から優しい声をかけられたあきらは、近藤に密かな恋心を抱き、その店でアルバイトを始める。親子ほどの年の差、バツイチ子持ちの近藤は、あきらの気持ちに気づきもしなかったが、近藤への思いを抑えきれなくなったあきらは、ついに彼に告白をし…。
監督:永井聡 原作:眉月じゅん
(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)
出演:小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香 、濱田マリ、戸次重幸、吉田羊ほか
5月25日(金)全国ロードショー
(C)2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会
(C)2014 眉月じゅん/小学館
永井聡(ながい・あきら)監督
1970年、東京都東村山市生まれ。武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業した1994年に葵プロモーション(現・AOI Pro.)に入社し、CMディレクターとして活躍。映画『いぬのえいが』(05)の1編「犬語」でメガホンをとり、13年、テレビCM業界を舞台にしたコメディ映画『ジャッジ!』で長編監督デビューを果たす。主な監督作品に、『世界から猫が消えたなら』(16)、『帝一の國』(17)などがある。