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ホーム > 映像関係者の声 > 監督インタビュー > 原作を3行読んで映画化をイメージ、キャスティングは即決!大竹しのぶが男の財産を狙う後妻業を怪演

原作を3行読んで映画化をイメージ、キャスティングは即決!大竹しのぶが男の財産を狙う後妻業を怪演

2016.06.21
映画監督
鶴橋康夫さん
作品の魅力について、まずは原作との出会いを教えてください
作品の魅力について、まずは原作との出会いを教えてください

 前のドラマのロケハン帰りに本屋に寄り、偶然出会ったのが、黒川博行さんの「後妻業」でした。読み始めて三行で、「あ、このキャラは大竹しのぶさんがいい」と即座に思いました。

そんなに早くキャスティングを思いつかれたのですね

 原作を7行読んで、「この役は豊川悦司さんがいい」。表紙を見て「津川雅彦さんがいい」。「妹は尾野真千子さん、姉さんは長谷川京子さんがいい。どうやら9人殺されるから、その殺される中には鶴瓶さんがいたらいい。探偵は永瀬さんがいい」という具合です。そんなことやっていたら朝の5時になっていました。その日の朝すぐに東宝の制作の方に「新しい企画があるから近いうちに会えないか」と連絡を入れました。本を読みながら、登場人物の横に鉛筆で役者名を書いて、キャスティングが終わっていましたよ。

それぞれのキャスティングについて、もう少しうかがえますか?

 僕は「仕事をした人に恩を返そう」といつも思っているから、キャスティングの時には、すぐに人の顔が浮かぶんです。キャスティングしたい役者は無限に出てくるので、一本の作品では入りきらない。豊川悦司さんは『愛の流刑地』で大変なシーンをやってもらったのに、その後縁がなかったのでずっと気になっていました。彼は凄く勉強家で自分でも脚本を書くから、現場で一緒にいて一番楽ですね。それに彼は思いがけない芝居をすることがあるんです。芝居というのはテニスのラリーのようにボールをやりとりするのですが、彼の場合はラケットが飛んでくることがありますから(笑)。

大竹しのぶさんとは長いお付き合いですね。

 大竹さんはもう40年仕事をしていますが、前回が16年前なのでずいぶんと間があきましたね。前は正統派の役を演じてもらいましたが、今回はずいぶんドロップアウトした役になりました。付き合いが長いので役作りについて詳しい打ち合わせもしなかったのですが、理解が凄く早かったです。小夜子が持っている、昭和で生まれた貧しさや、上昇志向とか。結婚相談所で小金がある男をひっかけて、金を根こそぎとっていくけど、どこかぽっかりと心に穴が開いている…といったところですね。

尾野真千子さんはドラマ『坂道の家』に続いて連投ですね。

 本当は3~5年とか間を空けてやったほうがいいんでしょうけど(笑)。大竹さんとの喧嘩のシーンで、尾野さんからの要求は「何分かかろうと、息が上がるまでワンカットで演じたい」ということでした。僕は喧嘩のシーンについて、最後はお互い息を切らして肩を抱き合うということは考えていましたが、ワンカットとは考えていなかったので驚きました。体を使った思いがけないシーンは、お互いを理解する上で言葉以外の重要な要素ですよね。尾野さんは大竹さんを「大御所」と呼んでいたのですが、ずばり「殴らせていただきます」と。それに対して大竹さんも「どうぞどうぞ、中御所」という感じでした(笑)。

今回の作品は、鶴橋監督のこれまでの作品とは少し異なる気がしました

 僕はよく「社会派」と言われていますが、表現として残酷な演出をする作品も多かった。『後妻業の女』は難しいことを考えず、楽しんで観てもらえればと思います。昔『魔性』というドラマを撮った時に、母親が「あんた、一体何人ひとを殺したら気が済むの?」と電話をしてきたんですよ(笑)。父親も「そろそろ、ややこしいのは終わりにしないか」って言っていたぐらいですから、「今回はややこしい理屈はないよ」と言ってやりたい。両親が生きていてくれたら、『後妻業の女』は、自信をもって「観に来てくれ」と言ったと思います。

今回も色々なロケ地で撮影されていますが、ロケ地を選んだポイントはなんでしょうか?

 ロケ地選びのポイントはただ一つ。原作の舞台・大阪府南部を描くことでした。

登場人物の来歴と場所は僕らの生命線みたいなもので、場所は特に大事です。大阪では、合計14日ぐらいかけて撮りたいシーンに適う場所を探してロケハンをしました。設定によっては、東京や横浜などでも撮影していますが、大阪も東京も、これだけ都会化してしまうと、風景だけならあまり変わりがないかもしれませんが、人間を撮ると、違いがわかってしまうんです。なので、どうしても違う土地で撮らないといけない時は、なるべく心象風景にしたりと工夫しています。

フィルムコミッションを使ってらっしゃいますか?

 ドラマ『天国と地獄』を撮った時に小樽でお世話になりました。現地の観光課の人が凄く一生懸命やってくれたので、本当に助かりました。福岡に行った時には、そこでは撮影できなかったんですが、北九州のフィルムコミッションの人が四国の鉄道を紹介してくれて鉄道が撮れました。若い時は車一台乗りつぶすぐらいの勢いでロケ地を探していたので、凄く助かっています。地元の方が協力をしてくれると、物凄く撮影がやりやすいです。

どういう経緯でフィルムコミッションをお知りになったんですか?

 最初にフィルムコミッションを知ったのは、殺人シーンを撮れる旅館を探していた時でした。「殺しのシーンを撮らせてくれる所」って、なかなかないんです。下呂温泉でやっと撮影させてもらったんですが、そこで「フィルムコミッションっていうのがあるんですよ」って名刺をくれて。「なんでもっと早く教えてくれないんだよ!」と思いました(笑)。我がふるさと新潟にもフィルムコミッションがありまして、「監督、いつ撮影に来てくれるんだ」って言うんですが、他の組が撮りまくっていましてね(笑)、他の監督の色紙が飾ってあるところで今更なにを撮るんだ、と(笑)。でも、やっぱりいつかは、ふるさとで撮影がしたいです。

監督はTVのご出身ですが、“映画とテレビの違い”や、そのご経験が生きているということはありますか?

 TVは“遠くの物を見るもの”で、映画は“記録”ですね。映画はコンテと台本で作るものですが、僕は現場ではコンテは開きません。これがTV的ですよね。メモは7割ぐらいびっしりと入っていますが。台本とコンテに首っ引きでやっても、いいものは撮れないと思っています。でも最終的には出演する人間、撮る人間、作る人間の気持ちが高まってくれば、どの方法でもいいとは思いますけどね。

作品の魅力について、まずは原作との出会いを教えてください
作品の魅力について、まずは原作との出会いを教えてください

 前のドラマのロケハン帰りに本屋に寄り、偶然出会ったのが、黒川博行さんの「後妻業」でした。読み始めて三行で、「あ、このキャラは大竹しのぶさんがいい」と即座に思いました。

そんなに早くキャスティングを思いつかれたのですね

 原作を7行読んで、「この役は豊川悦司さんがいい」。表紙を見て「津川雅彦さんがいい」。「妹は尾野真千子さん、姉さんは長谷川京子さんがいい。どうやら9人殺されるから、その殺される中には鶴瓶さんがいたらいい。探偵は永瀬さんがいい」という具合です。そんなことやっていたら朝の5時になっていました。その日の朝すぐに東宝の制作の方に「新しい企画があるから近いうちに会えないか」と連絡を入れました。本を読みながら、登場人物の横に鉛筆で役者名を書いて、キャスティングが終わっていましたよ。

それぞれのキャスティングについて、もう少しうかがえますか?

 僕は「仕事をした人に恩を返そう」といつも思っているから、キャスティングの時には、すぐに人の顔が浮かぶんです。キャスティングしたい役者は無限に出てくるので、一本の作品では入りきらない。豊川悦司さんは『愛の流刑地』で大変なシーンをやってもらったのに、その後縁がなかったのでずっと気になっていました。彼は凄く勉強家で自分でも脚本を書くから、現場で一緒にいて一番楽ですね。それに彼は思いがけない芝居をすることがあるんです。芝居というのはテニスのラリーのようにボールをやりとりするのですが、彼の場合はラケットが飛んでくることがありますから(笑)。

大竹しのぶさんとは長いお付き合いですね。

 大竹さんはもう40年仕事をしていますが、前回が16年前なのでずいぶんと間があきましたね。前は正統派の役を演じてもらいましたが、今回はずいぶんドロップアウトした役になりました。付き合いが長いので役作りについて詳しい打ち合わせもしなかったのですが、理解が凄く早かったです。小夜子が持っている、昭和で生まれた貧しさや、上昇志向とか。結婚相談所で小金がある男をひっかけて、金を根こそぎとっていくけど、どこかぽっかりと心に穴が開いている…といったところですね。

尾野真千子さんはドラマ『坂道の家』に続いて連投ですね。

 本当は3~5年とか間を空けてやったほうがいいんでしょうけど(笑)。大竹さんとの喧嘩のシーンで、尾野さんからの要求は「何分かかろうと、息が上がるまでワンカットで演じたい」ということでした。僕は喧嘩のシーンについて、最後はお互い息を切らして肩を抱き合うということは考えていましたが、ワンカットとは考えていなかったので驚きました。体を使った思いがけないシーンは、お互いを理解する上で言葉以外の重要な要素ですよね。尾野さんは大竹さんを「大御所」と呼んでいたのですが、ずばり「殴らせていただきます」と。それに対して大竹さんも「どうぞどうぞ、中御所」という感じでした(笑)。

今回の作品は、鶴橋監督のこれまでの作品とは少し異なる気がしました

 僕はよく「社会派」と言われていますが、表現として残酷な演出をする作品も多かった。『後妻業の女』は難しいことを考えず、楽しんで観てもらえればと思います。昔『魔性』というドラマを撮った時に、母親が「あんた、一体何人ひとを殺したら気が済むの?」と電話をしてきたんですよ(笑)。父親も「そろそろ、ややこしいのは終わりにしないか」って言っていたぐらいですから、「今回はややこしい理屈はないよ」と言ってやりたい。両親が生きていてくれたら、『後妻業の女』は、自信をもって「観に来てくれ」と言ったと思います。

今回も色々なロケ地で撮影されていますが、ロケ地を選んだポイントはなんでしょうか?

 ロケ地選びのポイントはただ一つ。原作の舞台・大阪府南部を描くことでした。

登場人物の来歴と場所は僕らの生命線みたいなもので、場所は特に大事です。大阪では、合計14日ぐらいかけて撮りたいシーンに適う場所を探してロケハンをしました。設定によっては、東京や横浜などでも撮影していますが、大阪も東京も、これだけ都会化してしまうと、風景だけならあまり変わりがないかもしれませんが、人間を撮ると、違いがわかってしまうんです。なので、どうしても違う土地で撮らないといけない時は、なるべく心象風景にしたりと工夫しています。

フィルムコミッションを使ってらっしゃいますか?

 ドラマ『天国と地獄』を撮った時に小樽でお世話になりました。現地の観光課の人が凄く一生懸命やってくれたので、本当に助かりました。福岡に行った時には、そこでは撮影できなかったんですが、北九州のフィルムコミッションの人が四国の鉄道を紹介してくれて鉄道が撮れました。若い時は車一台乗りつぶすぐらいの勢いでロケ地を探していたので、凄く助かっています。地元の方が協力をしてくれると、物凄く撮影がやりやすいです。

どういう経緯でフィルムコミッションをお知りになったんですか?

 最初にフィルムコミッションを知ったのは、殺人シーンを撮れる旅館を探していた時でした。「殺しのシーンを撮らせてくれる所」って、なかなかないんです。下呂温泉でやっと撮影させてもらったんですが、そこで「フィルムコミッションっていうのがあるんですよ」って名刺をくれて。「なんでもっと早く教えてくれないんだよ!」と思いました(笑)。我がふるさと新潟にもフィルムコミッションがありまして、「監督、いつ撮影に来てくれるんだ」って言うんですが、他の組が撮りまくっていましてね(笑)、他の監督の色紙が飾ってあるところで今更なにを撮るんだ、と(笑)。でも、やっぱりいつかは、ふるさとで撮影がしたいです。

監督はTVのご出身ですが、“映画とテレビの違い”や、そのご経験が生きているということはありますか?

 TVは“遠くの物を見るもの”で、映画は“記録”ですね。映画はコンテと台本で作るものですが、僕は現場ではコンテは開きません。これがTV的ですよね。メモは7割ぐらいびっしりと入っていますが。台本とコンテに首っ引きでやっても、いいものは撮れないと思っています。でも最終的には出演する人間、撮る人間、作る人間の気持ちが高まってくれば、どの方法でもいいとは思いますけどね。

作品情報
映画『後妻業の女』

(STORY)

武内小夜子(大竹しのぶ)、63歳。「好きなことは読書と夜空を見上げること」。とある結婚相談所主催のパーティーで、かわいらしく自己紹介する彼女の魅力に、老いた男たちはメロメロになっていた。中瀬耕造(津川雅彦)もその1人。2人は惹かれ合い、のちに結婚。幸せな夫婦生活を送っていたはずだった。しかし、2年後に耕造は亡くなり「私が全財産を相続する」と突如小夜子に言い渡される娘たち。納得のいかない娘の朋美(尾野真千子)は、独自調査で“後妻業”という衝撃の事実を暴く。その背後には結婚相談所の柏木(豊川悦司)も関わっていて…。

 

監督・脚本:鶴橋康夫 原作:黒川博行「後妻業」文春文庫刊

出演:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、余貴美子、笑福亭鶴瓶、津川雅彦、永瀬正敏 ほか

8月27日(土)より全国ロードショー

(C)2016「後妻業の女」製作委員会

 

鶴橋康夫(つるはし・やすお)監督

1940年生まれ、新潟県出身。中央大学法学部を卒業後、62年に読売テレビに入局。23歳の時にドラマ『四角い空』で演出家デビュー。以降、数多くのテレビドラマを手掛ける。05年『砦なき者』での芸術選奨文部化学大臣賞など、多数の賞を受賞。07年『愛の流刑地』で映画監督デビューを果たす。

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