監督インタビュー

2018.01.18

「いつかハリウッドに追いつく」20年後しの夢…いま結実 /CG技術と山田涼介が魅せた『ハガレン』実写化

映画監督曽利文彦

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  • ――本作では、イタリアでロケをされていますが、ロケ地はどう選定されたのですか?

     兄弟が旅する蒸気機関車のシーンがとても重要だと考えていましたので、ロケ地は“機関車が使える場所”を条件に探しました。そこで見つけたのがイタリア国鉄が所有する100年前の蒸気機関車です。現在は観光用として春~秋の季節限定で走っているものを、オフシーズンに一日貸切で撮影させてもらいました。廃線になった線路を走るので、停車もバックも思いのまま。汽笛や蒸気も希望のタイミングで出してもらえたので、全て合成なしの本物です。

     エドワード(以下:エド)(山田涼介さん)とコーネロ(石丸謙二郎さん)の戦闘シーンが撮影されたトスカーナ州の小都市ヴォルテッラでは、学校などが隣接する街の生活道路を封鎖して大規模なロケをおこないました。

    ――ロケ地になったヴォルテッラでの撮影エピソードを教えてください。

     市の担当者が偶然にも原作の大ファンで、市長に作品の素晴らしさを伝えてくれたんです。それを聞いた市長が“全面的に協力します”と言ってくださって…。しかもそこは、かつてアルケミストが実際に儀式を行っていた建造物や半獣半人のキメラの彫刻、石畳の街並、教会などがあり、街全体がハガレンの世界観そのもの!運命を感じずにはいられませんでした。

     またエド(山田涼介さん)が大規模なアクションを繰り広げるシーンは、小学校の前で撮らせていただいています。車が頻繁に通る生活道路だったのですが、小学生や保護者の皆さんに裏口から出入りしていただいたり、実際に置いてあった巨大なオブジェを撮影の前日にクレーンで移動してくださったり、さらには撮影のために工事を早めに終了させる等の協力をしてくださいました。現地の方のご協力に心から感謝しています。

  • ――ヨーロッパの制作スタッフの方々は、いかがでしたか?

     日本人に対して、凄く親切でした。“ヨーロッパのスタッフ”というと「日本人のようには働かないのではないか」と皆さん思われると思いますが、実際は日本人のスタッフが「負けてられない!」と思うほど、とてもよく働いてくれました。唯一苦言を呈すとすると…呑みすぎることでしょうか(笑)。あんなに働いて疲れているのにそんなに呑むか、というほど夜な夜な飲んでいました。でも朝はきっちり早く起きて、しっかり一日働いていたのをみて、イタリア人は凄いなと思いました。

    ――キャストの方も非常に豪華ですね。役に対する思い入れなどは、皆さんいかがでしたか。

     山田君は、暑い真夏のイタリアで、アクションシーンが多かったので大変だったはずです。石畳の上で本当に飛んだり跳ねたりするので、怪我をしないかとひやひやだったのですが、スタントなしで見事にやりきってくれました。

     全身全霊で作品に邁進した座長・山田涼介の存在に、みんなが引っ張られて、役者さん一人ひとりが強く印象に残る演技を見せてくれました。

     コーネロ役・石丸謙二郎さんの衣装はとても分厚く動きづらい衣装なのですが、何回も物凄いダッシュを繰り返していただきました。石丸さんのアスリートぶりを知っていてキャスティングしたというのもあるのですが、あのお年で、と感心してしまいました。

     松雪泰子さんは、華奢な印象がありますが、この役をやるにあたってまず体づくりから取り組まれていて、太ってボリュームを出して、妖艶さを表現されていました。あんなボリューミーな松雪泰子を観るのは皆さん初めてなのではないでしょうか。

  • ――アルフォンス・エルリックは(以下:アル)、撮影現場にはないのですよね? CGと思えないリアルさでした。

     はい。ワイヤレスモーションキャプチャーという最新技術を使ったフルCGです。従来のモーションキャプチャーは、たくさんのカメラを構えて専用のスタジオで撮らなければならないのですが、ワイヤレスモーションキャプチャーは、現場で人間が動いた動作を撮影し、そのままCG加工できます。この技術がなければ、あのリアルなエドとアルの喧嘩のシーンは成立しませんでした。ハリウッドでは素晴らしいアニメーターがいるのでこういったアルのようなキャラクターはアニメーションで表現しがちですが、我々は実写で撮影した映像を用いています。

    ――日本の映像技術もそこまでハリウッドに近づいてきた、という感じですね。

     ハリウッドの映像技術も凄いのですが、日本のトップクラスの技術も負けてはいません。また、技術以前に、アメリカの人と我々が考えるコンテンツの「ハート」の部分は少し違うと思っています。山田涼介という日本の役者、日本の演出家のCG技術が揃ったことで、荒川先生の描かれた『鋼の錬金術師』のハートの部分が表現できたと思っています。アルの描き方一つとっても、そういった意味で「ハリウッドに近づいてきた」と考えています。

  • ――この作品のために10年をかけてこられたとか。

     スタッフもCGの技術も、『鋼の錬金術師』を日本で撮るにはなかなか足らなくて、10年かかりました。ハリウッドにいつか追いつこう、としていたのですが、この作品を通して「ハリウッドの尻尾捕まえた!」ほどの感じにはなりました。ようやくあちらの仲間や知り合いに「日本のCGもここまできたね」と言えるところまできたので「しめしめ」という気分です。構想からは実は20年以上かかっているのですが、そういう想いが結実しているので達成感があります。

    ――今、完成されてどんな気分ですか。

     燃えつきて、真っ白な気分です。場所探しから何からとても大変で、色々な世界の人の協力を得てようやく撮影が終わったということもあり、長い間、手間暇かけて仕上げた作品なので、ものすごく達成感があります。

     一番感動が大きかったのは、原作者の荒川先生が試写を観た後、満面の笑顔だったことです。荒川先生のこんな顔は見た事が無いというくらいの笑顔だったので、全て報われた気持ちがしました。自分の前に来て、第一声で「楽しかった!」と言ってくれた時、涙が出ました。「良かった。この映画やって本当に良かった」と思いました。

  • ――これから御覧になる皆さんに見所とメッセージをお願いします。

     間違いなく最先端の技術で仕上がった映画ではありますが、この映画の見所は技術・CGではありません。本当に、物語が素晴らしい。我々はその原作をいただいて、映画としてストーリーにこだわって制作しました。役者さんの演技やロケ地、そういったものを通して、このストーリーを奏でるために一生懸命頑張りました。技術などはそれを支える一つのアイテムでしかないので、ストーリーの素晴らしさ、映画の面白さというのを感じていただければ、我々も作った甲斐があります。そこをぜひ楽しんでいただきたいです。

    ――ありがとうございました。
INFORMATION

映画『鋼の錬金術師』

(STORY)

亡くなった母にもう一度会いたいという思いから、人体錬成という最大の禁忌を犯した幼い兄弟。結果、兄のエド(山田涼介)は身体の一部を失い、弟のアル(声/水石亜飛夢)は魂のみの存在となってしまう。失った身体を取り戻すため「賢者の石」を求めて旅する兄弟は、ある時、賢者の石を持つ神父コーネロ(石丸謙二郎)と対峙する。石が発動する強力な錬金術に応戦する兄弟。しかしそこに旧知のマスタング大佐(ディーン・フジオカ)が現れ、コーネロの石を錬金術で破壊してしまう。石が偽物だったと知り落胆するエド。そんな彼を、人造人間のラスト(松雪泰子)が物陰から怪しく見つめていた…。

 

監督:曽利文彦 原作:荒川弘 脚本:曽利文彦、

宮本武史

出演:山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、

本郷奏多、國村隼、大泉洋(特別出演)、

佐藤隆太、小日向文世、松雪泰子 ほか

12月1日(金)ロードショー

(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

 

曽利文彦(そり・ふみひこ)監督

1964年生まれ、大阪府出身。1997年、USC(南カリフォルニア大学大学院)映画学科在学中、ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』にCGアニメーターとして参加。帰国後は、VFXスーパーバイザーとして『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』(00)など、数々の映画やTVドラマを手掛ける。2002年に『ピンポン』で映画監督デビュー。そのほか、主な監督作に『ICHI』(08)、『あしたのジョー』(11)などがある。

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